感情

………

……

死の恐怖はある。

だが、何故だか目の前の敵であるはずと魔王に目が行く。


不思議な髪だ。

紫をベースに、ジニアの様な赤とルリタマアザミの様な青のメッシュが入っている。

何故だか、不安になるな。


そして、アネモネのような目が刺さる。

綺麗な赤色の角膜と、黒く美しい瞳孔を囲うように、真っ白な虹彩が見える。

……まるで、花の精霊の様だ。


真っ白な肌だが、不健康さは全く感じない。

まるで雪のように白く、冷たい表情の奥には、怒りと不安に満ちた表情が見える。

春や夏に咲く花の色を見せながらも、同時に冬を思わせる美貌を持っている。不思議なものだな。


なぜ、敵の顔をここまで分析出来ているのかが分からない。

私の首を絞めている手は徐々に強くなっていっている。

このままでは、窒息よりも先に首が捥げるだろう。

国民には悪いが、実際守るべきが無くなっては生きる意味がない。

救いを求めた所で、求めた先の神は私を殺そうとしている。


まだやり残したことはあった。

まだ強くなりたいとも思った。

仲間全員で焚き火を囲みたい。

魔王も仲間に入れて笑いたい。

人魔関係ない生を謳歌したい。

何もかも上手くいかなかった。

それでも私は生き続けていた。

全ては国民と仲間を守る為に。

全ては全種族全ての者を救う為に。


でも、私は全て諦めた。

ふと香ったマリーゴールドの匂いを香りながら……─────


────………………………

………………………

………………

………


……なのに……それなのになぜ、彼女・・は泣いているんだ?

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