言ノ葉

「」


言葉は出なかった。

出せなかった。

魔王によって制限されている訳ではない。

自分の中では叫んでいたつもりだった。

喉が壊れるように、声でガラスが割れるほどに。


愛した国は、塵1つ残らず爆散した。

見届けてしまった。


涙を流して、魔王に救済を求める狂信者

勇者愚カ者を信じて、子をあやしていた子ノ奴隷

世の中の為にと、必死に働いている社会ノ犬

勇者愚カ者を救いたいと、全力で祷を捧げる毒国者

こんな時でも自由で、呑気に昼寝をするバカ

二度と帰らぬご主人死体を、全力で待っているアホ


その全ての生物が平等に消え去った。

笑顔のまま首が消滅し、血は噴き出し、噴き出しながらも沸騰し、皮は焦げ、肉は溶け、骨は灰になる。

そして、その人間だったモノただのゴミも、元からそこに無かったかのように消え去った。

助けてという言も葉も消え去った。


皆、魂ごと平等に消え去った。


守れなかった。

守 れ な か っ た 。

守 れ な か っ た 。


何 も 守 れ な か っ た の だ 。


仲間も、友も、家畜も、国も、親も、幼馴染も、王も、物も、建物も、自然も、世界も、自分も、心も、魂も、なにもかも。


私に残っているのは、目の前の敵だけだ。

魔力など残っているはずもない。

剣も無く、腕も足もない。


…腕も…足も……?




「ッが…ッ!!!!─────声が出ない!?


「やっと気が付いたのか。全く、自身の肉体くらいは把握して欲しいものだ。それと、五月蝿いのは嫌いだ。少し静かにしろ。」


今度こそ、言葉を制限された。

痛みも止まらず、出血多量で頭が回らない。

その癖、脳が活性化し、生きようと思考を回している。

脳に出された案は全てろくでもない物だったが。


呼吸が出来なくなってきた。

脈が早くなっているせいか、冷や汗も止まらない。

高度がかなり高い為、風が強く身体が冷えてくる。

そのせいか、身らだあお白くなっていっている。

いいや、ちがう。これはすべて全てしゅっけつたりょう     出血多量      しょうじょう      症状      だ。


私は


もうしぬのだ。


何も救えズ、


今、こコデ。


死───────────────

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