第5話 初見


4月1日になり私は第一企画開発部課長となった。

神木部長は大阪支社での引き継ぎと引越しとで4月9日からの出勤となっていた。


ピロン!

「先輩、昇進おめでとうございます!」

「気安く牛丼誘えなくなっちゃいましたね」

和樹からのメールだった。


「なんで?誘ってよ」

「牛丼好きだし」

「わかりました!誘います!今日なんてどうですか?」

軽いノリだなって思いながら私は返信をした

「今日は、ちょっと無理かも」

「了解です!」


和樹とのメールのやり取りは何故か億劫ではなかった

弟みたいに人懐っこくて一番可愛がってる部下だ。


和樹は同僚からの人気も高く仕事は勿論、プライベートでも人気がある

明るく、真面目で裏表が無い人柄でうちの部署でも欠かせない一員である


私は、息抜きをする為に会社の自動販売機に向かっていた

すると和樹がコーヒーを飲んでいた

「和、、、、樹」

私は言葉を呑んでしまった。

和樹の横に同じ部署の(加藤 胡桃)が居た

話の盗み聞きをしたわけでは無いが聞こえてしまった。


「和樹って彼女いるの?」

「どうしたの急に」

「俺に気でもあったりするの?胡桃」

「和樹の事を気になってる人がいて聞いてくれないって言われたから」

「ふーーん」

「彼女は居ないけど気になる人はいるよ」

「俺からしたら雲の上の人かも知れなけど気になるんだよね」

「そうなんだ和樹は好きな人がいるんだ」

「好きねぇー そうだね好きだねこの感情は」

「胡桃って彼氏いなかった?」

「もう、ずいぶん前に別れたよ」

「そっか始まりがあれば別れもあるよな」

「次、好きになる男が最後だと良いな!」


和樹、違うんだよきっと胡桃ちゃんは和樹が好きなんだよ鈍感な男だな

若いって良いな社内恋愛とか

考えただけで悲しくなる

しばらくするとコーヒーを飲み終えた和樹がこっちに歩き始めた

「和樹、お疲れ様」

「課長!お疲れ様です。」

「うん?」

「ひとみ先輩は今、課長です」

「俺も、社会人なんでちゃんと接しますよ上司なんですから」

「確かに忘れてたわー」

私は笑いながら和樹と別れコーヒーを買って一息ついた。


ピロン!

「神木部長が来てますよ!」

和樹からのメールだった。


明日からじゃなかった?

残っていたコーヒーを捨て私は早歩きしながらオフィスに向かった。


「ここが第一か!」

「広い!」

「ここが俺の戦場になるわけだ!」

神木部長はフォーマルなかっこで大きな声で叫んでいた

「あの、部長」

「あーー!君はひとみ課長だね!」

「明日から、よろしく!」

声が大きく凄い勢いのある人だ

「さて、今日!」

「飲み会を開催する!」

「残業は禁止だ!」

「参加するも、しないも自由!」

「会場は押さえてある、お金も払ってある」

「では、ひとみ君、参加人数がわかり次第、私に連絡をしてくれ」

「あ!みんなが使ってるパソコンに私からのミッションを個人的に送ってる」

「良く読んでミッションを達成してくれ」

「では、また後で」

それだけを言いにわざわざ、凄いなあの人

やっていけるの私、不安しかない

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