エピローグ - とある老人の追憶 -

「その後、ハーヴェスでは彼らは貴重な魔航船を取り返した英雄として、少しだけ名を馳せることになりましたとさ、めでたしめでたし。…今回のお話はこれで終わりかな?」


「ねえねえ!そのお話の続きはないの?」


 獣の耳を生やした双子の兄妹は、小さい身体を前のめりにして、老人に物語の続きをせがんでいた。


「もちろんあるよ。風の魔剣を手に入れた話とか、珍しい鉱石を求めて大海原を旅した話とか、みんなで闘技大会をした話とか、ね」


「え~!じゃあじゃあ!それも話してよ!」


「う~ん、それはまた次の機会かな。今日全部話してたら日が暮れちゃうからねぇ」


「ちぇ~…分かった!じゃ!また明日!お話を聞きに来るよ!」


「早速明日かい?しょうがないなぁ…またいつでも来なさい、続きを聞かせてあげるから…やれやれ、せっかちなのは誰に似たんだか…」


 双子は声を揃えて「ありがとう!」と言うと、足早に書庫の出入り口から駆け出していった。


「さて、じゃあ次の物語の準備をしておかないとな…。ええと、次の話はっと…ああ、こいつか」


 そう言って、老人は日記の次のページに、白い布で作られたしおりを挟み込んだ。


「お前とも長い付き合いになるなぁ…」


 老人は引き出しから金縁きんぶちの眼鏡を取り出し装着すると、穏やかな笑みを浮かべた。

 そして、揺り椅子を揺らしながら目を瞑り、ひとり追憶ついおくふけるのであった。

 



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