第11頁 反撃のバルバロス

PL/レイン:魔物知識判定(ころころ)…12。


レイン:「こいつ、ドレイクだ…!」


 “ドレイク”は、蛮族の中で貴族的な地位に君臨し、他の蛮族を服従させ、巨大な部隊を率いることを得意とする蛮族である。

 また、生まれた時から個体ごとに魔剣を所有し、それを肉体に取り込むことで巨大な竜形態へと変身する力を持っている。


GM/ドレイク:「お前を人族どもの中に紛れ込ませておいて正解だったな?」

 

 ドレイクにひざまずいている男の皮膚はみるみるうちに赤く染まり、服に亀裂を走らせながら筋骨隆々の体格へと変身していく。

 頭には角が生え、下顎からは大きな牙が伸びる。フーリィ達にはその種族に見覚えがあった。そう、レッサーオーガだ。


PL一同:えぇ~!?


フーリィ:「お前…!」


PL/フーリィ:ばっと後ろに下がります。『獣変貌』!ぐるるる!


 ドレイクは周囲を見渡すと、傍らのレッサーオーガに話しかけた。


GM/ドレイク:「あいつトロールはどうした? 部下を引き連れて戦えと言っておいたはずだが…」


GM/レッサーオーガ:「はっ、実は…」


 レッサーオーガがこそこそと耳打ちをすると、ドレイクは眉間にしわを寄せながら軽く溜息をついた。


GM/ドレイク:「…あいつトロールめ、やはり、使命よりも己の嗜好しこうを優先したか」


 あのトロールは戦闘狂だが、同時に誇り高く、弱きものに情けを掛けてしまう性格であることは解っていた。とはいえ、まさかみすみす捕虜を逃がし、冒険者どもにここへの侵入を許すとは想定外だ。

 人族の捕虜を捉えた当初、ドレイクは魔航船を改造するのに、人族の捕虜が持つ魔動機の技術を利用してやろうと考えていた。

 しかし、その意味を理解しない能無しの部下バルバロスどもが、考えなしに捕虜を殺してしまう事案が多発していた。

 そこで、弱きものに甘いという性格は理解しつつも、ならばこそ、捕虜を殺してしまう可能性の少ないトロールに、監守役を任せるようにしたのである…が、その結果はこの始末だ。

 恐らくはあのトロールのことだから、捕虜を逃がさないことよりも、この冒険者ども相手に己の実力を試してみたくなったのだろう、という大方の予想はつく。その思考への理解は到底できるものではないが。

 魔船船の改造や捕虜の管理はアンドロスコーピオン達やトロールに任せて、ドレイク自体は別の拠点で活動をしていたため、もし、レッサーオーガから“通話のピアス”による緊急連絡がなければ、このまま魔航船による逃走を許してしまった可能性すらあっただろう。

 ここ数日、魔動機の墜落事故が多発し、捕虜たちがなにやら怪しい動きをしてることから、捕虜の1人をレッサーオーガとすり替えておいたのは、ドレイクの正しい判断だったと言える。


ニトライド:「てめぇ!急に出てきて、何者だ!」


レイン:「みんな!ドレイクはかなり強い…!本当に気を付けて!」


ニトライド:「おぉ、それは楽しみだ。ぜひ、お手合わせ願おうか!」


フーリィ:「おい!ニト…!」


GM/ドレイク:「…舐めるなよ人族ども? 私の計画の邪魔はさせんぞ」


フーリィ:「こいつ、交易共通語で喋ってくれるじゃねぇか…!」


一同:(笑)


 その時、再び地面に翼を持った影が2つ映り、天井の入り口から2体の魔物が飛来した。

 皮膜状の翼にトカゲのような胴体を持った魔物だ。鋭い爪と鍛え上げられた筋肉から、油断できない戦士であることが伺える。


フーリィ:「次から次へと…」


PL/レイン:魔物知識判定(ころころ)…9。


レイン:「なんだこいつ、こんなの知らないよ!」


PL/ニトライド:なんか見たことある感じするんだけどなぁ(笑)


一同:(笑)


GM「(確かにこのPTはフーグル系統と戦ったことがあるから、外見で“フーグルアサルター”を推測できてもいいとは思うけど)」(笑)


GM/レッサーオーガ:「ガロン様、他の部下バルバロスたちは如何いかがいたしますか?」


GM/ドレイク:「ふん、あれだけの数がいながら、こやつらをここまで見逃した無能どもなど足手まといにしかならん。せいぜい魔動機と戯れさせておけ。こやつらはこの俺がここで始末する」


GM/レッサーオーガ:「御意ぎょい。では、我々もお供いたします!」


 レッサーオーガとフーグルアサルターは、ドレイクの前に出て、今にでも冒険者たちに襲い掛からんという様子だ。


GM:ここからは戦闘です!


GM/エド:「くっ、まだ魔航船の準備が出来てねぇのに! なんとか時間を稼いでくれ…!」


PL/ニトライド:任せろ!先制判定(ころころ)…9。


PL/フーリィ:あ、ダメだ…。


GM:勿論、敵に先制を取られますね(笑)


PL/フーリィ:うわ~~~!これは痛い~~~!


PL/レイン:ニト~~!お前~~!


PL/アミラ:さっきの意気込みはどうしたんだ!(笑)


PL/ニトライド:『運命変転』使えるようにならないかなぁ、オレ。


一同:(笑)


PL/フーリィ:GM、先制取られたけど戦闘準備に、使えるよね?


GM:使えるよ。


フーリィ:「(あいつが強いっていうなら、ニトに攻撃を負わせるわけにはいかない…!ここであの魔法を使う!)」


PL/フーリィ:神聖行使判定(ころころ)…10!


フーリィ:「慈愛と復讐の女神ミリッツァよ…我が祈りに応え、の者の痛みを分け与えたまえ、【リダイレクト・ウーンズ】!」


 【リダイレクト・ウーンズ】。対象が受けるダメージを一定量、術者が肩代わりする“慈愛と復讐の女神ミリッツァ”の特殊神聖魔法だ。

 ミリッツァの慈愛の教えを体現化した魔法であり、我が身を犠牲にしてでも弟を守りたいフーリィにとって、まさにうってつけの神聖魔法と言えるだろう。


 ニトライドを後ろから抱きかかえるように光の手が一瞬だけ出現した。

 目の前の敵の隙を伺うのに夢中なニトライドは、自らが受けた女神の施しに全く気付いていないようだ。

 しかし、フーリィと同じく後衛から彼を見ていたレインにはそれが理解できていた。


レイン:「(フーリィ、あの魔法を使ったみたいだね。じゃあ今回は僕はアミラを援護するよ)」 


 以前、フーリィから神々の信仰について相談を受けたことのあるレインは、フーリィがそういった魔法を習得していることを知っている。 

 レインは、アルケミストホルダーからカードを抜き取ると、アミラに向かって賦術【バークメイル】を投げつけた。


PL/アミラ:ざしゅ!防護点9!


一同:(笑)


GM/ドレイク:「では、こちらも下準備をさせて貰おうか」


 ドレイクが指をパチンと鳴らすと、大地から沸き上がった橙色のオーラが彼の身体に纏わりつき、その防護をより強固なものとした。

 ドレイクは操霊魔法【アース・シールド】を、自らの肉体に行使したのだ。


 それを見たニトライドがドレイクに向かって駆け出す。しかし、ニトライドがドレイクに到達するよりも、遠距離から魔法を放ったレッサーオーガの攻撃の方が、一手速い。

 レッサーオーガの右手から放たれた真語魔法【リープ・スラッシュ】により、真空の刃がくうを裂きながらニトライドへと着弾する。


ニトライド:「魔法か…!避けられない!」


PL/ニトライド:精神抵抗判定(ころころ)…19(抵抗成功)!


GM:(ころころ)…6ダメージ(半減)!でも…


 魔法の着弾に身構え、ニトライドが目をつむったその瞬間、彼の前方に人型の光の塊が出現し、それは真空の刃によって切り裂かれ消滅した。


ニトライド:「…あれ?痛くねぇ?」


 ニトライドが目を開けると、真空の刃リープ・スラッシュはニトライドの肩に薄い切り傷を入れたのみで、ほとんどダメージが見られない。

 その直後、後方でフーリィの呻き声が聞こえた。


フーリィ:「うぐっ…!」


 ニトライドが後ろを振り向くと、フーリィが肩を抑えながらうずくまっていた。

 肩を抑えた手の隙間からは、少量の血が滲んでいるのが見える。 


ニトライド:「え!?姉ちゃん、な、なんで!?」


フーリィ:「いや…気にすんな。何でもない」


ニトライド:「え、でも、これって」


フーリィ:「いいから!お前は前だけ見てろ!」


ニトライド:「あ、あぁ、わかったよ…!」


 ニトライド HP29→28(1ダメージ)

 フーリィ HP29→24(5ダメージ)


PL/バーバラ:かっけぇ。


PL/レイン:最高すぎるこれ。


 同時刻。飛行する魔物・フーグルアサルターが、アミラに向かって爪による攻撃を仕掛ける。重い金属鎧を着たアミラには、速すぎる一撃だ。

 爪が命中する。しかし、その爪はキン!と金属が擦れる音を上げるのみで、アミラに傷を付けることはなかった。


GM:爪のひっかき攻撃。(ころころ)…ダメージ9。【バークメイル】により防護点が9なのでダメージ0…。


PL/ニトライド:つよ(笑)


 だが、フーグルアサルターの攻撃はこれだけではない。続けて、もう片方の腕によるひっかき攻撃が繰り出される。

 爪を金属部に弾かれたフーグルアサルターは、今度は防護が薄そうな部位を狙って攻撃を仕掛けた。

 咄嗟に剣で受け流そうとするアミラだが、流しきれなかった爪の切っ先がアミラの肉体に軽い切り傷を負わせた。更に…


GM:(ころころ)…11ダメージ! 


 アミラ HP31→29(2点通し)


GM:更に翼で追撃攻撃をしてきます。命中は14!


PL一同:えぇ~!!


PL/レイン:3回攻撃!?


PL/アミラ:回避!(ころころ)…8。やば!自動失敗!


PL/レイン:成長しとる場合か~(笑)


 戦いの技術を高めたフーグルアサルターによる猛攻は、2回だけでは終わらない。

 爪の連撃により体勢を崩したアミラに対し、そのまま身体を素早く捻り、翼の打撃攻撃による追い打ちを掛ける。

 3回目の攻撃が来ると予想していなかったアミラは、上手く受け身を取ることができなかった。


GM:(ころころ)…13ダメージ!


 アミラ HP29→25(4点通し)


 その頃、もう1体のフーグルアサルターは、バーバラを守るように立ちはだかるオークゴーレムの相手をしていた。

 攻撃を行うべく飛び上がってきたゴーレムに対し、正面から鋭い爪で縦に切り裂くと、ゴーレムの身体に大きな切れ込みが入る。

 フーグルアサルターは更にそのまま空中を突進し、ゴーレムに思い切り翼を叩きつけた。ゴーレムの切れ込みから背部にまで亀裂が波及し、木の身体はパックリと2つに両断された。


 爪16ダメージ+翼17ダメージ ゴーレム HP-8


PL/バーバラ:うぉ!?もうゴーレム死にました!


PL/ニトライド:え、強くねこいつ(笑)


GM:更にフーグルの《双撃》により、続けて別の対象に攻撃します。対象はバーバラです。


PL一同:はぁ~!?


PL/フーリィ:取り巻きのくせにこいつら強すぎ!(笑)


 ゴーレムを真っ二つにしたフーグルアサルターは、そのままの勢いでバーバラに突進し、突き出した腕の爪でバーバラの身体を切り裂いた。

 ゴーレムの身体でフーグルが丁度死角となり、こちらへの突撃を予測していなかったバーバラは、盾によるガードが間に合わない。


 13ダメージ バーバラ HP36→28(8点通し)


GM:敵のターンは以上です。


PL/アミラ:やっと終わった(笑)


バーバラ:「くっ!早めに取り巻きを倒さないと厳しいよこれは!」


レイン:「そうだね…!まずは護りを固めるよ! 神よ、その浄化の光にて我らを守りし盾となれ…【セイクリッド・シールド】!」


 前衛の3人を白き光のベールが包みこむ。蛮族からの物理的な攻撃を軽減する、神聖な護りだ。

 更に、レインは再びカードを放り投げると、賦術【バーク・メイル】によってバーバラの防護を上昇させた。


バーバラ:「ありがたい!」


フーリィ:「(…ニトはあたしが守る。あの魔法は一度発動すると効果が消えてしまう。もう一度使用しないと…!)」


 神聖魔法は神に言葉で語りかけなければ魔法を発動できない為、弟に気付かれないように小声で【リダイレクト・ウーンズ】を詠唱する。

 再び、ニトライドの身体を庇うように、一瞬だけ彼の背後から光の手が出現した。しかし、姉に疑問を抱いていたニトライドは、今度はその光の手の出現を見逃さなかった。


ニトライド:「これって…!やっぱり姉ちゃんが何かしたんだ!姉ちゃんに攻撃が移るなんておかしいよ!」


フーリィ:「そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ、今は戦闘に集中しな!」


ニトライド:「でもっ…!」


 姉の鬼気迫る態度に気圧され、ニトライドはそれ以上言い返すことが出来なかった。


バーバラ:「次はあたしの番だよ!」


 バーバラは盾を燃やしながらメイスを振り上げると、操霊術【アース・ヒール】によって大地のエネルギーを吸い上げ、自身の肉体の傷を癒した。

 そして、そのままメイスを振り下ろし、フーグルアサルターへの反撃に転じる。《マルチアクション》だ。

 だが、その攻撃は素早く身を引いたフーグルの鼻先を掠め、地面にメイスの先端を沈ませるのみとなった。


バーバラ:「あんたたち!頼んだよ!」


アミラ:「いくよ!」


 アミラによる背後からの挟撃きょうげきが、フーグルアサルターへと襲い掛かる。

 フーグルはその攻撃を察知していたのか、即座に上空へと飛び上がり、閃光を放つアミラの剣はフーグルが元いた空間を素通りした。


 フーグルは思わず己の戦闘技術に悦に浸りそうになるが、前に顔を向けると、その視界に大きな拳が現れた。

 挟み込まれたフーグルが上空に逃げることを予測してか、ニトライドも同時に高くジャンプしていたのだ。

 フーグルが3人目の存在を理解するよりも速く、ニトライドの拳はその顔面に激突した。

 

PL/ニトライド:命中判定(ころころ)…17。当たった!(ころころ)…12ダメージ!


 フーグルは、咄嗟にだが、更に上空へと飛翔した。

 やつらは空を飛べる訳ではない。いかに集中攻撃をされようと、一定以上高く飛んでしまえば攻撃を当てることは出来ないはずだ。一度安全圏に避難してから体勢を立て直せばいい。

 そしてその読みは当たり、ニトライドの2発目の拳は高度不足で空を切った。


ニトライド:「くそっ!」


 フーグルの考えは確かに正しい。だが、その理屈が適用されるのはに対してのみだ。

 フーグルが高い位置から下を見下ろすと、その視界の先にこちらに弓を向けているフーリィの姿があった。

 …しまった! だが、フーリィの弓にまだ矢はつがえられていない。否、矢は既にこちらに向けて放たれた後なのだ。

 風切り音と共に、フーリィの矢が蛮族の翼膜を貫いた。


PL/フーリィ:練技【キャッツアイ】&《牽制攻撃》(ころころ)…18!命中!(ころころ)…20ダメージ!


ニトライド:「姉ちゃん!流石だぜ!」


一同:おぉ~!


PL/フーリィ:やったか!?


GM:まだやってないです(笑)


PL/ニトライド:やばい~!レインも殴れ(笑)


PL/レイン:僕は補助役なんだよ(笑)


PL/バーバラ:なんてこった…。


 蛮族バルバロスたちの反撃ターンが始まる。前衛の3人はなんとか、フーグルアサルターとレッサーオーガの猛攻を耐え凌ぐが、このターンから脅威はそれだけではない。


GM/ドレイク:「ふん、貴様ら、よくもアンドロスコーピオンたちをやってくれたな? やつらは貴重な技術者だというのに」


 後方にいたドレイクが、右手に魔剣を携えながら、余裕綽々よゆうしゃくしゃくと一歩ずつ、冒険者たちに歩み寄る。


PL/ニトライド:なんか出てきた!帰れ帰れ!(笑)


PL/アミラ:まじか!今攻撃されたら死ぬ!


 ゆったりと歩いていたドレイクがぴたりと止まり、右手の魔剣をレイピアのように前へと構えた。

 翼を大きく羽ばたかせると、次の瞬間、先程までの動きが嘘のように、はやぶさの如き速さで突撃した。

 魔剣の射線上にいるのはニトライドだ。


ニトライド:「来たか…! 避けてやる…!」


フーリィ:「ニトっ…!」


GM:ドレイクの命中判定(ころころ)…14!


 風に乗ったドレイクが突き出した魔剣は、朱色の閃光を纏い、その一撃を受ければひとたまりもないであろうことは明白だった。


PL/ニトライド:頼んだニト!回避!(ころころ)…15!


 ニトライドは剣先が皮膚に触れるギリギリのところで身をひるがえし、ドレイクの魔剣はニトライドの襟足に結われた髪の一部を切断するに留まった。


ニトライド:「ふう!…あっぶね!紙一重!」


PL/アミラ:ナイスー!


ニトライド:「(オレだって、いつも姉ちゃんに守られてばかりじゃいられないんだ!)」

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