第6頁 蛮族失格

レイン:「アミラも剣を構えといて!」


PL/アミラ:じゃあ、わたしも剣を構えておきます。


ニトライド:「オレは外を見張ってるよ!」


 武器を構えたバーバラとアミラに挟み込まれたレッサーオーガは、完全に委縮してしまったようだ。赤い肌をした厳つい大男が、布で縛り上げられしゅんとしている有様は、あまりにもシュールな光景だった。

 その正面に向かい、笑顔を浮かべたレインがずいとにじり寄る。


レイン:「…さて、レッサーオーガ君、ここで何をしているんだい?」


PL/フーリィ:それは『はい』か『いいえ』で答えられないんじゃないか?(笑)


GM/レッサーオーガ:「モ、モゴモゴ!(み、見張りです!)」


PL/ニトライド:なんとなく解るけど(笑)


一同:(笑)


フーリィ:「…なんて?」


バーバラ:「毛布外すかい?」(笑)


フーリィ:「これだけ武器を構えられてたら大丈夫だろ」


バーバラ:「お前、絶対に味方を呼ばないというなら、毛布を外してやってもいいよ」


フーリィ:「情報を教えてくれたらお前は生かしてやる」


GM/レッサーオーガ:「モゴ、モゴ!(はい、呼びません!)」


アミラ:「呼びませんって言ってるんじゃないか?」


PL/バーバラ:毛布を口から取り出します。


バーバラ:「さぁ質問に答えな!」


GM/レッサーオーガ:「…み、見張りです…。この画面を見ていました…」


バーバラ:「何を見張ってるんだい?」


フーリィ:「お前たちはここで何してるんだ!」


GM/レッサーオーガ:「…………」


バーバラ:「答えなきゃぶつよ!」


レイン:「…死にたいの?」


GM/レッサーオーガ:「あぁあ!いや!言います言います!」


一同:(笑)


PL/ニトライド:可愛い(笑) この粗忽そこつな感じがいい(笑)


 微かな抵抗すらもはや無意味だと悟ったレッサーオーガは、答えにくそうに話始めた。


GM/レッサーオーガ:「え、ええとぉ、あの…この遺跡で魔航船を改造して人族の国に攻め入る計画を立てていました…」


フーリィ:「この間、人族の魔航船が1つ無くなったらしいんだけどお前たちの仕業か?」


バーバラ:「おら答えなっ!」


GM/レッサーオーガ:「はい!そうです!あ、いや、僕は直接はやってないんですけどね?僕じゃないんです!僕じゃ!」


PL/フーリィ:いいな、この三下感(笑)


一同:(笑)


バーバラ:「その魔航船には乗組員も乗っていたはずだよ、どこにやったんだい?」


GM/レッサーオーガ:「…まぁ……」


バーバラ:「まぁじゃないよっ!」


一同:(笑)


GM/レッサーオーガ:「あ、いえ…あぁ、その~…」


フーリィ:「殺して食ったんだろ?」


GM/レッサーオーガ:「……いや、死んだ奴らもいるんですけど、まだ生き残りも地下にいますよ…」


フーリィ:「生き残りがいるのか。じゃあ他に蛮族がどれだけいるか教えろ!」


 フーリィは例の遺跡の地図を突き出しながら質問する。


GM/レッサーオーガ:「えーと、僕の知っている限りだと30体くらいすかねぇ…」


レイン:「30!?結構いるなぁ…」


フーリィ:「じゃあこの地図にあるでかい部屋に魔航船があるのか?」


GM/レッサーオーガ:「えっと、そこの画面に全部映ってます…」


レイン:「ほう!」


 レッサーオーガの言うとおり、壁に張り巡らされた画面モニターを見ると、この遺跡内のいたるところが映し出されているようだ。


バーバラ:「なんだいこれ?このちっちゃいところにちっちゃい蛮族が入っているぞ」


 魔動機文明時代の技術で作られたこの壁の画面モニターは、現代に生きるバーバラたちには見慣れないものであったが、しばらく見ていると、これが“映像”であるということが理解できた。

 その画面モニターには遺跡全体の地図が表示されており、その映像がどの部屋のものであるか把握できるようになっていた。


 壁の画面モニターは、全部で8つのエリアを映しているようだ。

 

 1つ目のエリアは、地図の中央上に見える最も大きな部屋だ。人族から奪取したものと思われる巨大な魔航船に、蛮族たちが魔動機のパーツを運び込んだり、取り付けたりしているのが見える。


 2つ目のエリアは、1つ目の部屋の下側に位置する部屋だ。ここは蛮族たちの居住スペースになっているようで、様々な蛮族が汚らしく食事をしたり、寝たりしているようだ。


 3つ目のエリアは、2つ目の部屋の右側に位置する部屋だ。この部屋にはレイン達が乗ってきた魔動機と同じ、飛行型の魔動機が複数台置かれている。どうやら飛行機の発着場のようだ。


 4つ目のエリアは、2つ目の部屋の下側に位置する部屋だ。遺跡の正面入り口から入ってすぐの部屋で、配置された数台の魔動機と、蛮族たちが時折通過する姿が見える。


 5つ目のエリアは、4つ目の部屋の左側に位置する部屋で、レイン達が最初に入ってきた部屋だ。実際に見た景色と同じく、壁際に大量の魔動機が配置されているのが見える。


 6つ目のエリアは、地下の廊下を映していると思われる映像で、画面手前に上階に続く階段と、画面奥に牢屋があることが分かるが、その牢屋内部までは暗くてよく見えないようだ。


 そして、7つ目のエリアの映像を確認すると、そこは6つ目の廊下から繋がる部屋で、その中で1人の人間が壁にはりつけにされ、2体の蛮族から痛めつけられている光景が目に入った。

 この部屋は恐らく、蛮族たちに拷問部屋として使われているようであった。


ニトライド:「あ!あいつら…許せん!」


フーリィ:「なんてやつらだ…!」


 引き続き拷問部屋の映像を見ていると、体格の大きな蛮族がその部屋にやってきた。レインにはその蛮族が『トロール』であると理解できた。

 トロールは2体の蛮族に何かを告げる素振りを見せると、2体の蛮族は部屋から出ていき、トロールははりつけになっていた人間を抱え、牢屋がある地下の暗闇の中に消えていった。

 

 2体の蛮族は地下の廊下から階段を上がると、8つ目のエリアの映像にその姿を現した。

 8つ目のエリアは、4つ目のエリアの右側に位置する廊下であり、その廊下は床がマス状のタイルになっているようだ。

 すると、蛮族は懐からか紙を取り出し、紙に書いてある“何か”と床のタイルを見比べはじめた。


GM:(『蛮族のコマ』と『縦8マス×横9マスの背景画像』を表示し始める)


GM:いくぞ…?


PL/ニトライド:これ、まさか…?


PL/フーリィ:レイン頼んだ!(笑)


PL/レイン:さあ来い…!


 蛮族は手に持った紙を見ながらタイルの上を1マスずつ、不自然な動きで進みだした。

 

PL/バーバラ:これは私には覚えられないよ!(笑)


PL/アミラ:わかんないわかんない!(笑)


 2体の蛮族は順番にタイルの床を進み終えると、4つ目のエリアを経由して、2つ目のエリア、蛮族の居住スペースへと向かって行った。


フーリィ:「この動き何かあるぞ…?レインわかったか?」


レイン:「なるほどね、多分だけどあの床は、決まった道筋でマスを踏んでいかないと、罠が作動するんだろうね」


フーリィ:「…レイン覚えてるか…?」


レイン「あぁ、左に2マス、上に2マス、左に1マス、上に2マス、左に4マス、下に2マス、右に2マス、下に5マス、左に2マス、上に2マス、左に2マスだね。僕らが階段側に向かう時は、これを逆順に進めばいいのさ」


一同:おー!すごい!!


GM:(まじか…よく覚えたな…)


PL/ニトライド:蛮族がメモ見てるの可愛いな、こいつらも覚えてないんだな(笑)


 画面モニターに表示された8つのエリアと手持ちの地図を見比べると、地図に書いてある部屋のうち、3つほど映像でみることが出来ない部屋があるようだ。

 その中には、先ほど入ることの出来なかった小部屋も含まれていた。


バーバラ:「つまり私たちは、あの階段の下へ降りて行かないといけないわけかい」


GM/レッサーオーガ:「はい、あの階段の先の地下室が、生き残りの人族が捕らえられている場所ですね」


フーリィ:「なんで拷問してるんだ? 何を聞き出したいんだお前たちは」


GM/レッサーオーガ:「あれは…まぁ、遊び…ですかね?」


フーリィ:「遊びぃ!?」


バーバラ:「許せないねえ!」


レイン:「そうだね、やつらは知能が低い…所詮蛮族だからね」


フーリィ:「これだから蛮族は…!」


アミラ:「遊びのために生かされているのか?」


GM/レッサーオーガ:「…生き残りの人族の中に魔動機について詳しいやつがいたので、『魔航船の改造に協力するなら生かしてやる』という条件で生かされているらしいです」


フーリィ:「…この画面にない部屋があるみたいだが、そこには何がある?」


GM/レッサーオーガ:「いや…それは僕も行ったことがないので分からないです…。なにせ新人なもので…」


フーリィ:「じゃあ、この部屋の魔動機を操作して扉の開閉はできないのか?」


GM/レッサーオーガ:「魔動機の操作は分からないです…。僕はこの部屋で監視と侵入者の報告を任されているだけなので」


アミラ:「魔動機の操作が分からないのに、敵の侵入をどうやって仲間に伝えるんだ?」


GM/レッサーオーガ:「え?…それはその……叫んで…」


ニトライド:「叫んで!?そこだけ原始的なんだな!」(笑)


一同:(笑)


アミラ:「緊急ボタン的なのはないのかな?」


 魔動機に最も詳しいアミラが部屋の魔動機を調べてみたが、操作方法は分からなかった。


アミラ:「う~ん、わかんないや」(笑)


ニトライド:「そっか~、ま、とりあえず!早くみんなを助けにいこうよ!」


フーリィ:「しかし、蛮族が行き来する正面入り口の前を通らないといけないみたいだが、どうやって行くよ?」


バーバラ:「このレッサーオーガを人質にして『黙ってないと殺すぞ~!』って通るのはどうだい?」


フーリィ:「そんなの蛮族に通用しねえだろ…。見捨てられるだけだ、蛮族同士なんて仲間とも思ってねえだろうしな」


GM/レッサーオーガ:「!?…そ、そんな~…」


PL/ニトライド:しゅんとしてる(笑)


バーバラ:「お前に何か考えはないのかい?レッサーオーガよ」


GM/レッサーオーガ:「え!?僕に聞くんすか!?」


一同:(笑)


アミラ:「そいつに聞くのか?」(笑)


ニトライド:「オレたちに寝返れ!命が惜しいだろ!」(笑)


GM/レッサーオーガ:「命は惜しいけど…僕、なにも出来ないです…」


アミラ:「外で騒いで他の蛮族を引き付けられないか?」


ニトライド:「それは流石に裏切るんじゃ…」


GM/レッサーオーガ:「え…外に出たら仲間もいっぱいいるし、そりゃあ…ね?」


ニトライド:「素直だなこいつ!よく言えるな!」(笑)


フーリィ:「そりゃそうだろ…」(笑)


レイン:「こいつはもう使えないよ…もう一度口に毛布を詰め込んで、ぐるぐる巻きにしておこう」


 そういってレッサーオーガに巻き付けた紐と布をキツく締め直そうとしたところ、布の隙間から銀色の球体が転がりでてきた。

 

GM/レッサーオーガ:「あ…!そ、それは…!」


ニトライド:「なんだこれ…?」

 

 拾い上げると、それはマギスフィアに形状が酷似した球体であった。

 

バーバラ:「これはなんだい!」


GM/レッサーオーガ:「…それは…鍵です。左下の小さな部屋の…」


ニトライド:「鍵?変わった形だな」


アミラ:「わたしなら使えるかも!」


フーリィ「地図の左下っつうと、あたしらが開けられなかったところか」


バーバラ「じゃあ、まずはそっちに行ってみるかね」

 

レイン「それじゃ、縛り直そうか」


 再び口に毛布を詰め込まれ、キツく縛り上げられたレッサーオーガは、監視部屋の物陰に押し込まれた。


GM/レッサーオーガ:「モゴ、モゴ…(うぅ、ひどい…)」


ニトライド:「大人しくしてろよ!もし抜け出そうもんなら、姉ちゃんが殺しに戻ってくるからな」


GM/レッサーオーガ:「モゴ…(はい…)」


フーリィ:「まったく…お前たちのしてることを棚にあげるんじゃねえぞ…!」


GM/レッサーオーガ:「……」


 蛮族の群れによっては、群れのボスに君臨することもあるレッサーオーガだが、まゆのような恰好で監視部屋に放置されたその姿に、そんな威厳は微塵も残されていなかった。

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