第7頁 限りなく透明に近いトロール

 レーサーオーガから“鍵”を没収した一行は、先程は開かなかった扉の前へと戻ってきていた。


アミラ:「ええっと…こうかな?」


 アミラが魔動機術を行使するのと同じ要領で“鍵”に魔力を込めてみると、ピピッという機械音と共に、扉が的にスライドした。


ニトライド:「おぉ!勝手に開いたぞ!この扉には“自動ドア”って名前を付けようぜ!」


一同:(笑)


 扉の向こうはどうやら倉庫部屋のようであったが、先に蛮族が立ち入ったのか、中はひどく散らかっていた。


ニトライド:「お!ここ、何か良い物があるんじゃないか?」


GM:ニトライドが部屋に入ると真っ先に目につく物がありました。それは『アンロックキー』という鍵の形をした物品で、魔法的な鍵に対して解除判定を行えるアイテムです。


ニトライド:「あ、これ売店で見掛けたことあるやつだ、ラッキー!」


GM:その他の有用そうなアイテムを見つけるためには、探索判定を行う必要があります。


PL/ニトライド:スカウトだからボーナスが入るな。(ころころ)…12!


ニトライド:「これはなんだ?」


GM:(ころころ)ニトは『野伏のぶしのサーマルマント』を見つけました。このアイテムは通常の『サーマルマント』の効果に加えて、背中の装飾品を追加でもう1枠装備できるものです。


PL/ニトライド:前の『雪山の依頼』でギルドからレンタルした『サーマルマント』の上位互換か、これは嬉しい!


GM:しかし、装備する為にはレンジャーの技能レベルが3以上必要です(笑)


PL/ニトライド:え…。


フーリィ:「お、ニト良いもん見つけたな。それはあたしが貰うよ」←レンジャー技能Lv3


ニトライド:「あ!姉ちゃん、オレが見つけたのに!」


PL/ニトライド:くそ~~~!


PL/フーリィ:じゃ、次はあたしか。屋内だからレンジャー技能は使えないな…(ころころ)…12。あ、自動成功だ。


GM:では…(ころころ)フーリィは『多機能ブラックベルト』を見つけます。さっきのアイテムの腰版ですね。装備する為にはスカウトの技能レベルが3以上が必要です。


フーリィ:「代わりにこれやるよ、ニト」


ニトライド:「やったぁ!貰うよ姉ちゃん」←スカウト技能Lv3


PL/ニトライド:今付けている『ブラックベルト』を外して、新しく装備します。しゅるしゅる、きゅっきゅ。


GM:フーリィが自動成功したし、他も全部見つかったって判定にしてもいいかな(笑) 次に“炎の紋章がついた盾”が見つかります。


フーリィ:「なんだこの盾。レイン分かるか?」


PL/レイン:宝物鑑定判定…(ころころ)…18!おー、最大値だ!


PL/バーバラ:めちゃめちゃよく知ってる(笑)


レイン:「あぁ、これはね…」


GM:これは『炎嵐えんらんの盾』といって、合言葉を唱えることで炎を纏うシールドですね。そのラウンド中、近接攻撃に対する回避力に+1点し、更に装備者が受ける水・氷ダメージを2点減少します。


PL/レイン:つよい!


GM:ただしデメリットとして、盾が炎に包まれてる間は、装備者は自分の手番の終了時に1D6の炎属性のダメージを受けてしまいます。


PL/フーリィ:バーバラのためのアイテムじゃん(笑)


PL/バーバラ:これ、MP消費無しで使えるんですか?


GM:合言葉を唱えれるだけで使えます。


PL/バーバラ:すごっ!そんなの毎回唱えるよ!


バーバラ:「これはあたしのものだね!」←ドワーフなので炎ダメージ無効


PL/ニトライド:なんか都合がいいぞ(笑)


PL/フーリィ:次はアミラか?(笑)


GM:あとは『マギスフィア(大)(中)(小)』が見つかります。


アミラ:「マギスフィアがある~」


一同:(笑)


アミラ:「大と中は持ってなかったから丁度いいな!でも、わたしには『男爵だんしゃく』がいるから、このマギスフィア(小)は予備だな~」


 『男爵だんしゃく』とは、アミラのマギスフィア(小)に引っ付いているクマのぬいぐるみの名前である。


GM:なんだか都合が良いなぁ…まるでこのパーティの為にあつらえたようなアイテムだらけだなぁ(棒)


PL/ニトライド:それGMが言うか(笑)


GM:それ以外にある物は全部ゴミでした。


PL/ニトライド:本当に都合がいいじゃん(笑)


一同:(笑)


GM:(レインには『ひらめき眼鏡』があるから今回はなしね。アミラだけちょっとしょぼい気がするけど、魔動機文明時代産のアイテムで良い塩梅あんばいのやつが思いつかなかったんだ、ごめんよ…)


ニトライド:「いやぁ、ほんと良いとこだったな~、ここ!」


レイン:「ここにはもう目ぼしい物はなさそうだし、一旦監視部屋に戻ろうか」


 監視部屋に戻ると、レッサーオーガは部屋の隅っこで律儀に布にくるまれたままだったが、そんな彼にはもう誰も興味がないようで、一同は入ってすぐに監視画面モニターを確認した。

 人質がいる地下室へ行くためには、正面入り口の前のエリアを通る必要があるが、そのエリアを映した映像を確認すると、どうやら今は蛮族の姿が見えないようだ。


バーバラ:「行くなら今じゃないかい!?」


アミラ:「急いでいこう!」


フーリィ:「油断するなよ?」


 映像に姿が見えなかったとはいえ、いつ蛮族が通過してもおかしくはない。厳重に警戒しながら部屋を通りすぎる。

 そして、その警戒は杞憂に終わり、彼らは問題なく階段前のタイル床の通路に到着することが出来た。


ニトライド:「ふぅ、運がよかったな、じゃあ地下に行くか!」


レイン:「待って!この床には多分不思議な仕掛けがあるんだ」


ニトライド:「へぇー、想像もつかなかったぜ」(棒)


アミラ:「ここはレインに続いた方がいいんじゃないか?」


GM:(縦8マス×横9マスの背景画像を表示)


PL/レイン:これ…1回試しになぞってみてもいいですか?


GM:え…?何を言っているのかさっぱり…(すっとぼけ)


一同:(笑)


GM:もしルートを忘れてしまった時は、見識判定に成功することで次の道を思い出せるかもしれませんよ。


ニトライド:「どうだレイン、いけそうか?」


レイン:「そうだね…。きっといけるんじゃないかな。じゃあいくよ!」


ニトライド:「おう信じてるぜ」


PL/レイン:右に2マス!下に2マス!右に2マス!上に2マス!左に2マス!上に2マス!右に4マス!下に2マス!右に1マス!下に2マス!右に2マス!


レイン:「こうだね!」


PL/ニトライド:速い(笑)


GM:……レインは何事もなく通過することができました。


一同:おぉ~!!


アミラ:「レインに続こう!」


 レインが道を教えながら進んだので、他のメンバーも難なく罠をクリアした。ちなみに、もし誤ったマスを通過しようとした場合はレーザーが襲いかかって来るはずだったのだが…。


フーリィ:「さすがだレイン!」


レイン:「まぁこれくらいならね」


GM:くそ~、こんな簡単に行けるとは思わなかったなぁ(笑)


PL/ニトライド:レイン様様だな(笑)


PL/フーリィ:こっちはまったくメモしてないからな(笑)


一同:(笑)


 通路の先にある階段を降りていくと、そこには明かりのない暗い通路が広がっていた。階段から少し離れてしまうと、『暗視』を持っていないレインは一寸先も見えなくなってしまうほどだ。


フーリィ:「暗いな…あたしらは『獣変貌』するから、ちゃんとついて来いよ」


レイン:「そうだね、安易に光で照らすわけにもいかないし、肩を貸してくれ、ニト」


ニトライド:「あぁ、いいぞいぞ」


アミラ:「じゃあ、わたしは尻尾掴んでいいか?」


ニトライド:「え!?アミラは『暗視』持ってるでしょ」(笑)


アミラ:「もふりたかったんだ、ずっと」


ニトライド:「ね、姉ちゃんの方で頼むよ」(笑)


フーリィ:「や、優しく触ってくれよ…?」


PL/アミラ:もふもふ!


 リカントは『獣変貌』をしなければ暗所が見通せないため、姉弟はその頭部を獣の姿に変貌させた。アミラとバーバラには言葉が通じなくなってしまうが、通訳役のレインがいるのでそこは問題ない。

 廊下を進んでいくと、左側に拷問に使われていた部屋の入り口が見えたが、今は中に人も蛮族もいないようだった。廊下の最奥には、牢屋の鉄格子と左側に続く通路が見える。


フーリィ:「先に奥の牢屋に行ってみようぜ、人質が無事かどうか確認したい」


レイン:「僕は暗くて見えないから任せたよ」


ニトライド:「おう、任せろ!」


PL/ニトライド:じゃあ、ニトが先頭になって牢屋の前までいきます。


GM:では、ニトは危険感知判定をお願いします。


PL/ニトライド:なるほど!(ころころ)…8!あっ!低いっ!(笑)


PL/レイン:ニト!?


GM:では…ニトは何も気づきませんでした。


レイン:「ずかずか進んでるけど大丈夫かい…?」


ニトライド:「大丈夫大丈夫~!何もあるわけないでしょ~?」


GM:ニトが牢屋の前まで行くと、牢屋には幾人かの人族が幽閉されているのが分かります。では、次はフーリィが危険感知判定を行ってください。


PL/フーリィ:(ころころ)…7。自動失敗、あっ…!


PL/レイン:あれ!?フォスター家!?


PL/フーリィ:成長しまーす(笑)


PL/アミラ:自分だけ成長しやがって…(笑)


PL/ニトライド:今からでも明かり付けないか?(笑)


一同:(笑)


バーバラ:「おーい!牢屋の人たちは無事かい?」


レイン:「バ、バーバラ…!もう少し静かに…!」


GM/牢屋の人:「お、おい、大丈夫なのか…?」


 バーバラの声を聞いた牢屋内の一人が、フーリィ達に不安そうな小声で話しかけてきた。


フーリィ:「あたしらは冒険者だ。レイン、通訳してくれ」


GM/牢屋の人:「…?見張りはいいのか…?」


ニトライド:「見張り?いなかったけどなぁ」


PL/ニトライド:そこまで言われたら周りを見てみるかな。


PL/フーリィ:そういや曲がり角の方を見てないな?


 姉弟が全く同じタイミングで鼻先を左に向けると、その5メートル先には座禅ざぜんを組みながら目をつむっている大巨漢…『トロール』の姿があった。


一同: あ。


PL/レイン:どうも~…こんにちわ~…(笑)


PL/アミラ:こんな大きさの奴に気付かなかったのか(笑)


PL/ニトライド:あ、が一番正解な反応だな(笑)


一同:(笑)


フーリィ:「お、おい、ニト…あれは寝てるのか…?座ってるけど…」


レイン:「どうしたんだい?」


ニトライド:「あ~…レイン。落ち着いて聞いてくれ。横で…トロールが…寝てる」


レイン:「…え…?」


 “賢神キルヒア”の熱心な信徒であるレインだが、この時ばかりは先程のレッサーオーガのように、トロールが安らな眠りに就いてくれていることを“月神シーン”に願ってしまうのであった。

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