第32話


「ではここで寝ることにしましょう」


「そうだね」


 アリーヌの声に俺は頷き、ずっと動いてきた足を休ませた。

まだこの場所は森の中で比較的にモンスターのレベルが低い道を通っている。

そしてまだモンスターとは一度も戦っていない。


それはアリーヌが結界魔法を貼ってくれているからだ。

エルフは魔法を得意としており、近接では魔法と組み合わせた剣を使い、遠距離では高火力な魔法を使う。

基本的に魔力が低い人は近接、魔力が高い人は遠距離になろうとするらしい。


だがアリーヌは魔力が高いが近接だそうだ。




「アリーヌさんが剣士にもなろうと思った経緯はなんだったんですか?」


そういうとアリーヌは顔をあげ、それに答えた。


「最初は親に剣の才能がある。そう言われた。それで剣の練習を始めるようになったんです」


続けてアリーヌは口を開いた。


「褒められたかった。それだけ。親の喜んだ顔を見るのが嬉しかった……上手くなればなるほど、褒めてくれる。ただそれだけの理由でした。だけど徐々に正義感も湧くようになっていきました」


「私は魔力が高いです、しかし私は剣を選びました。普通に考えれば魔力が高いなら近接を選ぶのは変かもしれません。でもその時、迷わず剣士になろうとしました」


「それはなぜですか?」


「剣士で魔力が高い人間は少ないです。魔力が高くて剣士の才能がある人は少ないのが現状で、そして近接は危険な立ち位置でなりたがる人は少ないです……だから……」


「アリーヌさんは村を守りたい、正義感が強くあられた人ですごいです」


そう言うとアリーヌは顔を下に向け、答えた。


「私は……何もすごくない……何もとめられない人です」


「何かあったんですか?」


「いや、なんでもない……暗くなってきたので寝ることにしましょう」

「……わかりました」


やはりなにかあったみたいだ……。


でもあまり深堀りするのはよくない。

だから待つしかないんだろうか?




◇朝


「アリーヌさん、起きてください」


そういうとアリーヌも目を覚まし、俺に声をかけた。


「何か、ありましたか?」


「はい、500メートル先から敵の気配。かなり多い数の人間たちです」


「……わかった。人数は?」

「……100人」


「なんだと…? 100人もこちらに向かってきている……今までは20人もいなかったぞ?」





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