第30話



「一つ聞いていいですか?」


そう言うと村長は口元を開いた。


「英雄のいうことじゃ。いくらでも聞いてください」


「何か心当たりはないのですか?」


 今の話を聞いた感じだと王国に何かがあった、そうとしか考えられない。

元々は友好な関係であったのにいきなり、状況が変わり拉致してくる。そんなことあるだろうか?

 物事というのはそう変わらない。人々は変化を望まない生き物だ。今日も明日も安定した日々を送りたい、そう思ってるだろう。

 しかし現状こんなことが起きている。これには何か理由が関係しているに違いない。

 

 村長は、眉間にしわをよせながら口元を開けた。


「わしたちもそれについては、話し合った……拉致してこようとした時も、直接に

人間達に話し合った……しかしまるで理由がつかめないのが現状なのじゃ」


理由がつかめない。

そして話を聞く限り、王国との話し合いも通用しないそうに思えた。


そして口を開けない俺を見て、村長は話を続けた。


「拉致してくる人間を追い出してから、エルフたちは話し合いを何日も続けた。その中の提案には王国に直接出向く案も存在したのだが……」


「王国に何されるかわからないですよね」


直接出向く案は実際には現実味がなく、話し合いにはならない、そう考えたのだろう。


「そう……。そんな中、お主が現れた……

お主なら救ってくれるとそう感じたのじゃ」


その村長の発言を聞いた時、少し疑問が残った。

実際、いくら救ってくれたといっても、人間の僕に不安や怒りはもたないのだろうか?


そう思いそのことについて発言しようと思ったが失礼だと思い、言うのをやめる。


「あのもう一つ聞きたいことがあるのですがいいですか?」


「なんじゃ」


「自分は何をしたらいいんですか?


そう言うと村長は迷うこともなく口を開いた。


「王国に行って調査してきてほしいのじゃ。エルフをどうするのか、どうしてこんなことをするのか、そのような事を聞き出して欲しいのじゃ」


「わかりました」


「明日、アリーヌが案内をし、王国まで案内を任せる……すまない、時間がないのじゃ」


そう言うと歓迎会へと戻るのだった。










「アリーヌよ……いつも通りじゃよ」


眉間をよせアリーヌに話しかける村長。


「村長……やはり、、間違ってますよ」


そんな村長に対して話しかけるアリーヌ。


「アリーヌ……。復讐と言う言葉を知っているか? 我々はやらなくてはならない」





 

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