暗転

第68話

 

  第三章 暗転 

 

 剣呑たる三日が過ぎた。ちょうど週末の夕方に当たる。

 角畑は珍しくきちんとした服装でポートアイランドにあるシンニフォン社に車を走らせた。正面入口にある守衛横のゲートを通り過ぎる頃、角畑は初めてここを訪れ、ビハイヴにダイブした時の事が頭にフラッシュバックした。

 あの時は未知の世界に触れる衝撃や興奮で冷静な判断ができなかった。客観性を取り戻した今ならば、白や黒との是非の判断や、正しい理解に至る自信がある。


「こんばんは。角畑様ですね。七番の部屋で森井が待機しております」


 堀田のいる中央ブロックのエントランスに並ぶ受付嬢からそう伝えられた。アポを取っているから当然だ。カードキーを受け取り前回と同じ手順で堀田のいる区画に入室する。


「角畑さん。いらしたのですね」


 森井が神妙な面持ちで角畑を迎えた。以前と柄が違う制服姿の彼女は、やっぱりスタイリッシュで聡明なオーラを身にまとっていた。いつもの軽口が出るかと思われたが、場の空気がそれを許さなかった。

 ボタンひとつでパーティション壁がせり出し、プライベートモードにする事もできる部屋は今、広く解放されている状態。

 堀田の部屋らしく、神経質なまでに塵一つなく整理整頓された室内は、すべてが理路整然に配置されているかのような錯覚を覚える。調度品に手を触れたりすると、後で文句を言われそうだ。


 だが次の瞬間、角畑は目を疑った。

 堀田がヘッドベース内に鎮座し、ビハイヴにダイブしている姿を目の当たりにしたからだ。


「おい、これは一体どういう事だ。あれほど控えておいてくれと釘を刺しておいたのに! 堀田の体調は大丈夫なのか?」


 角畑は怒りに声が震え、大声で森井に怒鳴ってしまった。



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