第63話


「何から話せばいいかな。何が訊きたいのかな、角畑」


 ようやく堀田は自分が執心しているビハイヴの詳細について語り始めたのだ。


「俺は……自分は、ビハイヴ内で一国一城の主となるべく、毎日コンティニューしながら日本を、いや世界を自分の理想郷に改変しようと努力しているんだ」


「ほうほう、パラダイスの実現か、桃源郷とは……、少し意味合いが違うか」


「そこで俺は企業統治国家なるものを考えた。会社組織が国政を肩代わりするんだ。面白い設定だろう? 警察も軍隊も会社の支配下に置かれ、必要なら自由に運用できる」


「なかなか興味深いシミュレーションだな。SFにあるような、ないような。堀田は最高権力者の社長なんだろ?」


「もちろん。日本新社、代表取締役にして新生日本の最高権力者、堀田英次社長様だ」


「全てを支配下に置いて、仮想世界の日本でやりたい放題かよ」


「それが、そうでもないんだな」


 堀田はオリーブの実を口一杯に含んだ後、幾筋かの泡が昇るグラスのカヴァを流し込んだ。


「おいおい、大丈夫なのか」


「大丈夫じゃない。今ビハイヴ内の仮想日本では、大規模な内戦状態に陥って火の海なんだ。保守派の旧日本政府率いる元自衛隊と日本新社の現政府軍が衝突中」


「何だと……」


 角畑は言葉を失った。夢の世界ではなく、果てなき闘争の世界に没頭しているのか。


「やり直せばいいだろ。最初から何度でもリセットすれば」


「何回もやり直したさ。これで三回目だ。だが、どんなに巧みに支配しようとしても、必ず革命臨時政府が現れて内戦勃発だ。日本はあまりにも長く日本であり続けたため、新しい国の称号での平定や統一はできない。おまけに利権を虎視眈々と狙う諸外国まで出張ってくる始末だ」


 聞くところによると堀田社長率いる通信事業世界最大手設定の日本新社は、経済力がハンパじゃないらしい。金の力にモノを言わせて海外から武器を大量購入しているとのこと。



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