第22話
鴨川までは、そう遠くなかった。角畑は靴と靴下を脱いで冷たい川に脚を入れた。
没入型VRの水には、ちゃんと冷感があり、一体どういう仕組みなのか改めて感心する。
踏んだ足場の岩はリアルに藻でぬめり、バランスを崩して倒れそうになるほどだ。
久美子ちゃんも裸足になりズボンの裾を折り返して躊躇なく入った。彼女は濡れるのも気にせず、ざぶざぶと水を掻き分けて歩いたが、何か踏んづけたのか片足を水面から出して確認している。
「きゃっ!」
とうとう久美子ちゃんは川に尻餅をついて、びしょ濡れになってしまった。
「あ~あ、もういいや」
デニムのオーバーオールを脱いだ久美子ちゃんは、角畑に服を投げてよこしたのだ。
「カクちゃん、濡れないように岸まで持っていって」
「おいおい……、俺はザリガニのバケツを持ってんだぜ」
久美子ちゃんは色々と丸出しのまま、上着のシャツを雑巾のように絞っている。
小学校三年生ほどだが、あまり羞恥心もなく無邪気そのものだ。
「えい!」
彼女は屈むと水をすくい、角畑に向かって大量に浴びせてくる。
「うわ! やめろよォ」
「プールみたいだね。カクちゃんも脱ぎなよ」
どうも角畑を水浴びの道連れにしたかったようだ。とうとう久美子ちゃんは、赤いシャツも脱いで短いスリップだけの上半身となった。
ずぶ濡れになった白い下着はぺったりと張り付き、彼女の肌を透けさせる。キラキラと陽の光を反射する川面をバックに、ほぼ裸となった少女は天真爛漫に笑っていたのだ。
同級生と比べても若干発育がよかった彼女は、もう胸が少し膨らみ始めており、虫刺されの跡ような淡い蕾が薄い生地越しに分かってしまった。
「オイ! これ……」
「……?」
角畑はボタンを外すと、自分のシャツを脱いで彼女に渡した。
「……ありがとう! やっぱ優しいんだね、カクちゃんは」
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