第2話

 予想外とも言える令和景気の中、二人は夢を語り合い、近況報告も携帯端末で欠かす事はなかったのだが。

 今日こうして堀田から相談もなしの衝撃的告白を受けた角畑は、動揺を隠しきれなかった。


「サプライズ報告があるって言うもんだから、てっきり結婚の話かと思ったぜ。普通そう思うよな。やられた、お前に先を越されちまったと覚悟して来たのに」


「ははは、いつ相手の女ができたよ? カクさんに今まで隠し通せる訳がないだろ。第一、俺は……」


 堀田はステレオタイプの真面目な公務員。地味で質素、誠実で謙虚、大人しくて目立たない性格。人間としては面白味に欠けるのが玉に傷か。

 外見に金を使わなかったので、中肉中背の古いタイプの男前はパッとせず、女性からの評判はいいとは言えない。

 生来の寡黙さ故なのか、会話が思うように弾まず、熱心な婚活にも関わらずチャンスを逃し続け今に至る。だが、まだ諦めていないのか、ストイックにジムに通い詰め、中年太りとは無縁の引き締まった体を維持している。


 一方、角畑の方はというと……。

 独身貴族の身分が気に入っており、自由を重んずるタイプ。

 そこそこのマスクに高身長、気さくな性格から適当にモテて女に不自由した事もない。結婚して家庭に縛られたくないと口癖のように話し、最近彼女に愛想を尽かされてしまった。

 金も自分の好きなように使い、やや享楽的。自動車整備士の知見を以って、軽量アルミ製フランス車のアルピーヌ・A110、セカンドカーに旧いトヨタGRヤリス-1st Edition-と愛車を二台も転がしている。



 手羽先が焼き上がり、二人の前にレモンの欠片と一緒に供される。渋めの皿に映える少し焦げ目のある皮はパリパリとした食感で、ワインとの相性も絶妙であった。


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