中学時代
「あぁ〜実感ねえな〜、明日が引退試合になるかもしれないって。」
中学3年の7月、今までバカみたいに遊んでいたクラスメイトがちらほらと受験に向けて急に静かになってきた頃。バスケットボール島根県大会の準決勝の前日、練習後に祥吾と洋平はいつものように江津川の土手で寝そべっていた。
祥吾は小学校卒業後、梨花と同じ江津第一中学校
に通った。中学に入るとバスケットボール部に入った。当初は身長も小さく体力もなかったが、入部1年で自分でも驚くほど成長し、2年生からレギュラー入りを果たした。
梨花は陸上部でお互い部活が忙しかったが、運良く、梨花とは変わらず同じクラスだった。
変わったのは祥吾と梨花の間に洋平が入った事だ。部活がない、一斉下校や夏休み・冬休みのOFFの日は決まって3人で集合し遊んでいた。
洋平とは中学1年の時から同じクラスになり、祥吾と同じバスケ部、毎日毎日きつい練習を乗り越えて同じ2年の時にレギュラーを獲得。祥吾がポイントガードで洋平はセンター。とても気が合い、試合も会話も進めやすい。そんな洋平は祥吾にとって人生で初めての親友、いや、同士・戦友のようだった。そして、洋平は梨花ともこの2年半ですっかり仲が深まった気がする。
「ちょっと海見てから帰らね?」
土手で寝そべってた洋平が急に起き上がって言った。
「いいねいいね、石見海浜公園?」
祥吾も乗り気だ。
「うん、梨花も呼ぼうぜ。ケータイで電話してみてよ」
「うい」
祥吾が最近親に買ってもらったケータイで梨花に電話する。
「え?もう家だよ。こんな時間になにしてるの!明日試合でしょ?」
最近の梨花は祥吾と洋平に対してタッチの浅倉南みたいな感じで厳しい。
「いやさ、洋平が呼べっていうから。」
「祥吾はちゃんと寝ないと試合中に足つっちゃうんだからダメだよもう帰らないと!」
1年前の県大会1回戦、初スタメンに緊張し前日眠れずに挑んだ結果、開始5分で足をつって交代した事を梨花はまだ話に出す。
「なんのことだかわかりません。それに明日はなぜか勝つ気がするんだ。いいじゃんちょっとだけ、迎えに行くから!」
と、なかば強引に電話を切り洋平と一緒にチャリで梨花の家まで向かう。
梨花の家から石見海浜公園まではチャリで15分くらいだ。その間、梨花を祥吾の後ろに乗せて行った。
「なんか、俺ら今めちゃめちゃ青春してない?」
横で並走している洋平は両手を離しながら祥吾達に話しかける。
「危ないからちゃんと握って!」
後ろから梨花の叱る声がする。と言いながら梨花もワクワクしている気がする。もう8年半の付き合いだ、それくらいわかる。
夜の8時半、3人は砂浜につくと同時に靴を脱いで海へ駆け込んだ。
3人は散々はしゃぎ回ったのちに砂浜で寝転んだ。洋平と祥吾の写真をケータイで撮ろうとする梨花に対して、洋平が言う。
「あ、梨花ケータイにキーホルダーつけた?」
「あぁ、そうそう。沖縄のキーホルダーなんだよね。」
「いいじゃん綺麗だね。」
「ありがと」
少し恥ずかしそうに梨花がそう言った隣で、祥吾は顔を赤らめている。今が夜でよかった。
その翌日、準決勝は劇的な展開で幕を引いた。
終盤まで15点差で勝っていた江津第一中だったが、試合終了5分前・4分前と立て続けに祥吾と洋平が足をつって交代し、逆転負けを喫したのだった。
俺と洋平はコーチに親にそして梨花にこっぴどく叱られたっけ。
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