第52話 親方の一大決心

 キュリーの激怒から1週間、ルイスは土魔術師のレベルを50まで上げ、鍛冶士にジョブチェンジを済ませ、鍛冶士のレベルもある程度上がった。


 ルイス・キング・ロイドミラー


 HP 729

 MP 900

 力 1079

 丈夫さ 508

 魔力 800

 精神力 608

 素早さ 600

 器用さ 708


 ジョブ

 戦士Lv50,旅人Lv50,盗賊Lv50,剣士Lv50,槍士Lv50,武道家Lv50,弓士Lv50,船乗りLv50,斧士Lv50,魔術師Lv50,火属性魔術師Lv50,水属性魔術師Lv50,風属性魔術師Lv50,土属性魔術師Lv50,鍛冶士Lv29


 スキル

 叩き割り,回転切り,吸収切り,獣切り,地砕き

 種火,飲み水,虫除け,安眠,地図

 罠看破,聴力強化,煙幕,鍵開け,縄抜け

 剣の舞,一刀両断,ドラゴン切り,精神統一

 薙ぎ払い,槍投げ,3連突き,獣突き,風壁

 掌底打ち,回し蹴り,正拳突き,踵落とし,金剛拳

 連射,山打ち,乱れ打ち,鳥打ち,吸収矢

 波乗り,雄叫び,潜水

 ぶん回し,地擦り

 マジックニードル,マジックアロー,マジックランス,マジックシールド,マジックボム,マジックウォール

 ファイアニードル,ファイアアロー,ファイアランス,ファイアシールド,ファイアボム,ファイアウォール

 ウォータニードル,ウォータアロー,ウォータランス,ウォータシールド,ウォールボム,ウォータウォール

 ウィンドニードル,ウィンドアロー,ウィンドランス,ウィンドシールド,ウィンドボム,ウィンドウォール

 アースニードル,アースアロー,アースランス,アースシールド,アースボム,アースウォール

 金属温度確認


 ユニークスキル

 マイステータス閲覧

 セルフジョブチェンジ

 転職条件閲覧

 成長限界無効化



 鍛冶士ジョブにジョブチェンジしてからも、これまでと変わらず楽しそうに鍛冶をしているルイスを眺めながら、親方は首を捻った。


 親方の両手には、ルイスが初めて作った剣と、つい1時間前に作った剣がある。

 刀身には気泡が浮き、うねうねと波打っていて、どう見ても剣には見えない最初の剣。


 対して1週間の修行の末に完成した剣。

 刀身には気泡が浮き、うねうねと波打っていて、どう見ても剣には見えない。

 2本の剣は全く同じレベルだ。

 見せてくる度に褒めてはいるが、何を褒めたらいいか、毎回判断に困る程のひどい出来。


 鍛冶を初めて3日経っても、全く質問をしてこないルイスにしびれを切らし、少しづつアドバイスをしているのだが、全く成長していない。


 それにしても、ここまで成長しないものだろうか。

 毎日毎日嬉しそうな笑顔で金槌を振り下ろし、完成品を笑顔で見せてくるルイス。

 こんなに楽しそうに鍛冶をする者を、親方は今まで見たことが無い。


 しかし、ここまでなんの進歩も無いということは、恐らくそういうことなのだろう。

 ルイスには、圧倒的に才能が無い。

 恐らく皆無なのだろう。


 ダンジョンで見た力。

 あれほどの力があるのなら、器用さの数値も相当な数値のはずだ。

 高い器用さの数値があれば、それ相応に成長も早いはず。

 それなのに、1週間経ってもなんの成長もしていない。


 しかし、これほど楽しそうに鍛冶をする若者に「お前才能無いよ」などと言えるだろうか。


 言いたくない。

 しかし、言ったほうがいいだろう。

 絶望的に才能が無いことを続けていくのは、時間の無駄だ。


 親方は決心し、苦虫を噛み潰したような顔で口を開いた。


「ルイス」


 親方の声を無視し、金槌を振り下ろし続けるルイス。

 その姿はまるで、現実を突き付けようとする自分を拒絶しているように、親方には思えた。


 しかし、伝えなければならない。

 こんなにも才能が無いのならば、これから先、鍛冶士として飯を食っていくことは出来ない。

 飯の種にもならない無駄な努力を、親方は止めなければならない。

 それも仕事の内だろう。


「ルイス」


 再度呼び掛けても、ルイスは振り返らない。

 頑なに親方を無視し、一心不乱に金槌を振り下ろしている。


「ルイィィィィス!!!」

「お疲れ様でぇぇぇす!!!」


 親方の声に今気がついたルイスは、元気な声で返事をした。

 無視していたのではなく、聞こえていなかったのだ。


「話がある!」

「これが終わったら行きまぁぁぁす!!!」


 ルイスの返事を聞き、親方は応接室に入った。

 ルイスの手もとを見るに、あと数十分で終わるだろうと当たりをつけたからだ。


「お疲れ様です」

「おう」


 親方の予想通り、30分程でルイスが応接室に入って来た。

 ルイスの右手には、完成したばかりであろう剣が握られている。

 いや、剣にしようとしたのであろう鉄の棒が握られている。


「これどうですか?結構上手く出来たんですけど」

「…そのことで話がある」

「なんですか?」


 ニコニコとした顔で鉄の棒を差し出してきたルイスの目を見つめ、覚悟を決めた親方が口を開いた。


「ルイス、お前にはな…」

「はい」

「恐らくだが…」

「はい」

「鍛冶の才能が無い」

「そうですか」

「…ああ」

「で、これどうですか?結構上手く出来たんですけど」

「…んん?」

「いや、だからこれどうですか?」


 親方の目が見開かれ、ルイスを驚愕の目で見つめる。

 面と向かって才能が無いと言われたにも関わらず、全く落ち込んだ素振りが無いのだ。

 これまで何人かに、同じような事を言ったことがある。

 その者達は全員、ひどく落ち込んでいた。

 当然ルイスもそうだろうと思っていたのだが、全く意に介さず、作りたての剣を嬉しそうに見せてきている。


 親方は、ショックを受けすぎて現実を見つめることが出来ていないのかと判断し、もう一度非情な宣告をした。


「…ルイス、落ち着いて聞いてくれ。お前には、鍛冶の才能が無いんだ」

「そうですか、それは別にいいです。そんなことよりも、ちょっとこれ見てください。結構上手く出来たんですけど」


 親方はルイスの将来を考え、ルイスが鍛冶士として生きていくことを辞めさせるために忠告しているが、ルイスにとってはどこ吹く風である。


 それもそうだ。

 ルイスにとって鍛冶とは、一生をかけて極めていくようなものでは無い。

 たまたま見つけた、楽しい趣味の1つに過ぎない。


 ゲームにはまっている時、お前このゲームの才能無いよと言われて、そのゲームをするのを辞めるだろうか。

 普通辞めない。

 楽しいからやっているだけで、別に才能が無いと言われても、なんとも思わないだろう。

 だからルイスにとって親方の言葉は、気にするに値しないただの世間話に過ぎない。


「あの、とりあえずこの剣を評価してもらってもいいですか?」

「…分かった」


 親方の一大決心は無駄になり、次の日もルイスは楽しそうに金槌を振り下ろしていた。



 ーーーーーー



 鍛冶士の基本設定


 レベルアップ時のステータス上昇値

 HP 1

 MP 0

 力 1

 丈夫さ 2

 魔力 0

 精神力 2

 素早さ 0

 器用さ 2


 転職条件

 鍛冶をした経験


 覚えるスキル

 20 金属温度確認 金属の温度を目で見るだけで正確に測定出来る 消費MP2

 30 金属鑑定 知識にある金属を鑑定出来る 消費MP20

 40 鍛冶属性付与 自分が鍛冶で作成した物に属性を付与する 消費MP50

 50 鍛冶魔術付与 自分が鍛冶で作成した物に魔術を付与する 消費MP100

 100 ??? 消費MP300


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る