第46話 鍛冶士への弟子入り

 鍛冶士のおじさんに、刀の作成を依頼してから、一週間が経った。


 その間のルイスは、特に何事も無く、レベル上げに興じていた。

 魔術師をLv50まで上げ、解放されていた火属性魔術師、水属性魔術師、風属性魔術師をLv50まで上げ、

 今は、土属性魔術師にジョブチェンジしている。



 ルイス・キング・ロイドミラー


 HP 700

 MP 753

 力 1050

 丈夫さ 450

 魔力 653

 精神力 501

 素早さ 600

 器用さ 601


 ジョブ

 戦士Lv50,旅人Lv50,盗賊Lv50,剣士Lv50,槍士Lv50,武道家Lv50,弓士Lv50,船乗りLv50,斧士Lv50,魔術師Lv50,火属性魔術師Lv50,水属性魔術師Lv50,風属性魔術師Lv50,土属性魔術師Lv1


 スキル

 叩き割り,回転切り,吸収切り,獣切り,地砕き

 種火,飲み水,虫除け,安眠,地図

 罠看破,聴力強化,煙幕,鍵開け,縄抜け

 剣の舞,一刀両断,ドラゴン切り,精神統一

 薙ぎ払い,槍投げ,3連突き,獣突き,風壁

 掌底打ち,回し蹴り,正拳突き,踵落とし,金剛拳

 連射,山打ち,乱れ打ち,鳥打ち,吸収矢

 波乗り,雄叫び,潜水

 ぶん回し,地擦り

 マジックニードル,マジックアロー,マジックランス,マジックシールド,マジックボム,マジックウォール

 ファイアニードル,ファイアアロー,ファイアランス,ファイアシールド,ファイアボム,ファイアウォール

 ウォータニードル,ウォータアロー,ウォータランス,ウォータシールド,ウォールボム,ウォータウォール

 ウィンドニードル,ウィンドアロー,ウィンドランス,ウィンドシールド,ウィンドボム,ウィンドウォール


 ユニークスキル

 マイステータス閲覧

 セルフジョブチェンジ

 転職条件閲覧

 成長限界無効化



 覚えたスキルは、魔術師で覚えた無属性魔術のスキルに、属性が付与されているものだ。

 今ついているジョブの、土属性魔術師で覚えるスキルも同じだろう。


 魔法関連のステータスの数値も大きく上昇し、MPを温存しながらレベル上げをする必要も無くなっている。

 そのため最近では、色々なスキルを使い、牛を狩っている。

 スキルなど使わなくとも簡単に狩れるため、ただの気分転換にしかなっていないが。


 そんなルイスは、依頼していた刀の確認のため、鍛冶工房に来ている。

 前回、話し方について怒鳴られたため、少し怯えた表情をしているルイス。

 ルイスは勇気を出し、金槌の音が外まで響いている鍛冶工房の扉を開けた。


 けたたましい金槌の音が鳴り響く鍛冶工房に入ったルイスは、限界まで空気を吸い込み、腹から叫んだ。


「こんにちはあああぁぁぁ!」


 ルイスが頑張った甲斐があり、声が届いたらしく、金槌を持っているおじさんがこちらを振り返った。

 手に持つ金槌を別の者に渡し、ルイスを手招きで呼び寄せ、奥にある応接室に入っていく。

 ルイスもその後に続くように入室した。


「おう、座れや」

「はい、失礼します」


 今日のルイスは気合いが違う。

 前回怒鳴られたことが、少しトラウマになっており、目の前の人物が怖いのだ。

 そのため、言葉の前についつい出てしまう、あ、え?を封印すると心に決めている。

 何十年もかけて培われた癖を直すなど、極悪難易度であるが、出来るだけ強面のおじさんに怒鳴られたくないのである。


「一応な、できはした」

「ありがとうございます」

「まあ、一回見てくれや」


 鍛冶士はソファーの横にある箱を開け、中から刀を取り出した。

 その刀は鍔もついておらず、持ち柄も木で出来ており、見るからに試作品だと分かる。

 鍛冶士はそれを、ルイスに手渡した。


「おお~、かっこいいですね~」

「じゃあ、それでいいのか?」

「良いと思います」

「それなら良いが」

「これって、岩を両断することは出来ますか?」

「はあ?出来るわけねぇだろ」

「え…」


 驚き、落ち込むルイスを見た鍛冶士は、目の前の存在はどんな修行をつけられているのかと、疑問に思った。


 普通の鉄で作った剣で、岩を両断出来るわけが無いだろう。

 もしそんな切れ味の鉄の剣を作ろうと思えば、刀身を髪の毛よりも細くしなければならない。


 仮に作れたとしても、それで岩を両断するためには、岩に対して、完璧な角度で剣を振り下ろさなければならない。

 0.01°の狂いも許されないだろう。


 それを、細くしすぎたことによって、ぐにゃぐにゃと曲がるような剣で行うなど絶対に不可能。

 世界一の剣の達人が、それだけに一生を費やしても、不可能だろう。


「お前、岩を切りてぇのか?」

「はい、岩を両断しないといけないんです」

「砕くとか割るとかじゃダメなのか?」

「はい、ダメだと思います」

「…ほう」


 鍛冶士は考える。

 街の噂で、目の前の存在がキュリーの弟子だと耳に挟んだ。

 キュリーの修行ならば、岩を両断するという課題を出されても、あり得ないことでは無いのかもしれない。


「それはよ、自分で作れってことじゃねぇのか?」

「え?」

「岩を両断するような、そんな剣をよ、自分で作って、それで岩を両断しろっていうことじゃねぇのか?」

「…自分で…」

「ああ、だからこそ、キュリーさんはここを紹介したんじゃねぇか?」

「…キュリーさんはそこまで考えてくれていたんですか…」

「まあ、キュリーさんの考えをよ、俺が分かるわけねぇが」

「いや、そうかもしれません」


 ルイスは気づいた。

 キュリーは、刀を手に入れるついでに、鍛冶士ジョブの取得条件を満たそうとしてくれたのだと。

 まさか、1番簡単に紹介出来る鍛冶士だという理由でも無いだろう。


「まあな、じゃねぇと俺を紹介しないだろうな」

「どういうことですか?」

「いや、大したことじゃねぇ。多少名前が売れてるってだけだ」

「なるほど」


 ルイスは考えた。

 多少は名前が売れているということは、どれくらい有名なんだろうかと。

 得意気に自分は有名だと言う奴。

 日本で言えば、Twitterのフォロワーが一万人くらい、いや、十万人くらいか。

 確かに、十万人もいれば凄いし、誇ってもいいだろう。

 Twitterのフォロワーが十万人もいるんだぜ?まあ、多少は有名だよ?俺。

 ということだろう。

 それゆえの、なるほどだった。

 そんなことでマウント取ってくんなよと、ルイスは思っている。

 俺はお前を知らねぇよ、ばあか。

 という気分である。


 ルイスは知らない。

 目の前のおじさんが、この街がある国だけでなく、近隣諸国にも知られている鍛冶士だと。

 優秀過ぎる実力であるがゆえに、過去は首都で金槌を振るっており、国の鍛冶責任者だったこともあり、他国から暗殺者が送り込まれるような人物で、妻と子供を殺されかけたところをキュリーに救われ、キュリーに守ってもらうために、家族を守ってくれなかった母国を捨て、この街に住んでいることを。


 本来であれば、ルイスのような一見の客など、相手にもしない。

 そんな客を全員相手にしていれば、毎日何百人から仕事を依頼されることになる。

 しかし、家族の命を救ってもらった恩があるからこそ、こんな頼りない若造の依頼通り、剣を作っている。


 ちなみに、鍛冶工房で金槌を振るっている者達は、若い弟子ではなく、実力のある別の鍛冶工房の親方達であり、それほどの実力があるもので無ければ、弟子にもしない。

 そんな人物なのだ。


「キュリーさんの紹介だ。鍛冶を教えてやってもいい」

「…」


 ルイスは悩む。

 鍛冶士の弟子になったら、レベル上げは出来るんだろうか。

 レベル上げが出来なければ、ジェシカが悲しんでしまう。

 ジェシカの食料事情が悪くなり、お腹を空かせる日々を送らせてしまうのでは無いだろうか。


「…ありがたい提案ですが、お腹を空かせた子供がいるので…」

「飯くらい食わしてやる」

「いえ、100kg単位の肉を渡さないといけないので…」

「それも俺が用意してやる」

「…」


 ルイスの本心は、ただ単純に嫌なのだ。

 ジェシカのことなど、後付けである。


 弟子になんかなったら、毎日怒鳴られそうだし、下手をしたら殴られそうである。

 ルイスは、怖いのは嫌なのだ。


 対して鍛冶士は、キュリーに恩を少しでも返せるチャンスと、一歩も退かない。

 両者はにらみ会う。

 二人の希望は、真っ向から対立した。


「金がねぇなら俺の家に住み込みでもいい。だから、俺が鍛冶を教えてやる。みっちりな」

「…みっちり…」


 ルイスの体が震える。

 こんな強面のおじさんと、1つ屋根の下での生活。

 しかも、みっちりとか言い始めている。

 考えるまでも無い。

 地獄である。


「いえ、やはり守るべき存在がいますので…」

「俺は、お前が弟子になると言うまで、死んでも諦めん。黙って弟子になれ」


 ルイスの額を、冷や汗が流れた。



 ーーーーーー



 魔術師ジョブの基本設定


 レベルアップ時のステータス上昇値

 HP 0

 MP 3

 力 0

 丈夫さ 0

 魔力 3

 精神力 1

 素早さ 0

 器用さ 1


 転職条件

 物理の基礎知識


 覚えるスキル

 1 マジックニードル 針のような魔力を撃ち出す 消費MP2

 10 マジックアロー 矢ような魔力を撃ち出す 消費MP5

 20 マジックランス 槍ような魔力を撃ち出す 消費MP10

 30 マジックシールド 魔力を防ぐ魔力の盾を出現させる 消費MP10

 40 マジックボム 爆弾ような魔力を撃ち出す 消費MP20

 50 マジックウォール 魔力を防ぐ魔力の壁を出現させる 消費MP30

 100 ??? 消費MP100

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