第45話 無属性魔術

 ジェシカに勉強を教え終わり、B級ダンジョンの5階層に戻ってきたルイスは、さっそく牛にマジックニードルを放ってみた。

 しかし、全く効いている様子は無い。

 血も流していないし、ダメージを受けた様子すら無い。


 この世界のステータスシステムでは、攻撃する側の力が、相手の丈夫さを下回っていれば、全くダメージを与えられない。

 魔術も同様で、攻撃する側の魔力が、相手の精神力を下回っていれば、全くダメージを与えられない。


 ルイスはこれまで、全く魔法方面を伸ばしていなかった。

 そのため、この牛の精神力よりも、ルイスの魔力の数値の方が低い。

 スキルの効果で、幾分の倍率補正が入るが、それでも、牛の精神力には届かない。


「う~ん、もうちょいレベル上げないと使えないか」


 結局、いつも通りのレベル上げを始めたルイスだった。



 次の日の夕方、魔術師のレベルが50になった。



 ルイス・キング・ロイドミラー


 HP 700

 MP 300

 力 1050

 丈夫さ 450

 魔力 200

 精神力 350

 素早さ 600

 器用さ 450


 ジョブ

 戦士Lv50,旅人Lv50,盗賊Lv50,剣士Lv50,槍士Lv50,武道家Lv50,弓士Lv50,船乗りLv50,斧士Lv50,魔術師Lv50

 ジョブチェンジ可能


 スキル

 叩き割り,回転切り,吸収切り,獣切り,地砕き

 種火,飲み水,虫除け,安眠,地図

 罠看破,聴力強化,煙幕,鍵開け,縄抜け

 剣の舞,一刀両断,ドラゴン切り,精神統一

 薙ぎ払い,槍投げ,3連突き,獣突き,風壁

 掌底打ち,回し蹴り,正拳突き,踵落とし,金剛拳

 連射,山打ち,乱れ打ち,鳥打ち,吸収矢

 波乗り,雄叫び,潜水

 ぶん回し,地擦り

 マジックニードル,マジックアロー,マジックアロー,マジックシールド,マジックボム,マジックウォール


 ユニークスキル

 マイステータス閲覧

 セルフジョブチェンジ

 転職条件閲覧

 成長限界無効化



 MPと魔力が大きく上昇し、どちらも150上がっている。

 それを確認したルイスは、牛にマジックニードルを放った。

 牛は少しだけよろめいたが、それだけだ。


「しょぼ」


 ルイスはしょぼいと感じたが、ルイスの放ったマジックニードルは、牛の肩辺りを貫通している。

 魔術師ジョブのレベルが50まで上がったことで、魔力が150も上昇し、牛の精神力を大きく越えたのだ。


 貫通したとはいっても、マジックニードルのサイズは、文字通り針程の大きさしかない。

 そのため、牛は少しよろめいたくらいの反応しかしなかった。

 もしもルイスのマジックニードルを、人間が受け、貫通していれば、激痛に叫び声をあげていただろう。


 そんなことは分からないルイスは、次はマジックアローを放った。

 これは頭に命中し、牛の右目と角を吹き飛ばし、牛は声もあげることなく倒れた。


「おお~」


 マジックアローでこの威力だ。

 マジックランスであれば、どれほどの威力なのか。

 ルイスは、1kmほど離れた場所にいる牛に接近し、マジックランスを放った。

 狙いが少し逸れ、牛の前足に当たり、抉りとるように吹き飛ばした。


「おっほ~!」


 マジックランスの威力にテンションが上がり、おかしな声を出すルイス。

 まだ生きている牛に、次はマジックボムを放つ。

 牛の体の真ん中に命中したマジックボムは、牛に当たった瞬間、小さな爆発を起こし、牛をバラバラの肉片にした。


「うっひょ~!」


 ルイスの方向に飛び散った肉片を、奇声をあげながら全てかわしたルイスは、興奮した様子で手を叩いている。

 待ち焦がれた魔術が、期待に沿う威力を持っていることに、非常に満足しているのだ。


 あと2つの魔術、マジックシールドとマジックウォールは、魔術を防ぐ盾の役割らしく、この場では検証出来ない。

 無属性魔術のため、発動しても視認することが出来ない。

 これは後で検証すればいいだろう。


 ルイスは、いつの間にか持ち上げることが出来るようになった牛を持ち上げ、冒険者ギルドに戻った。



「キュリーさん、お疲れ様です、これの納品お願いします」

「お疲れ様です。かしこまりました」


 ルイスに渡された牛を片手で受け取り、くるくるとまわして状態を確認するキュリー。

 確認したところ、顔が半分吹き飛んでいるが、それ以外の部位に傷は無い。

 買い取りは、規定の最高金額になる。


「ちょっと尋ねたいんですけど」

「はい、なんでしょう」

「キュリーさんは、魔術は使えますか?」

「はい、使えますが」

「ちょっと僕に撃ってもらえませんか?」

「なぜですか?」

「今日、マジックシールドとマジックウォールを覚えまして」

「なるほど、しかし、試してみたいのは分かりますが、少し危険です」

「そうなんですけど…」


 もしキュリーが、ルイスにマジックニードルを放てば、ルイスがどれだけ頑張ってマジックシールドやマジックウォールを発動しても、確実に死ぬことになるだろう。


「では別の職員を呼んで来ます。その職員の魔術であれば、危険も少ないでしょう」

「そうですか。お手数おかけします」

「いえ」


 その後、やって来た職員の魔術を、マジックシールドとマジックウォールで防いでみたルイスは、完璧に防げたことに満足し、頭を下げてから、食堂に向かって行った。


 その姿を見送った女性職員は、キュリーに疑問をぶつける。


「キュリーさん、マジックウォールって、確か魔術師のレベル50で覚えるスキルですよね?」

「はい」

「レベル50って、キュリーさんと、お伽噺でしか聞いたことが無いんですけど…」

「そうですか」

「…さすがはキュリーさんの弟子ですね」

「弟子?」

「え?弟子じゃないんですか?もう街中の噂になってますけど」

「いえ、弟子ではありません」

「そうなんですか」

「はい。あと、このことは他言無用です。漏らせば許しません」

「…分かりました」


 女性職員は、怯えた表情で自分の業務に戻った。

 キュリーは少し考え、一人言を呟いた。


「弟子…みたいなものかもしれませんね…」



 ーーーーーー



 斧士の基本設定


 レベルアップ時のステータス上昇値

 HP 2

 MP 0

 力 3

 丈夫さ 2

 魔力 0

 精神力 1

 素早さ 0

 器用さ 0


 転職条件

 斧で魔物を殺した経験


 覚えるスキル

 10 叩き割り 戦士ジョブでも取得可能

 20 ぶん回し 武器を振り回し、横凪ぎに切り裂く 消費MP7

 30 雄叫び 船乗りジョブでも取得可能

 40 地擦り 武器で地面を擦るようにして、土や石を対象に飛ばす 消費MP20

 50 地砕き 戦士ジョブでも取得可能

 100 ??? 消費MP 50

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