第33話 槍士ジョブLv50

 ダンジョンに戻ったルイスは、剣士をレベル50まで上げているし、槍士にジョブチェンジもしたため、ステータスは十分だろうと判断し、3階層に降りることにした。


 ついこの間、ルイスの肋骨をへし折り、肺に突き刺した魔物に挑むと考えると、少しだけ怖い。

 ここまで、小さなケガはあったが、そこまで苦労すること無く、B級ダンジョンまで進んでいたため、戦闘というものの危険性を忘れていたルイスは、少しだけ心を入れ換えた。


 趣味には全力を出すべし。


 これが、今のルイスの座右の銘である。

 やはり、舐めた態度で経験値を求めてはならない。

 愛するレベル上げという行為を、片手間で済ましてはならない。


「魔物にも、感謝しないとね」


 これまでも全力ではあったが、どこかで、軽く考えていた。

 魔物にも命があり、感情もあるだろう。

 そのことを理解し、感謝しながら、経験値を得なければならない。

 自分に、狩りの危険性を思い出させてくれた、3階層の魔物への感謝を心に刻みながら、ルイスは、牛の前に立っている。



 嘘である。


 ルイスにとって、魔物の命や感情など、どうでもいいし、感謝する必要性など感じない。

 ましてや、食料としての感謝すらしていない。

 ただの経験値の塊だと思っている。


 それっぼい一人言を言い、かっこいい自分に酔っているだけだ。


 なぜなら、3階層の魔物は、3日前のルイスを倒せるほどの強さを持っている。

 ルイスとの実力が拮抗しているこの魔物は、さぞかし経験値が多かろうと考え、ハイになっているのだ。


 多大な経験値が期待出来るとあらば、恐怖など感じる訳もない。

 レベルを上げたいという、欲求を満たすためだけの道具に過ぎない。


 3日前より、力も素早さも上がっているルイスは、無事に3階層の牛を瞬殺した。


「ざっこ」


 倒れている牛の死体に、浴びせかけるように悪態をつく。

 やはり、殺されかけたことに、多少なりとも腹が立っていたルイス。


 他人の前では決して見せない姿。

 少しだけ、器の小ささを感じさせる行動。


 ルイスは、レベル上げが好きなだけの、普通の人なのだ。



 槍士ジョブに転職して4日、ルイスのレベルは50になった。

 やはり、D級ダンジョンのころに比べれば、格段にレベルアップが早くなっている。

 たった4日でジョブチェンジ可能の表示がされたことに、ルイスは満足顔だ。



 ルイス・キング・ロイドミラー


 HP 400

 MP 100

 力 500

 丈夫さ 200

 魔力 50

 精神力 100

 素早さ 400

 器用さ 250


 ジョブ

 戦士Lv50,旅人Lv50,盗賊Lv50,剣士Lv50,槍士Lv50

 ジョブチェンジ可能


 スキル

 叩き割り,回転切り,吸収切り,獣切り,地砕き

 種火,飲み水,虫除け,安眠,地図

 罠看破,聴力強化,煙幕,鍵開け,縄抜け

 剣の舞,一刀両断,ドラゴン切り,精神統一

 薙ぎ払い,槍投げ,3連突き,獣突き,風壁


 ユニークスキル

 マイステータス閲覧

 セルフジョブチェンジ

 転職条件閲覧

 成長限界無効化



 もうすでにルイスのステータスは、ベテラン冒険者であっても、太刀打ち出来ない数値になっている。

 しかし、スキルを使った戦闘をほとんどしたことがないルイスは、戦闘技術が未熟だ。

 そのため、熟練の技術を持つ冒険者が、パーティーを組んでルイスに挑めば、勝負は分からないといったところ。


 しかし、もちろんルイスはそんなことは気にしない。

 他の冒険者より強かろうが、弱かろうが、ルイスにとってはどうでもいいことだ。


 そんなことよりも、ステータス画面に表示される数字の上昇を確認するほうがよっぽど幸せなのだ。


 そんなルイスはいつも通り、ジョブチェンジで次はどのジョブにつくか、ルンルンで悩んでいる。

 時刻はもう夕方。

 ルイスはダンジョンを出て、公衆浴場に向かった。


 公衆浴場の大きな湯船に浸かりながら、のんびりと考えるルイス。

 混む時間よりも少し早い時間のため、他の入浴客達も静かにゆったりと浸かっている。


 ルイスは、セルフジョブチェンジを発動した。


 戦士Lv50,旅人Lv50,盗賊Lv50,剣士Lv50,槍士Lv50,僧侶,魔術師,商人,医師,調合士,船乗り,踊り子,吟遊詩人,芸人,画家,木工士,釣り士,料理人


 現在のルイスがつけるジョブの中には、やはり物理寄りのジョブは無い。

 しかし、転職条件閲覧を発動させ、その中の1つに、明らかに物理寄りのジョブだろうものがある。


『??? 素手で魔物を殺した経験』


 これは明らかに物理寄りのジョブだろう。


「素手かぁ…」


 槍の時とは違い、素手での攻撃となると、B級ダンジョンの魔物相手では、少し怖い。

 これは、C級ダンジョンにでも行って、条件をクリアしようと決め、「ああ~」と声を出しながら、伸びをした。

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