第19話 旅人へのジョブチェンジ

 キュリーとの質疑応答から4日がたった。


 4日間、ルイスはC級ダンジョンの四階層で狩りをしていた。

 100kgほどある大きな黒い羊の脳天に、全力の一撃を叩き込むだけの毎日。

 ルイスは、満面の笑みで過ごしていた。


 フィールドが草原で、非常に見通しが良く、出現する羊は、素早さも遅く、攻撃も弱い。

 そのかわり、非常に高い防御力をしているが、四階層の羊なら、ルイスの一撃で倒れる。

 すなわち、狩りの効率が非常に良いのだ。


 しかし、ダメージを受けることが無いため、回復薬が必要無くなってしまった。

 俺の仕事だとばかりに、毎日少年が手伝おうとしてくれるため、必要も無い回復薬を黙って飲む日々。


 そのかわり、羊を使って食事を用意してくれるし、台車を使って羊の納品もしてくれる。

 一匹づつしか運べないため、兎の角ほどの稼ぎは無いが、別にお金が欲しい訳でも無く、公衆浴場の代金さえあればいい。

 そのため、お金なんかよりも、羊の方が圧倒的に時間当たりの経験値効率が良いため、ルイスとしては、毎日が非常に楽しい。


 それにここ最近、ルイスが狩ってきた肉を、少年が孤児院に持ち帰っているため、目に見えるほど少年の背が伸びてきている。

 ルイスにとって、まるで自分が育てているような気分であり、親のような感覚になってきている。


 それはさておき、4日間大きな黒い羊を狩り続けたルイスのレベルは、50になった。

 特に50になったからといって、ルイスは気にしなかったが、いつも通りステータスをチェックした時、飛び上がるほど喜んだ。



 ルイス・キング・ロイドミラー


 HP 150

 MP 0

 力 100

 丈夫さ 100

 魔力 0

 精神力 50

 素早さ 50

 きようさ 0


 ジョブ

 戦士Lv50

 ジョブチェンジ可能


 スキル

 叩き割り

 回転切り

 吸収切り

 獣切り

 地砕き


 ユニークスキル

 マイステータス閲覧

 セルフジョブチェンジ

 転職条件閲覧

 成長限界無効化



 スキルを覚えたのはいつも通り、どうせ使えない。

 しかし、ジョブの欄に、ジョブチェンジ可能と表示されている。

 これでやっと、ジョブチェンジができる。


 ジョブのレベルは成長限界が無効化されていると、100が上限だ。

 下級職でも、上級職でも、それは変わらない。


 ジョブのレベルが上がれば上がるほど、レベルアップするまでに、多くの経験値が必要になるため、ジョブチェンジ可能になれば、

 すぐにジョブチェンジした方が、ステータスの上昇値的に効率が良くなるため、出来るだけ早くジョブチェンジすることが推奨されているし、この世界の常識だ。


 ルイスは、そこまで深くは考えていない。

 初めてのジョブチェンジでテンションが上がっているだけだ。


 ルイスは自身のユニークスキルである、セルフジョブチェンジの画面を開いたまま、ダンジョンの入口に向けて駆け出した。


 鼻唄まじりにスキップしながら、ダンジョンの入口を目指すルイス。

 初めてジョブチェンジ出来るということで、テンションが上がり、周りの羊なんて目にも入らない。


 次のジョブは何にしようか、やはり旅人か、いや戦士と商人で、何かの上級職になれそうだし、商人も悪くない。

 などと考えながら、ダンジョンを出たルイスを、少年が見つけた。


「お疲れ、おっちゃん」

「やっほ~!」

「気持ち悪いぐらいご機嫌じゃねえか」

「ふっふっふ、分かる?」

「なんだよ、わっ!」


 ルイスが少年を持ち上げ、くるくると回す。

 回しているルイスはもちろん、回されている少年も楽しそうな笑顔だ。


「ちょっ!もう!下ろせ!」

「いやっふぅ~!」


 それから数分、わちゃわちゃと遊んだ後、少年が用意していた羊で作られた昼食を二人で食べながら、ルイスは少年にジョブチェンジ出来ることを伝え、迷っていることを話した。

 テンションが上がりすぎて、とりあえず誰かに話したかったのだ。


「じゃあ旅人で良いんじゃねえの?」

「う~ん、そうなんだけどさ、商人も捨てがたいんだよね」

「まあ、上級職?ってやつになりたいのは分かるけどさ、とりあえず先に狩りの効率を上げたほうが良いんじゃね?」

「やっぱりそう思う?」

「狩りの効率が上がったらさ、次のジョブチェンジも早く出来るだろ」

「だよね~、じゃあやっぱり旅人にするよ」

「おう」

「じゃあ冒険者ギルドに行ってくるから」

「はいよ」


 ルイスは冒険者ギルド方面に歩き始めた。

 さすがに、ついこの前ユニークスキルは口外するなと言われたばかりだ。

 少年には、冒険者ギルドでジョブチェンジしてくると嘘をついた。

 まだ振り返れば少年が見えるだろう距離しか進んでいないが、すでにジョブチェンジは終わり、旅人のジョブについている。

 確認のために、ステータス画面を開き、ニヤニヤしながら歩いている。

 尚、ステータス画面はルイスにしか見えないため、人前で開いても問題ない。



 ルイス・キング・ロイドミラー


 HP 151

 MP 1

 力 101

 丈夫さ 101

 魔力 1

 精神力 51

 素早さ 51

 きようさ 1


 ジョブ

 戦士Lv50,旅人Lv1


 スキル

 叩き割り,回転切り,吸収切り,獣切り,地砕き


 ユニークスキル

 マイステータス閲覧

 セルフジョブチェンジ

 転職条件閲覧

 成長限界無効化



 旅人にジョブチェンジする前、1番気にしていた懸念事項も解決している。

 MPが上がっていることだ。

 これで、旅人はMPが上がるジョブだとわかった。

 飲み水を出せるスキルは覚えたが、MPが無いので発動出来ませんとなっては意味が無い。

 これで、初めてのスキルも目の前だ。


 ステータスを見る限り、旅人は全てのステータスが1ずつ上昇するジョブらしい。

 飲み水を出すことが出来るスキルも覚えることが出来るだろう。

 これで、途中で水を飲みに、ダンジョンの入口にある井戸に戻る必要がなくなり、ぶっ通しでレベル上げが出来るようになる。


 ルイスは効率の上がったレベル上げを想像するだけで、テンションが上がる。

 宝くじが当たったかのような、はしゃぎぶりを見せるルイス。

 道行く人の目線も気にならない。


 ルイスはいつの間にスキップを始めており、満面の笑みで冒険者ギルドへ向かった。



 ーーーーーー



 戦士ジョブの基本設定


 レベルアップ時のステータス上昇値

 HP 3

 MP 0

 力 2

 丈夫さ 2

 魔力 0

 精神力 0

 素早さ 1

 きようさ 0


 転職条件

 弱者を守る

 守る対象は、人以外でも可。


 覚えるスキル

 10 叩き割り 対象に力の1.5倍ダメージ 消費MP5

 20 回転切り 範囲内に力の1.5倍ダメージ 消費MP6

 30 吸収切り 与えたダメージの10%のHPを回復 消費MP10

 40 獣切り 獣に力の3倍ダメージ 消費MP5

 50 地砕き 地面を半径約30メートル砕く 消費MP20

 100 ??? 消費MP75

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