第18話 最強へと至る者
ピリピリとした空気で始まったキュリーからの質問は、もうすでに一時間ほどかかっている。
まず、名前と年齢を聞かれたルイスは、ルイス・キング・ロイドミラーと答え、年齢で詰まった。
水面や鉄板で確認した限り、ルイスの顔はどう見ても40歳には見えない。
40歳と答えても信じてもらえないだろうと考え、キャラクターエディットで設定した20歳だと言うことにした。
この回答にキュリーは疑問を示さず、次の質問に移った。
次に聞かれたのはユニークスキル。
冒険者ギルドとしてルイスが4つのユニークスキルを所持しているのは確認しているが、どんなスキルなのかは把握していない。
そのため、もしかしたらルイス自身が知っているかもしれないと薄い可能性にかけての質問だった。
しかし、ルイスは自分のユニークスキルを4つとも把握していた。
これにはキュリーも驚いたが、ユニークスキルを確認できるユニークスキルもあると聞いたことがある。
誰かに確認してもらったか、自分がそんなユニークスキルを持っているかだろうと考えた。
キュリーが聞いたユニークスキルは4つ。
マイステータス閲覧、これは便利だが、無くても別に困らないだろう。
自分のステータスなど、冒険者ギルドでいつでも誰でも確認できる。
セルフジョブチェンジ、これも上のマイステータス閲覧と同じで、便利ではあるだろうが、別に欲しいと思う人は少ないだろう。
転職条件閲覧、これはヤバい。
キュリーが聞いた限り、上級職であっても問題無く転職条件を確認できる。
いろいろと制限はあるようだが。
これまでの歴史の中で転職条件が明らかにされてきたジョブは多くあるが、まだまだ転職条件が分かっていないジョブの方が何倍も多い。
世界をひっくり返すような知識を授けてくれるユニークスキルだ。
これは口外出来ない。
ルイスがこのユニークスキルを持っていると様々な人に知られると、このユニークスキルを求める国同士で戦争が起きてもおかしくない。
しかもジョブというものは既得権益にもなっており、自分のジョブに他人がつく可能性が生まれることになる。
最悪、自分がついている上級職になる方法を広められるくらいならルイスを殺しておこうと考える者も出てくる恐れがある。
そして成長限界無効化、これはルイスも完全に把握している訳では無かったが、おそらくルイスには成長限界が存在しないということになる。
現在確認されている最高レベルは、歴史上1人だけ、数百年前に99レベルを記録したと伝えられている伝説の存在だ。
しかもその人物はたった1つのジョブのみ、99レベルになっただけだ。
ルイスはおそらく、全てのジョブを99まで、もしかするとそれ以上に上げることが出来ることになる。
そうなるとどうなるか。
あらゆるジョブにつくことができ、その全てのジョブで本来であれば絶対に到達することが出来ない至高へと至れるということになる。
それすなわち最強だ。
世界一強い、などいう生温い最強では無い。
世界中の最強格が束になってかかっても、一瞬で捻り潰す事が出来るような最強だ。
この成長限界無効化というユニークスキルはそういう存在を作ることが可能なスキルなのだ。
「理解しました。やはり、ユニークスキルのことは誰にも口外しない方が良いでしょう」
「何でですか?」
「絶対に殺されます」
「え? 何でですか?」
ユニークスキルが明らかになれば、ルイスが後々全人類を簡単に滅ぼせるような存在になる可能性があると知られることになる。
ならば、そんな危険な存在になる前に殺しておこうと考えるのが一般的な考えだ。
特に、国を守る王や権力者はすぐさま殺そうとするだろう。
ルイスが全人類を滅ぼすなどとは考えていなかったとしても。
「自分の身を守るために、誰にも言ってはいけません」
「…分かりました。気をつけます」
「では、ギルド長には嘘の情報を流しておきます」
「え? ギルド長なら良いんじゃないですか?」
「いえ、ギルド長は冒険者ギルド本部への報告義務があるので言わない方が良いでしょう。冒険者ギルド本部がルイスさんのユニークスキルを把握すると、各国にも情報が流れると思いますので」
「あ、そうなんですね、お手数おかけします」
「いえ、冒険者の命を出来るだけ守るのも仕事のうちですので」
ルイスはあまり深く考えていない。
できれば、全てのジョブを上げきるまで死にたくは無い。
なのでとりあえず、口外したら死ぬぞと言われたから口を滑らせないようにしようと思っている程度だ。
それよりも、出身地などを聞かれなくて良かったと思っている。
どう説明したらいいかもわからないし、万が一にもキュリーが戻りかたを知っていて戻らされたら嫌だからだ。
この世界から戻りたくない。
こんなレベル上げをしていたら生活出来るような楽園から出ていかなくてはならないようなことになれば、ルイスは自殺を選ぶだろう。
それほどルイスにとって今の生活は充実している。
「じゃあ、もうちょっと羊を狩っても良いですか?」
「そうでしたね、そのためにここにいるんでした。良いでしょう、もう少し付き合います」
「ありがとうございます」
「いえ、仕事ですので」
ルイスは、さっきまでの質疑応答を記憶の彼方に放り投げると、羊に向けて走り始めた。
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