第5話 レベル上げスタート
目を瞑り、布団に横になっているルイスはあることに気がついた。
ジョブチェンジをしたらステータスが上がるんじゃないかと。
戦士にジョブチェンジした時、レベルが上がったようにステータスが上昇した。
それも当然だ。
なぜなら、レベル0からレベル1に上がったのだから。
ならば、とりあえず転職できるジョブに転職すれば、ステータスが上がるんじゃないかと。
「セルフジョブチェンジ」
そう呟くと、目の前にステータス画面と同じように転職可能ジョブが表示された。
僧侶、魔術師、商人、医師、調合士、船乗り、踊り子、吟遊詩人、芸人、画家、木工士、釣り士、料理人、旅人
「最初は物理方面伸ばしたいよな~」
現在のルイスのMPは0である。
MPが0の状態で魔法方面を伸ばしても1回しか魔法が撃てないとかになると非常に効率が悪い。
そのため、最初の内はMPを気にしなくても大丈夫な物理方面から伸ばしたい。
「でも、ほとんど生産職だよね、これ」
「まあいっか、どうせ全部やるんだし」
「僧侶に転職」
『現在のジョブが転職可能レベルに到達していないため、転職出来ません』
「そういうパターンか」
この世界のジョブシステムは自由に転職出来るシステムではなく、1つのジョブをある程度極めてから初めて転職できるというシステムだ。
とりあえずなれるジョブに全てなって5レベルまで上げておく、などということは出来ない。
「じゃあ転職条件閲覧」
ルイスはもう1つのユニークスキルも試してみることにした。
すると、転職可能ジョブが表示されている後ろに???と7つ表示された。
ルイスは1番左に表示された???を指で触ってみる。
『??? 弓で魔物を殺した経験』
「これは弓士とかのジョブっていうことっぽいな」
ルイスはそのまま隣の???をクリックした。
『??? 剣で魔物を殺した経験』
「これは剣士だろうな~」
ルイスは順番に見ていき、6つ目をクリックすると今までと表示が変わった。
『??? 商人Lv30+戦士Lv20』
「おお~、これ上級職だ。何だろう、戦う商人で、傭兵とか? いや、武器商人とかもありえるか」
上級職を発見したことで、この世界でやり込む1つの楽しみを発見した。
ルイスはニヤニヤとした顔のまま、最後の1つをクリックした。
『??? ???Lv100+???Lv100』
「なんだこれ、レベル上限って99じゃないの? さっきの上級職が雑魚に見えるじゃん」
転職条件閲覧に表示される条件は、ルイスの目で見た人物が、ルイスが見た時点でついているジョブのみ画面に表示される。
そして、ルイスが転職条件を満たしていない場合、???として表示される。
よって今日、ルイスの視界に入った人物の誰かが、転職条件を見る限り、とんでもない強さを秘めていそうなジョブについているということになる。
「なんでこんな強そうなジョブが表示されたんだろ」
しかしルイスは、転職条件閲覧の発動条件を知らない。
「これを目指せってことかな」
ルイスはわくわくした気分のまま、今度こそ眠りについた。
そして、次の日もまたルイスはキュリーと一緒にD級ダンジョンにいた。
キュリーから見ると、あまりにも遅い動きで白兎に攻撃をしかけるルイス。
その攻撃を難なくかわし、反撃を食らわす白兎。
冒険者ギルドから貸りている剣は一撃も当たらず、空中を切り裂き続けている。
「もう1レベルあげましょうか」
「…すみません、お願いします」
もう白兎と戦えるというキュリーの見立ては外れ、もう一度寄生レベル上げをすることになった。
キュリーが5匹の白兎を狩った時、ルイスのレベルが上がった。
前回のようにハイテンションになることは無く、冷静に自身の肉体を確かめているルイス。
近くにいた白兎をターゲットに決め、静かに近寄った。
「では、やってみてください」
「はい」
ルイスは冷静に白兎を見つめている。
先ほどの戦いでは、白兎の動きに全くついていけなかった。
しかし、今回もダメならまた寄生レベル上げをしてもらえると思えば、余計な欲を出さず冷静に対処できる。
先に動いたのは白兎だ。
ルイスの右足目掛け、発達した後ろ足で地を蹴り、体当たりを仕掛けた。
それを防ぐようにルイスの持つ剣が動く。
とっさに構えた剣は白兎の体当たりを防ぐことができた。
そのまま離れようとする白兎目掛けて剣を振り下ろす。
しかし、またも剣が空中を切る。
「素早さが互角の相手に防御したあと攻撃しても間に合いません。相手の攻撃に合わせて攻撃しなさい」
「はい!」
ついつい大きな声が出る。
ルイスは必死なのだ。
これまで剣など持ったことも無いし、せいぜい虫くらいしか殺したことが無い。
そんな人間がこっちを殺しにかかってくる存在の攻撃に合わせて剣を振り下ろせるだろうか。
普通は出来ない。
しかし、やらなければならない。
でないとこれから先、レベル上げが出来ないのだ。
白兎の後ろ足に力がこもる。
「来ますよ」
「はい!」
白兎は先ほどとほぼ同じスピードでルイスに体当たりを仕掛けた。
それに合わせ、ルイスの持つ剣が振り下ろされる。
ゴッ、という音とともに、剣が白兎の頭に直撃した。
一撃だった。
ルイスのステータスは素早さ以外、力などの攻撃力は白兎を大きく超えていたのだ。
「…やりました」
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
ルイス手はまだ痺れている。
切れ味の良くない剣で、動物の部位の中で最も硬い頭蓋骨を全力で叩いたからだ。
しかし、手の痺れも気にならない。
初めて自力で経験値を入手したという感動に、ルイスは浸っている。
これからやっと、何年も待ち望んだレベル上げに全てを捧げる日々が始まる。
その感動は震えとなり、ルイスの体を包んでいた。
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