第3話 ユニークスキルとD級ダンジョン
ルイスは受付嬢の紹介で、ギルドに連結しているギルド職員専用の寮に泊まることになった。
本来であれば安宿を紹介するはずだが、ルイスが文字通り一文無しだったため、ギルド長権限の特別措置である。
寮の一室に置かれたボロボロのベッドに寝転がり、ルイスは呟く。
「暇だ…」
ここが日本の自室であれば、テレビを点けたり、スマホやパソコンをつついたりと色々暇潰しもできるが、この部屋にはベッドと窓しかない。それ以外には部屋を横断するように設置された物干し用の紐しかない。
先ほど部屋から離れた場所にあるトイレに行ったが、鼻の奥が痛むほどの悪臭を放っており、息を止めて放尿した。床に開いた穴に。
そんなトイレしか無い世界に、娯楽など期待出来るはずもない。
しかしルイスは笑っている。
「ふふふ」
自然と笑みがこぼれるくらいには、レベル上げが楽しみでならない。
「ふふふ…ステータスか……うわっ!」
一人言を言っていると、目の前に先ほど石板に表示されたルイスのステータスが空中に映し出された。
ルイスが何気なく呟いたステータスという言葉にユニークスキルが反応したのだ。
ルイス・キング・ロイドミラー
HP 3
MP 0
力 2
丈夫さ 2
魔力 0
精神力 1
素早さ 1
器用さ 0
ジョブ
戦士Lv1
スキル
無し
ユニークスキル
マイステータス閲覧
セルフジョブチェンジ
転職条件閲覧
成長限界無効化
「びっくりした~」
ルイスは目の前に浮かぶステータスの表示を見て、ユニークスキルに目を落とす。
マイステータス閲覧は、自分のステータスを見ることが出来るスキルだろう。
セルフジョブチェンジも分かりやすい。ジョブチェンジの部屋に行って水晶を触らなくても、ジョブチェンジ出来るのだろう。
転職条件閲覧も推測できる。
おそらく、そのジョブに就くための条件を知ることが出来るのだろう。
しかし、成長限界無効化の意味がいまいち分からない。
ユニークスキルが無いと成長限界にぶつかるのだろうか。
これは明日受付嬢に聞いてみることにしようとルイスは決め、まだ外は少し明るいが眠ることにした。
次の日、まだ暗いうちから起きたルイスは明るくなるのを待ち、受付嬢を待っていた。
これから新人講習の続きだ。
ダンジョンへの道すがら、軽い自己紹介となった。
「今日はよろしくお願いいたします。冒険者ギルドで職員をしているキュリーといいます」
「こちらこそよろしくお願いします。…ルイスです」
自己紹介が終わり、ルイスは昨日からの疑問をキュリーに尋ねる。
キュリーの返答によると、個人によって成長限界と呼ばれるレベルの上限があるらしい。
色々なジョブの合計レベルでの上限では無く、1つ1つのジョブに成長限界がある。
例えば、戦士は30レベルが上限で、魔術師は10レベルが上限の人もいるし、戦士が10レベルで、魔術師が30まで上がる人もいる。
よって、1人1人の個性が出てくる。
そのため、ルイスが持つ成長限界無効化というユニークスキルは、やり込みにはかかせない。
普通であれば、全てのジョブに成長限界が適用される。
しかし、ルイスは成長限界を無視できる。全てのジョブを極めることが出来る。
それを知ったルイスは笑みを深くし、1つ気になることをキュリーに尋ねた。
「成長限界が無い場合、最高レベルはどれくらいなんですか?」
「一応記録では、99レベルが最高だと言われています。それ以上になったという記録はありません。まあ、99レベルなんて歴史上1度しか確認されたことが無いらしいですし、レベルが50を越えるとスキルを獲得することも無いということらしいです。眉唾物ですね」
「なるほど、ありがとうございます」
「いえ、では気をつけて」
「はい、行ってきます」
ユニークスキルである成長限界無効化スキルは、個人の資質によって設定されるジョブレベルの上限を無視できる。
そのジョブの才能がある者はだいたいレベル30ほどまで上昇するし、天才と呼ばれるほどの才能があれば、40レベルにまで上昇することがある。
この世界の全てのジョブは、成長限界を加味しなければ100レベルまでレベルが上がる。
ルイスはギルド長の話を聞き、ならば自分は全てのジョブを99レベルに出来ると思っているが、実は100レベルに出来る。
そのことをルイスが知るのはまだ先になるが。
うさぎの楽園の前に着いた二人は、最後の確認をおこなっている。
「えっと、ギルド長からルイスさんの合計レベルが1だと聞いているんですが」
「はい、恥ずかしながら」
「戦闘の経験も無いですよね?」
「はい、全くありません」
「分かりました。では、私の後ろを着いてきてください。そして、魔物が出て来ても、絶対に私の後ろにいてください」
「分かりました」
「では、出発しましょう」
「はい、お願いします」
D級ダンジョン『うさぎの楽園』
このダンジョンはうさぎしか出現しない。
攻撃力も防御力も低く、素早さしか取り柄が無い種類の魔物である。
1階層の魔物であれば、子供が3人いれば狩ることも可能だ。
大人であれば、素人でも狩れる。
しかし、ルイスは死にかけていた。
子供よりも低いステータス。
格闘技の経験も無い。
1階層に出る最弱の白兎の体当たり一発でHPを2にされたのだ。
もともと3しかないHPが2になるということは、体力が大幅に削られたということであり、尋常ではない激痛に襲われ、地面をのたうち回った。
その様子を見たキュリーは、ルイスの弱さに驚きながらも冷静に白兎を瞬殺した。
「大丈夫ですか?」
「…大丈夫じゃないです」
「とりあえず、1度ダンジョンから出ましょう」
「はい」
ルイスは体当たりをされた太ももを庇いながら、ダンジョンから脱出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます