第2話 ジョブとステータス

 ギルド長は、新人達が退室したのを確認し、ルイスに笑顔で語りかける。


「では、質問をどうぞ」


 この会話で、ルイスは何時間もかけて説明を受けた。


 この世界は、剣と魔法の世界である。


 この街は世界有数のダンジョン都市であり、4つのダンジョンを保有している。

 ダンジョンにはE~Sまでの6段階の難易度があり、

 この街のダンジョンは、D、C、B、Aの4つがある。


 そして、ステータスがあり、その上昇で強くなる。

 ステータスは8項目あり、HP、MP、力、丈夫さ、魔力、精神力、素早さ、器用さがある。

 HP 最大HP

 MP 最大MP

 力 物理攻撃力

 丈夫さ 物理防御力

 魔力 魔法攻撃力

 精神力 魔法防御力

 素早さ そのまま素早さ

 器用さ 加工などの生産職に補正


 スキルもあり、スキルはジョブレベルが上がると、獲得できる。

 それ以外の方法では、獲得出来ない。

 スキルはMPを使い、1つの動作を行うことしか出来ない。

 剣術などのおおざっぱなスキルは無く、回転切りなどのスキルがある。

 スキルにレベルは存在しない。

 例としては、ドラクエ方式のスキルシステムである。


 この世界には、ジョブというものがある。

 ジョブの種類は、どれくらいあるのか、多過ぎて分からない。

 ジョブには、1つ1つ転職条件が定められており、

 転職条件が分かっていないジョブが、ほとんどを占めている。

 下級職は、一般的な転職条件だけだが、

 上級職は、一般的な転職条件に加えて、

 下級職のレベルを30レベルにする、などの特殊条件がある。

 転職条件を知る方法は無い。下級職のように、ありふれたジョブであれば、周知の事実になっていることもある。

 新しいジョブに転職した場合、ステータスが下がるということは無く、単純に上乗せされる。


「よろしいですか?」

「はい、長々とすみません」

「いえいえ、では早速ジョブチェンジしてみましょうか」

「はい、お願いします」


 ジョブチェンジを行う場所までの移動中、ルイスは震えていた。

 今までは、やり込めるゲームを探していた。

 これがゲームならば、最高にやり込めるゲームだろう。

 しかし、何がどうなったのか知らないが、

 最高にやり込めるゲームの中に、自分は存在している。

 これから始まるのは、人生をかけて追い求めてきた、

 最高のゲームすら超える、最高の人生が始まる予感がする。


 ルイスは歓喜に震え、笑顔を浮かべた。


 ジョブチェンジの部屋に入ったギルド長は、ルイスを水晶に触れさせた。

 そしてルイスに、ジョブチェンジを促した。

 水晶の横に設置された石板に、転職可能ジョブが表示される。


「ほう……」


 ギルド長の目に飛び込んできたのは、10を超える転職可能ジョブの数。

 その中でも目を引くのは、商人、医師、調合士、魔術師の4つ。

 この4つは基本的に、きちんとした教育を受けていないと、転職可能にならない。


 ギルド長の予想通り、やはりルイスは高度な教育を受けているようだ。

 そしてやはり、旅人もある。

 このジョブは、果てしないほど遠くの場所に移動したことがある者にしか、発現しない。

 累計移動距離では無く、どれほど遠くに進んだかが条件になっている。


「どれがいいでしょう?」

「そうですね、やはり魔術師かと思いますが」

「魔法方面ですか……それよりも、物理方面を先に伸ばしたいんですけど」

「では戦士がいいかと」

「分かりました」


 ギルド長がルイスにジョブチェンジの方法を教え、ルイスが実行する。


『戦士にジョブチェンジしました』


 ジョブチェンジを完了した瞬間、体に力がみなぎるように、何かが体の中から溢れだすような感覚を覚えた。


「おお~、出来たみたいです」

「はい、おめでとうございます。ステータスを確認してみますか?」

「はい、お願いします」


 ルイスは、わくわくしている感情を隠しきれない。


 ギルド長の指示に従い、横にある別の水晶に触れる。

 すると、ジョブチェンジの石板と同様に、ルイスのステータスが表示された。


 ルイス・キング・ロイドミラー


 HP 3

 MP 0

 力 2

 丈夫さ 2

 魔力 0

 精神力 1

 素早さ 1

 器用さ 0


 ジョブ

 戦士Lv1


 スキル

 無し


 ユニークスキル 4


「おお~、感動」

「ふむ…」


 ギルド長は困惑している。

 ステータスに0など、見たことがない。

 戦士のジョブで上がるステータスが、そのまま反映されているように見える。

 転職前は、全て0だったのでは無いだろうか。

 普通の人間であれば、ジョブについていなくても、成人していればオール10くらいにはなる。


 MPが0で、なぜ普通に行動しているのだろうか。

 MPが0ならば、気絶していないとおかしい。

 MPが0ということは、体内に全く魔力が無いということであり、生物として異常な状態のはずだ。


 そんな謎すぎるステータスを置いても、ユニークスキルが4つとは、驚愕に値する。

 そもそもユニークスキルを所持している者は、大きな街に1人いるかいないかという確率であり、数字にすると十万人から百万人に1人という割合だ。

 そのため、これまで確認された数が非常に少なく、持っている本人も詳細を知らないことが多い。

 今現在もルイスが触れている、ステータスの石板には、ユニークスキルの名前は表示されないからだ。


 ステータスの石板以外に、自分のステータスを確認する方法は無い。

 そのため、ユニークスキルを持っているが、持っているだけという者が大半を占める。

 しかも、ユニークスキルは千差万別であり、能力の予想も出来ない。

 そんな希少な物を4つも持っていて、名字を持ち、常識的な事を何も知らない若者。


 ギルド長は思った。

 この子は、なんなのだ、と。

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