第7話 初めての戦闘

「ご主人様…その…なにかいいことでもありました?」


 声をかけられて見るとアヤとタケルが抱きしめ合いながら奇妙な人を見る目でこちらを見つめていた。

 そりゃあ上の空でニヤニヤしてたら引いてしまうよな…と反省して、2人にスキルのことを悩むがこれからのことを考えるなら言うべきだと決心する。


「それが、スキルが使えるようになったんだよ!さっきも話したけど俺が旅に出た理由の一つにユニークスキルが手に入ったこともあるんだ」

「ユニークスキルですか!?ということはご主人様は貴族様なのですか!?」

「違うよ。俺は偶然にもユニークスキルが手に入ったんだよ!」


 俺は2人にスキルのことも含めて詳しく成り立ちを説明した。ただ、転生したことは伏せて話した。


「そうだったのですね!ご主人様は本当にすごい人なのですね!」

「そんなことないよ。僕にも出来ないことはたくさんあるよ。家事とかね」


 そんな他愛もない会話をしながら寝るまで話し込むのであった。俺はまるで転生前の彩と健と話しているみたいで本当に楽しかった。


 鳥のさえずりが聞こえるともう日が差しており、いい天気なのを洞窟の中でも確認することが出来た。


「ご主人様おはようございます!」

「ご、ご主人様おはようございます…」

「おはよう。よく眠れたかい?」

「はい!もう大丈夫です!」

「ぼ、僕も大丈夫です!」


 そんなことを言う2人は気丈に振舞っていたが、死ぬ瀬戸際だったのだからもう少し体力が落ち着くまでここにいた方がいいなと判断する。


「それなら良かった!もう少しここで休んでいきたいから、休んだら次の街に出発しようか?」

「ご主人様がそう言うなら従います!」

「し、従います!」


 あくまで自分が休みたいと言って2人が責任を感じないように気をつける。

 俺は2人に美味しい食事を食べさせたいと思い、外に出て動物でも狩ってこようと身体を起こす。


「食事の準備をするから、2人はここで待っているんだよ」

「はい。大人しく待っています!」

「ご、ご主人様行ってらっしゃい…」


 そんな2人に見送られながら、洞窟を出て後ろの森深くに足を進める。

 すると、少し先に一角兎ホーンラビットが美味しそうに草を食べているのが見つかる。


「(一角兎ホーンラビットか…逃げ足が早いんだよなぁ…)」


 一角兎ホーンラビットは逃げ足が早いため通常は狩ることが出来ず、罠等を張っておびき寄せて狩る動物である。


「(魔法を取得してみるか…)」


 先日手に入れた笑顔ポイントを魔法取得しようと思い立ち、手頃な火魔法を取得した。


「(よし。これで火魔法が本当に取得出来たんだな…使い方が頭に浮かんでくる…)」


 火魔法を獲得した瞬間に使い方がすぐ思い浮かぶが、ただ今のままでは使えないことも分かった。なぜなら、魔力操作のスキルがないからだ。

 世間的に魔法を扱う人が極端に少ないのはこの魔力操作スキルを手に入れるまで時間がかかるからであろう。


「(それならもう1ポイントで魔力操作も取得しよう)」


 そうして、俺は魔力操作スキルと火魔法を手に入れたのである。


「(これで、魔法を使うことが出来るな…もう少し近づいて威力を確かめよう)」


 俺は少しずつ距離を詰めて、一角兎ホーンラビットに向かって魔法を叫ぶ。


「ファイアーボール!!」

「…!?」


 警戒していなかった一角兎ホーンラビットは俺の声に驚きそのままファイアーボールが直撃する。表面を焦がし、思ったよりもダメージがあるように見える。

 想像以上の威力に喜びを感じながら、腰にあったナイフを抜き一角兎ホーンラビットに向かって駆けていく。ダメージを受けているためか自慢の逃げ足もなく、そのまま一角兎ホーンラビットの体にナイフを突き立てる。


「よし!狩れたぞ!」


 初めての狩りに興奮しながらも、倒したことの喜びと魔法を手に入れた喜びに笑みが溢れる。間違いなく成長しているのだ。

 それに、笑顔スキルの実用性の高さやもっとたくさんの人を笑顔にすればたくさんのスキルや魔法が手に入り、色んな人を助けれると胸躍らせた。

 初戦闘を終えた俺は2人が待つ洞窟に戻るのであった。

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