第6話 笑顔スキル開花

「大丈夫ですか?」


 そんな声で俺は目を覚ますのであった。見ると心配そうにこちらを覗き込む2人の姿があった。


「助けてくれてありがとうございます!」

「あ、ありがとうございます!!」


 起きてすぐに2人から感謝を言われ、驚きのまま何も言わないでいると…


「私のことは好きにしていいので、弟に食事を恵んでくれませんか?なんでもしますから!」


 意を決したように少女はこちらを見つめながら言ったのである。肩を少し震わせながら、迷いもなく自分を差し出したのだ。


「なんでもする?本当に?」

「も、もちろんです!!一生をかけて尽くします!だから、弟にはお腹いっぱいご飯をくれませんか?お願いします!!」


 少女は必死に頭を下げながら、藁にもすがる思いで助けを求めていた。だから俺は…


「わかったよ。君の弟は僕が面倒をみよう。その代わり僕の言うことを聞いてもらうよ?」

「あ、ありがとうございます!!もちろんです!なんでもします!」

「じゃあ、まずは名前を聞いてもいいかな?」


 俺は少し思案しながら、とりあえず名前を聞いてみた。


「私たちに名前はないです…」

「ん?どういうことだ?」

「小さい頃から奴隷で…名前というのはないんです…。でも、読み書きは習いましたし礼儀や作法も学んでいるので役に立てます!だから捨てないでください…」


 俺はその言葉にショックを隠せない。まだ俺よりも年下なのに、名前すら与えられず小さい頃から奴隷になっていた事実に…


「大丈夫だよ。見捨てたりなんかはしないよ。そうか…名前がないのか…僕がつけてもいいのか?」

「はい!そうしていただけると嬉しいです!」

「それなら…お姉ちゃんがアヤ。弟はタケルでどうだ?」


 俺は転生前の自分の妹と弟の名前をつけた。どうしてもこの2人を見ていると思い出してしまい、そう呼ばなければいけない気がしてならなかった。


「アヤですね!嬉しいです!」

「タケル?」

「そうだよ。それと、これは2人にお願いなんだが、僕と家族にならないかい?奴隷と主人の関係ではなく、お兄ちゃんと妹と弟の関係に」


 予想外の言葉に2人は言葉を失い顔を見合わせて、どうしていいのか分からずにいる。それもそうだろう。いきなり見ず知らずの人に家族になろうと言われたのだから。

 俺は2人が答えを出すのを焦らなくてもいいと思い、少し助け舟を出すことにした。


「別に今決めなくてもいいよ。このまま3人で過ごしてみて、それで家族になってもいいと思ったらお兄ちゃんと呼んでくれないかい?」


 一応名誉のために言うが、俺はシスコンでもブラコンでもないからな!!


「分かりました。弟と話してこれから考えていきます」

「是非ともそうしてくれ。この後2人はどうするとか考えているか?」

「いえ、行くあてもないので…」

「じゃあ、一緒に旅をしようか!」


 俺は2人にこの後困っている人や助けを求めている人を救うために旅に出ること。少しでも多くの人を幸せにしたいことを熱心に語った。

 そんな話を聞いている2人は目をキラキラさせ、まるでヒーローでも見るかのように尊敬の眼差しを送っていた。


「だから、一緒に旅をしてたくさんの人を助けないかい?」

「是非!!私も色んな人を助けたいです!!」

「ぼ、僕も!!困っている人を助けたい!」

「よし!じゃあ、まずは体力を元に戻したらここを出て次の街に行こう!」


 この後の大まかな予定を決めて、3人でこれからのことを楽しく話していた。

 するといきなり…


<笑顔スキルがレベルアップして2になりました>

<笑顔ポイントを2獲得しました>


「!?え?なんだこれ…」

「どうしましたか?」

「なんか変な声聞こえなかったか?」

「いえ、私は何も…」

「僕も聞いてないよ…おばけ…じゃないよね?」


 だいぶ話し込んでいたからか外はもう日が落ちて辺りはうっすらと暗くなってきている。


「(でも、笑顔スキルって言ってたよな…何か起こったのか?身体に変化はないし…スキルも…!?!?)」


 スキルのことを考えると、今まで効果が分からなかった笑顔スキルの効果がいきなり頭に浮かんできたのだ。


<笑顔スキルレベル2>

・対象の相手が心より笑顔になれば、スキルポイントと笑顔ポイントを獲得する

・笑顔ポイントを使うことにより、色んなスキルや魔法が獲得可能

・レベル2になったため効果内容を把握することが出来る


「(スキルレベルが上がったから見ることができるようになったのか!そりゃあいくら待っても効果が分からないわけだ!それにしても笑顔ポイントで交換出来るスキルや魔法ってどんなのが…!?!?!?)」


 今日何度目の驚きか分からないが獲得出来るスキルや魔法の膨大な量に驚きが隠せなかった。それぐらい思い浮かぶスキルや魔法が多いのだ。

 その中でも獲得出来るスキルや魔法だけに絞るとだいぶ少なくなった。


<獲得可能スキル(消費ポイント1)>

・鑑定

・水切り

・草むしり

・騎乗

・魔力操作

・裁縫

・歌唱

・幸運

<獲得可能魔法(消費ポイント1)>

・火魔法

・水魔法

・土魔法


 絞っても多いと思うだろう。後天的に貰えるスキルもあるが、鑑定スキルはユニークスキルで貴族が持っているようなスキルでもある。

 何を取るか悩みながら顔がにやけてしまうのであった。

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