第5話 少年少女との出会い

「ほら。君も飲むんだ!」


 そして、少女にも口までポーションを飲ませていく。


「(この兄弟は何も食べてないのか…どっちも軽すぎるだろ!!)」


 心の中でもっと早く出会えていればと自分を責める。それほど目の前にいる兄弟の状態は酷かったのだ。


「大丈夫か?少しは楽になったか?」

「…はい。ありがとうございます…」


 まだ弟は十分に身体を起こせないのか寝たままだが、代わりに少女が俺の腕の中でお礼を言う。


「気にしなくて大丈夫だ。それよりもこんなところに2人だけでどうしたんだ?」

「…私たちは捨てられたのです…」

「(!?…嘘だろ…)」


 俺は衝撃的な発言に言葉を失う。そんなことがあるとは聞いていたものの、実際目の当たりにすると言葉が出てこなかった。


「(子どもを?捨てる?ふざけんな。子どもはモノじゃねぇんだよ)」

「…本当に助けてくれてありがとうございます…」

「気にしなくていい。それよりも身体は動かせそうか?」


 少女ら兄弟の境遇に腹を立てるも、顔に出さないよう気をつけながら声をかける。


「…はい。何とか…」

「無理はしなくていい。それよりも今食べれるものを準備する」


 俺は洞窟の外に出てバックに入っている食料を調理しようとする。


「パンは道中食べれるようにと入っていたけど今の状態じゃ食べにくいよな…」


 そう思い、周りの小枝を集めて慣れた手つきで火をつける。そこに石を並べて持ってきていた鍋を置き、パンを中に入れ水筒から水を少し入れる。


「確か…ここに…あった!」


 仕上げにデザートに取っておいたりんごを取り出す。この世界でも、食料の名前が前世と同じで台所事情は変わらなかったのだ。

 取り出したりんごを剣でスライスし、どろどろになるまでよくかき混ぜておく。

 そうして、パン粥の出来上がりだ。


「ほら。出来たぞ!」

「…これは…ありがとうございます…」


 よほど嬉しかったのか少女は泣き出してしまった。こんなパン粥1つで泣くほど疲弊していたのだ。やるせない気持ちになりながら少女と少女の弟を両脇に抱える。


「食べられそうか?ほら。熱いけどゆっくりお食べ」


 少しずつだが2人とも食べてくれる。1口ずつ噛み締めながらゆっくりと…美味しそうに…涙を流しながら。


「ここまでよく頑張ったな。もう大丈夫だぞ。食べ終わったらこのまま抱いてるから寝て大丈夫だぞ」


 食べ終えた2人はすぐにコクコクと眠そうにしていたのでバックから予備のタオルを取り出してそれを掛けて寝かせつける。


「(起きたら事情を聞こう。場合によっては村に帰ることも考えるか)」


 俺は今後の方針を考えながら少しの間眠りにつくのであった。

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