3話目 笑顔スキルとは?

 先日、父さんと母さんの許可を経て俺は教会に1人で来ていた。


「いよいよか……緊張するな……」


 白を基調とした建物に上部には円形の中に羽の生えた女性がこちらを見て微笑んでいる。

 前世の記憶とは全く違った教会だが、それでもここで人々はスキルを授かっていく。


「人を助けれる、救えるスキルが欲しいな…」


 そもそも、ユニークスキルが発現しているのは珍しいことで平民でも1万人に1人くらいの割合だ。


「さぁ、次の方どうぞ!」


 ようやく俺の番が来たのか受け付けのお姉さんが呼んでいる。緊張しながらも案内された部屋に入り椅子に着く。


「それじゃあ、この水晶に手をかざして貰えるかな?」

「はい!分かりました!!」


 神父さんの言う通りに目の前にある透明な水晶に自分の手をかざしてみる。

 すると…少し光ったと思ったら手のひらがほんのり温かくなる。


「もういいぞ、坊や。体調はとうだい?」


 自分の身体をさすったりするも異変は感じない。


「大丈夫です!元気です!!」

「そうか。それなら良かったよ」


 神父さんが優しく微笑んで俺の頭を軽く撫でてくれた。中身は18歳だから少し気恥しいが、次の言葉を待っていると…


「坊や。おめでとう。ユニークスキルがあったよ」


 そう言って先程神父さんだけが確認できた内容を紙に書いていく。

 そして、俺に微笑みながら紙を渡すとまた撫でられるのであった。


「笑顔?これはスキルなのですか?」


 渡された紙のユニークスキルの項目を見るとただ一言笑顔としか書いていなかったのだ。


「ちゃんとユニークスキルとなっていたよ。効果は自ずと使い道が分かるようになっているからこれからを楽しみに待ってなさい」


 どうやら、ちゃんとしたスキルらしい。ただ、どんな効果かは分からずそのまま帰路に着くしかなかった。


「ただいまー!」

「!?レン!無事か!体調は?怪我とかは?胸が苦しくなったりしてないか?身体が思うように動かな…ヘブシッ!!」


 家に帰ると父さんが怒涛の言葉で捲し立てながら、飛び込んできたのだ。ただ、すごい勢いだったのか今目の前で転んで床とキスをしている。


「レンおかえり。スキルはあったかい?」

「母さんただいま!うん!あったよ!!」


 そんな父さんとは裏腹に台所から来た母さんは落ち着いてまるでスキルを授かるのは当然というように聞いてきた。

 まぁ、授かったんだけど…なんで当たり前に持っていると思ったんだろ?……母の勘?


「本当か!?どんなスキルだったんだ?」


 床との熱いキスも終えて父さんが満面の笑顔で椅子に腰掛け、母さんと一緒に期待の眼差しを向けてくる。


「笑顔っていうスキルなんだけど名前だけで…まだ効果は分からないんだよね…」

「レンらしいじゃないの。たくさんの人を笑顔に出来るスキルだといいわね」

「全くその通りだな!レンを見て笑顔にならない方がおかしいしな!」


 父さんの言うことは理解できないが、でも母さんの言う通りたくさんの人を笑顔に出来たらいいなぁ…

 それに、わがままを言えば泣いてたり、困ってたり、苦しんでいる人でも笑顔に出来たらどれだけ嬉しいことか…


「そのうち効果は分かるらしいから、明後日には出発しようと思うよ」

「明後日は早くないか!?1ヶ月、いや半年くらいここにいて効果が分かってからでもいいんじゃないか?」

「あなた?応援するって決めたでしょ?今更ぐだぐだ言わないの!」


 相変わらず父さんは心配症だなぁ…。それでも、俺はこんなに心配してくれる人なんて少なかったから嬉しいんだけどね。

 そんな微笑ましい光景も、明後日には旅立つと決心して窓の外を見つめるのであった。



「こんな寒いところ…嫌だよ…早く帰りたいよ…誰か助けて…」


 レンの助けを待つ人々はたくさんいるのである。そして、これからたくさんの人を笑顔にして最強になるなんてこの時は思ってもいなかった。

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