第13話 堂島vs冒険者
「来たな…」
現れた冒険者は扉を開けながら中を覗き込み辺りを注視していた。
「(さて、ここからは少しばかりのこちらの気持ちだ。喜んで欲しいな)」
冒険者が中へと進むが辺りは真っ暗で何も見えていなかった。でも、確実に何かいることは感じ取っていた。
そうして、全員が入るといきなり扉が自動的に閉まり隔離された空間になると空間全体が光を灯し中央で仁王立ちしている堂島を照らしだす。
「ようやく来たな。ようこそ我がダンジョンへ」
堂島は最初が肝心だと思い、威厳者のように振る舞い自分を大きく見せようとしていた。
「……お前は誰だ?」
「答える義理はないな。お前らが侵入してきたんだ。先に名乗るべきでは?」
「俺はこの街の冒険者ギルドのマスターだ!お前は魔人か?」
以前このモントーヤ帝国では魔人が暴れて街が3つ程壊滅に追い込まれた記録がある。それほど脅威的なため魔人は見つけたら報告しなければならなかった。
「ふっ…さぁな?さて、侵入者はそろそろ退場してもらおうか」
堂島がそう告げると殺気を出し相手を脅かす。冒険者もその殺気に当てられ戦闘の準備を始める。遂に堂島vs冒険者の戦いが始まろうとしていた。
「各自展開しろ!魔法職は前衛に支援魔法を!前衛職はスイッチしながらあいつを追い立てろ!」
ギルドマスターのワトリングが大きな声で全体に指示を出していく。そして、その声に忠実に冒険者たちは散開しこちらに駆けてくるのであった。
「やれやれ。少しは工夫しないのかね?」
そう言うと、堂島の頭上に大きめのファイアーボールが現れ目の前の冒険者に目掛けて飛んでいく。
冒険者はあまりの速さに回避することが間に合わず、直撃してしまう。しかも、威力も強いのかくらった冒険者はなかなか起き上がらない。
「(あれから魔法の練習しといて良かったな…レベルも上がって威力も強くなったし、それに便利なスキルも手に入れたからね)」
実は堂島は魔法の練習をしている間に3つスキルを獲得していたのであった。その1つがこの無詠唱スキルだ。
無詠唱スキルは魔法名を発さずに思うだけでその魔法が使えるようになるという非常に便利なスキルで相手に事前に知らせなくていいメリットがあった。
「ちっ…無詠唱スキル持ちだ!前衛職は距離を取りながら相手の出方を伺え!」
「来ないならこっちから行くぞ?」
そう言うと、同じようにファイアーボールが頭上に現れるがそれだけじゃなくウォーターボール、サンドボール、ライトボール、ダークボールとカラフルな球が浮遊していた。
これが2つ目に手に入れたスキルだ。その名も多重詠唱スキルだ。たまたま2つ出せないかなーと練習していたら手に入ったスキルでそれから練習していたら同時に16個まで出せるようになっていた。
「な!?多重詠唱だと!?危ない!」
ワトリングの注意虚しく次々と魔法が前衛職に被弾していき何名かは光の粒子となって消えてしまっていた。
「ちっ!後手に回ってちゃ拉致があかねぇ!ここはリスポーン可能なんだから、人数の差で押し切るぞ!」
「「「「おう!」」」」
「「初級魔法・火魔法!!」」
「「「初級魔法・水魔法!!」」」
「「初級魔法・土魔法!!」」
「初級魔法・光魔法!」
「初級魔法・闇魔法!」
やる気に満ち溢れた冒険者の魔法がいっせいに堂島に飛んでいく。でも、堂島は気にすることなくその場から1歩も動かなかった。
そして、激しい爆音と共に現れた堂島は無傷で何事も無かったかのように仁王立ちしていたのだ。
「ん?何かしたか?さて、こちらもいくぞ!」
更に追い打ちをかけるように次々と魔法が冒険者に飛んでいく。経験のある前衛職は何とか避けることが出来ていたが、それでも少しはくらっていた。経験の浅い冒険者はもう光の粒子となって退場していた。
「無傷だと…何をしたんだ?」
「おい!ギルドマスターどうするんだよ!」
「近づくにも飛んでくる魔法が多くてなかなか近づけねぇ!」
「魔力が切れるまで待つか?」
「魔法職の魔力の方が消耗が激しいだろ」
「支援魔法に攻撃魔法、それに回復魔法も使っている。これから防御魔法なんか使ったら魔力が足りなくなるのはこっちの方が先だろ」
「どうやら、揉めているみたいだが?こんなもんなのか?」
堂島は煽りながらものすごい速さで魔法を放ち次々と冒険者を粒子に変えていく。最初50人ほどいた冒険者も今は20人ぐらいしかいない。
「これはやばいな…高ランクの冒険者を呼ぶしかないな」
「それでもやれるだけやるぞ!!」
「「おう!」」
「ふふっ…もう少し楽しませてくれ」
<…ティリン!初級魔法・火魔法のレベルが上がり3になりました!>
この間聞いたレベル2の音声からようやく上がったみたいだ。
「(お?新しい魔法が使えるようになっているな…試しに使ってみるか)」
こうして、堂島vs冒険者の戦いは終局に向けて激しさを増していくのである。
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