第10話 ダンジョン拡張

「みんな今日は討伐に参加してくれてありがとう。報酬は各自取りに来てくれ」

「なんか思ったよりも簡単じゃなかった?」

「しかも1フロアしかないって…初心者用だな」

「国王様もがっかりするだろうよ」

「しかも、俺たちに大量の報酬出しちゃってるしなぁ…」

「でも、Fランク冒険者までならいい練習場所になるんじゃないか?」

「確かにそうだな。リスポーン出来て、敵も強いのはそこまでいないからあそこで経験積んだらEランクくらいにはなれそうだな」

「ギルドもそんな感じで考えてるんじゃないか?」

「新しく冒険者になりたいっていうやつの認証試験にも使えそうだな」


 ギルド内は堂島のダンジョンについて各々が思っていることを語りだし、今後のダンジョンの在り方を予想していた。

 一方…



「国王様!申し上げます!」

「うむ」

「先程依頼していたダンジョン捜索なんですが、たったいま冒険者たちが戻られました!」

「おぉー!ようやくか!どうなった?」


 待ちに待ったダンジョン攻略の報告を今か今かと期待に満ちた目で宰相の報告を待つ。


「それが…フロアは一つだけで敵も弱く宝箱から出るアイテムも弱いものばかりだったそうです」

「な!?それは真か!」

「はい。ギルドマスターのワトリングも同伴しダンジョン内を確認したので間違いないそうです」

「それは…困ったな…ギルドは今後どうするつもりか聞いてるか?」

「はい。ランク昇格試験やGランク冒険者の育成に使うことを検討していると」

「やはりそれしかないのか…」

「はい。残念ながらこのダンジョンはハズレでしたね」

「仕方ない。ダンジョンの中を確認できただけでもよしとしよう」

「左様でございますね。少しだけ懐が痛くなりましたが、新しい冒険者が経験を積むことができる場所はなかなか無いのでこれはこれで良かったのでしょう」

「うむ。ワトリングにダンジョンの使用許可を渡して好きに使わせてやってくれ」

「ははっ!」

「(1フロアだけのダンジョンは初めて聞いたな…他よりも初心者向けのダンジョンが出来てしまったんだな…)」


 残念だと思いつつもこれから成長する若い冒険者たちに期待を寄せていくのであった。



「ガイド!今日は2Fを作っていくぞ!」

「かしこまりました。無理をなさらずに頑張りましょう」

「そうだな!」


 そうやって気合いを入れてまず壁や罠などを設置するがもちろん1Fよりも少しだけ複雑にして違いを演出していく。


「こんな感じかな?」

「マスター…」

「ん?ガイドどうかしたか?」

「無理をなさらずと申し上げたのに、いくら語りかけても集中してかれこれ5日間ほどずっとダンジョンを作成していましたよ」

「え!?そんなにか!?(全く気づかなかったし、そんなにお腹すいてないな)」


 不思議と空腹は感じず、むしろまだまだダンジョンを作成出来るくらいであった。


「一旦休んでください。お願いします」

「そうだな!心配かけてごめんな?」

「私のマスターは堂島様。あなた様だけなのです。お体を大切にしてくださいませ」

「今度から気をつけるよ!ご飯食べるよ!」


 ガイドに心配をかけまいと普段より2割増で気丈に振る舞い、食事を取って寝ることにした。

 それから数日後、2Fフロアが完成した。


「完成おめでとうございます。マスタールームを3Fへ移動しますか?」

「よろしく頼む!そして、開場もしてくれ」

「かしこまりました」




「今日はここでモンスター相手への素早い陣形作りの練習をしていこう!」


 元気よくみんなに声をかけているのはフェニックスパーティーのニコラスだ。


「ニコラス怖いよ〜…」

「ガルベスめそめそするな!億万長者に憧れて冒険者になったんだろ?」

「でも〜…」

「大丈夫だ!ここは『はじまりのダンジョン』だから俺たち初心者パーティーにも攻略できるさ!」

「本当かな…?」

「ニコラスこんなやつほっといて先行こうよ!」

「おい!サダ!先いくな!」

「大丈夫だって!前衛は俺に任せとけ!」

「緊急時の陣形の確認なんだから、いつもの攻略とは違うんだぞ?」

「わかったって!じゃあとっとと練習しようぜ!」

「ピノ陣形見ながら自分の配置を確認してくれ」

「(…コクッ)」

「じゃあまずはスライム3体と遭遇した時の陣形を作るぞ!」


(…グルルルゥ)


「な!?ハウンドドッグだ!緊急陣形の準備!」


 すぐさまフェニックスパーティーはハウンドドッグを迎え撃つ陣形を作る。


「ピノ俺たちにバフを。そして、何かあれば回復を頼む」

「(…コクッ)」

「おい!ニコラスどうするんだ?」

「サダは極力前で迎撃してくれ。ガルベスはピノに攻撃がいかないよう守って」

「「了解」」

「いくぞ!」


 ハウンドドッグはフェニックスパーティーを睨みつけて、今にも飛びかかってくるところであった。しかし…


(…ゴゴゴゴゴゴ)


「な!?次はなんだよ!?」

「地震か?上の岩が落ちてこないよう気をつけろ!」


(…シュッ…タッタッタッ)


ハウンドドッグは異変を感じて奥の通路に逃げていった。


「揺れが収まったか…でも地震なんて珍しいな…」

「…ニコラスゥ…僕もう無理だよ…」

「ガルベス大丈夫だよ!ハウンドドッグも今の揺れでいなくなったし、ちゃんとピノを守れていたじゃないか?」

「本当?」

「(…コクッ)」

「ほら!ピノも頷いてるし、安心しろよ!」

「うん!」

「おい!ニコラス!こっち来て見てくれ!」

「あれ?サダは…また一人行動して!」


 呼ばれた方向へとニコラスたちが行くとそこには地下へと続く階段があった。


「この前来た時こんなのあったか?」

「いや、なかったはずだよ」

「だよな?これって新発見じゃね?」

「とりあえず急いで帰ってギルドマスターに報告しよう!」


 フェニックスパーティーは地下へと続く階段について報告しようとギルドへと向かった。

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