第八章の⑬:新聞用紙値上げ交渉の記事を見て②

前回からの続きではあるが、販売店は如何にして利益を上げているかまでは書きました。そこで、今回はこれから苦しくなる新聞の戸別配達事業について色々書いてみたいと思います。


まず、単純に新聞購読料の大幅な値上げがあった場合、今まで新聞を読んでいた顧客が大量に契約を解除することは十分に考えられます。そうなると、単純な販売部数減による売り上げの減少が新聞社にとっては痛手となるでしょう。

そして、販売店にとっても部数の減少は大きな痛手・・・下手をすれば致命傷になります。

何故なら、『そのお店が販売している部数』×『折り込み単価』が単純に販売店の売り上げであり、新聞の販売そのものではほぼ利益が無い構造なので、新聞販売部数の減少はチラシ配布部数の減少に直結致します。

例えば、一般的に3,000部(私が働いていた当時)が2,000部まで減少(1,000部減)したとすると、前回の計算式だと・・・


減少部数1,000部×チラシ折込単価5円×30日=15万円が単純にひと月で吹き飛ぶことになります。当然、今の新聞業界は私が働いていた当時より発行部数も減少していますし、折り込み単価も変わっているでしょうからこの数式が単純に当てはまるわけではないですが、まぁ簡単に計算するとこうなるわけです。


当然、15万円が吹き飛ぶという事はフルタイムのパート従業員一人分の月間給料ぐらいにはなるので、販売店の運営上も打撃となる事は間違いないわけです。


さて、こんな話を聞くと当然今後の新聞業界はかなり見通しが暗い・・・少なくとも新聞社のグループ事業の中で新聞販売の重要度や社会的影響はどんどん低下していくであろうというのは容易に予測されるのですが・・・私としては『いずれ』大きく部数が減っていくことになろうとも『今すぐに』業界が消滅するほど少なくなることは無いだろうとは考えています。


まぁ、理由としては勘のいいかたや業界に通じている方はわかると思いますが・・・


ここから先はあんまり新聞用紙値上げと直接には関係しませんが・・・実際の所『新聞社の販売部数』と『実際にお客様に届いている部数』の乖離が大きくなるのではないだろうか・・・と予想している所で、ちょっとだけ『あくまで私が働いていた当時の新聞販売の実情』書いてみます・・・(当時の話です!当時の)


さて、新聞社・販売店両方にとって部数減が経営に打撃を与えるという話は書きましたが、もしこの部数減が通常で考えられるより経営への打撃が少ない場合と言うのは想定できるでしょうか?

例えば、新聞社が1000部印刷して販売店に全部数を卸し、販売店も全部数を顧客に配達できている場合、これは何も問題がない。メーカー(新聞社)が卸小売業(販売店)に適正な在庫を販売し、売り切っているからだ。ところが、新聞の購読者数が契約解除や他社への乗り換えで減少し、実際は800部しか販売できない状況になったとしたらどうだろう?この場合、販売店側としては200部少なく仕入れ、800部を販売できていれば問題はない。

だが、この業界においては新聞社の方が立場が強く、販売店は総じて弱い立場に置かれることが多い。『今まで通り1000部購入してくれなければ新聞を下すのを辞めますよ、流通を止めますよ』と言えば新聞販売が経営手段の中核である販売店は従わざるを得ないのが当時は実情であった。

となると、売れないとわかっていても販売店は仕入れなくてはならず、仕入れた分を売るべく新聞契約数を獲得して行かねばならないという状況になるわけだ。これがまだ他社への乗り換えなどで減少したのであれば、まだ再度契約を獲得するチャンスはあるだろう。だが、もし『もう新聞は読まない、ネットニュースで十分だし新聞に支払うお金を他に回したい』と言う顧客が大半だった場合、減少した顧客の再獲得は非常に困難なものとなる。


新聞社としては、販売店が売れようと売れなかろうと自分たちの売り上げが確保できれば問題ないわけで、販売店の実情には目もくれずこれまで通りの部数を販売店に押し付けるのが当たり前のように行われていた。それどころか、新聞社側は自分たちの売り上げを増加させるために例えば1,000部のキャパシティしかない店舗に1,500部、つまり500部の増加を『お願い』と言う名の『いう事聞かなければ取引を考え直す』キャンペーンを展開していたのである。まぁ、実際には『20年以上前に店舗で働いていた当時に某新聞社本社の担当者が店長と話をしているのを立ち聞きしたから知っている』わけだが。今は知らんけど。これが裁判沙汰や議員への請願にもなった『押し紙』問題と言うわけである。


さて、続いてこの押し紙問題についてさらに書いてみようか・・・


とっぴんぱらりのぷう

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