第六章の⑥:新聞屋時代の思い出(集金編2)


そして私がどうやって集金率100%を達成したか?だが、

結論から言ってしまえば単純な話である。

『努力と根性』の一言に尽きる。

ただ、この時の活動は私の人生において、営業マンとしての能力を鍛えるのに非常に有効であったとは思う。

(有能な営業マンになれたとは思っていない。人並みに飯を食える営業マンにはなれたと思っているが)


まずはひたすら顧客の行動パターンを把握。

配達終わりに営業を開始するまでのわずかな仮眠時間を削って未回収顧客の家に訪問。通常の活動では会えない顧客は私たちの時間帯と在宅パターンが異なると考え、普通の営業活動・集金活動の時間帯以外の時間帯にも訪問を繰り返す。

難易度をS(特級)→ABC→D(簡単)と設定するなら、これで会えるお客さんは難易度Dである。活動時間帯をずらすことで、変なお客さん以外は大体回収できた。

この場合、通常の訪問販売の時間帯で回収できることが多かった。


ただ、それでも回収できないお客さんは深夜の帰宅、夜勤で昼間は寝ている等の特殊な時間帯のお客さんも多かったので、通常であれば夜8時ごろまでの訪問で終わらせ帰宅し朝刊に備えて寝る時間を削り、夜8時以降の訪問なども行っていた。

まぁ、睡眠不足にもなりがちな行動だったので難易度がCと言ったところになるかな。

普通は来ない時間帯に訪問されびっくりされることも多かったが、私の受け持っていたお客さんは良い人が多かったので、「夜遅くまでご苦労さん」という事できっちり支払ってくれる方がほとんどだった。その日は持ち合わせがないお客さんでも、特に問題なければ別の日にアポイントを取り直して訪問すれば、忘れられてない限りは回収に問題はなかった。


そして、だんだん難しくなるのがここからであるが、昼間にいるはずなのに居留守を使って支払いをしようとしないお客さんもいたわけで。

こういう人は何度訪問してもドアホンや窓からのぞいて新聞屋とわかると居留守を決め込み、テレビ迄消すという人もいた(笑)

実際、居留守を使っているのにカーテンを閉める挙動が目の前であったりと、明らかに居留守を決め込んでいる人もいたな。

ただ、こういうお客さんも難易度としてはBクラス。回収できないわけではなかった。

人間、外出せずにずっと一日家の中に閉じこもっていても平気と言う人も多いが、まぁ一生家に閉じこもっている人と言うのはまずいない。どこかのタイミングで外出は必ずしてくるので、時間はかかるがそのお客さんの家から見える範囲外(私からは見えている)で待機し、外出のタイミングで『ちょうどよかった、たまたま通りかかったんですよ』とわざとらしく声をかける。

当然向こうとしてはギョッとするわけだが、こちらとしては意に介していない風で支払いをお願いする。

お客さんとしては、明らかに『やられた』と言う雰囲気を隠し切れずに渋々支払うか、『持ち合わせがない』と言って逃げる人もいた。

逃げられた場合、次回の訪問時にまた居留守をつかわれて逃げられることがほとんどだったが、同じように待ち伏せで声をかければ二度目はさすがに諦めて払ってくれるようになっていた。まぁ、こういうお客さんはその後も『私が』訪問すれば渋々ながらも支払ってくれるので、ちょっとサービスを付けて粗品を渡したりもしていた。そうする事で後のクレームも防いでいたりもしたわけで。


そして、だんだんややこしくなってくるのがAクラスのお客さん。

ちょっと偏見と言うかあまりよくない書き方ではあるが、『●●荘』と言った名前で、築50年以上は経過していそうなボロボロでトイレと風呂が共用と言ったようなアパートや、いわゆる廃墟と見まごう程の文化住宅と呼ばれるようなところに住んでいるお客さんが多かった。

正直、これは新聞屋側も悪いのだが契約数を追いかける余り新聞など絶対に読まないであろう客層にも半ば無理やり契約をさせていた、もしくは拡張団(営業編で書きます)が粗品で釣り上げて契約を取ってきたような顧客が多い。

悪い言い方だが、こういうところのお客さんは本当に新聞を読まない。私も「オタクが無理やりとってくれって言うから契約したけど読まないしゴミにしかならないんだよ!」と怒られたことも多数あり・・・

こういうお客さんはお金を持っていないことも多いので中には開き直って「金は払わん」と言われたこともあった。一度追い返されたらその後は居留守の繰り返しでどうしようもないのではあるが、Bクラスと同じように出待ちを行う事で捕まえる度に支払いをお願いし、良くないことではあるがランクの高い粗品を提供するなどして何とか支払ってもらい、その後は店長と相談し契約の継続はお願いしないことにすることで、後の不良債権化を防ぐことにも努めていた。

ここまでで大体Aクラス。このAクラスの人たちまでは私の睡眠時間やプライベートを削れば何とか支払ってもらえるのだが、私がたった一人のお客さんではあるが回収に最後までてこずったお客さんを次回紹介したいと思う。それでは。


とっぴんぱらりのぷう

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