第六章の⑤:新聞屋時代の思い出(集金編1)

さて、ルーチンワークと配達は書いた。

次は集金か。

これも結構えぐい話もあったりするけど、とりあえずお付き合いのほどを。


まぁ、当たり前と言えば当たり前だが新聞の購読は契約による商品の定期購入なので(今はやりのサブスク・・・か?)当然顧客はお店に支払うべき代金が発生する。

今は新聞代も値上げしているので昔とは違うが、おおよそひと月の購読料金は朝刊と夕刊セットで当時4,000円程度だった。

これを毎月支払うのだから、年間では48,000円程度となる。意外と家計にとっては大きいのだ。

家計の話はともかく、我々従業員(ちなみに、新聞販売の営業や集金、配達等で生計を立てている人を『専業』と呼ぶ)は売掛金に該当するこのお金を回収しなくては、お店の収益にはならないのだ。(機会があれば収益の話も書きます)


なので、従業員のある意味一番大事な仕事ともいえる。

私のいた店ではベテランのパートさんが営業と集金を両方行い(と言うより、集金ついでに営業、またはその逆の方が効率的なのでこの二つを別の人がやっているパターンはほぼない)、月々の売り上げを回収するわけだ。


だが、顧客の中には支払い能力に乏しい、支払う気が無い、と言うありえない理由や、顧客の生活パターンが掴めない、不定期すぎるという理由で回収ができていない顧客が存在するという事もある。

通常のBtoB(Business to Business)の企業間取引であれば、悪質な倒産や詐欺でもなければ普通はありえないことなのだが、いわゆるBtoC(Business to Consumer)の企業と個人取引であれば、こういった状況が発生することがあるのだ。


その場合どうするか?

普通の対応としては、粘り強く顧客訪問を繰り返し手練手管で回収していくのだが、ベテランの従業員ですらこの回収率を100%とすることは容易ではない。

だが、ほぼすべてのパートさんは毎月回収率100%だったのだ。少なくとも私のいた店では。

このからくりは、もう薄々お気づきだろうがいわゆる『自爆』である。


とりあえず、回収できない顧客の代金は自ら立て替え、後日時間をかけて回収すると言う方法を取っているのだ。

なぜそこまでして回収率を100%にしたがるのか?それは集金業務に関しては、回収率によってパートさんは手当てがつくというのが大きい。回収率100%であれば、通常の賃金とは別に回収手当としていくばくかの手当が出る。

それを目当てに回収不能な顧客の分も自ら立て替えとりあえず回収率を100%にしておくのだ。

現在であればこんな回収はコンプラ違反どころではない問題だろうが、当時は何の問題もなく行われていた。

そして、回収できない売掛金を翌月に先延ばしし、翌月に回収を行いそれを前の月の回収に充ててまた回収できない顧客は自爆をする・・・と言ういわば自転車操業のような状況も毎月の光景でした。

本来なら、そんな顧客は切ればいいんですけどね。そうもいかない理由もあるわけで・・・


ただ、『そんな風に毎月の回収が出来ないといつか破綻するのでは?』と言う疑問もあるだろうが、それは別に書く機会を設けたいと思います。

想像以上にエグい話でもあるので。


とまぁ、グダグダ書きましたが私たち社員の立場としての集金の仕事は、通常の自分のエリアの集金と『回収不能の顧客を何としても取り立てる』であったわけで。

社員が自分のエリアとして担当する営業区域は、当然パートさんたちが前任者として受け持っていたのですが、大半は普通の顧客です。ただ、やはりと言うべきか回収不能の不良債権と化している顧客もいるわけで。

それを何としても回収してこいと言うのが私たち社員の仕事。ただ、これが一筋縄ではいかない。

ベテランのパートさんたちがずっと塩漬けにしてきたような不良債権も数多くあり、正直社会に出て経験の浅い若造では手に余るような顧客もちらほら。


・・・とは言え、当時は右も左もわからぬ研修生。『了解』と返事だけは元気よく、未回収者のリストと未回収の請求書の束を基に元気よく顧客回りを始める。


数日後、撃沈。当然である。ベテランでも回収できない集金を簡単に100%にできるわけがない。何度訪問してもいない客。居留守を使って出てこない客。日本語が通じない客。頭の痛い顧客に悩まされながら、少しずつ回収できる顧客から回収して行った。

回収できる顧客と言うのは、あくまで従業員の訪問パターンが悪いだけであって、別に金払いが悪いわけではない、普通のサラリーマンであったりする。実際そういう顧客は未回収金も少なく、直ぐに回収率を100%にすることができた。

問題なのは、支払う気が無い客や、日本語の通じない客などである。日本語が通じない・・・と言うより、支払いの時だけ母国語に戻る人がいる・・・と言った方がよいだろうか(笑)

正直、どうやって回収するかに悩む顧客ばかりである。

だが、私は全ての顧客から100%回収することに成功した。

その話は次回にさせてもらいます。では。


とっぴんぱらりのぷう

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