第一章の⑧:引継ぎ中のあれこれ

正直、退職勧奨を受けて引継ぎが決まってからの方が人間らしい生き方をしていたのではないかとふと思った。

それまでは、営業として売り上げに追い回され、取引先の要望に対応し、新型コロナの影響で出張がしづらい状況で現場に赴けないのを歯がゆく思い、かと言って堂々とさぼるのもはばかられるからほぼ引きこもりのような状態で在宅ワークをこなし、何とはなしに心に余裕もなく焦りがあり、余計に思うような仕事ができていなかったし、余裕をもって周囲を見渡すことができなくなっていたと思う。

引継ぎの日程が決まって約2週間で後任二人に引き継ぎを行うという結構ハードなスケジュールをこなしていたわけだが、むしろこういう状況になってからの方が気力は漲っていたし、最後の後始末と言うことでしっかりやらねばとむしろ気分も上向いていた。

それと共に思ったのは、「せっかくの出張なのにコンビニ飯やチェーンの店で飯を食うことが非常に多かった」と言うことだ。

寧ろ、心にゆとりができたのか引継ぎの出張中(後任との同行訪問でもあるのですべて自分で決めているわけではなかったが)に食べた食事はむしろ今まで手を出さなかった食事にも手を出していた(笑)。

例えばいつもサービスエリアで食事をするときはフードコートのカレーが多かったが、せっかくだからと名物料理を食べたり、家族へのお土産もじっくり選んだり。

そして何より、景色を楽しむ余裕があった。

今まではアポイントに合わせて車で移動、移動、移動の連続でくたびれ果て、ちょっと風光明媚な所に寄ってから宿にチェックインしようか・・・などと言うよりも、「休みたい」で一日の予定していた仕事が終わったら即座に宿に入っていたような有様。食事も待ち時間がもったいないから軽食を買い込んで宿で食べて、風呂に入って寝る・・・精々が宿に併設している大浴場を楽しみにしていたくらいか。

思ったほど心と生活に余裕を持たせていなかった。

大好きなPokémonGOもほとんどやらず(笑)、宿でグダグダしているのが一番楽だった。

正直、出張を楽しめなくなっていたとは思う。20代の頃のような体力がないとはいえ、かなり疲れていたんだろうなぁ・・・と。

寧ろ全てが終わることが決まってからは、帰宅のための移動も高速道路よりも一般道をなるべく使ってドライブを楽しんだり、時間があれば道中であれこれ見聞きをしたりと、ようやく楽しめる状態だった。

今にして思えば、もっと心に余裕を持っていれば仕事ももう少し要領よく、楽しんでできたのかなぁとは思っている。今更ではあるが。

何にせよ、最後の出張で後任の人が知っているおいしい店に行ったり、飲みに行ったりと、昨今のコロナ世情ではあるがそこそこ楽しませてもらった。

それと、空が綺麗だ・・・等とドラマのようなことを本気で感じてしまった。まったく空を見上げることもなく仕事をしていた自分に愕然としていた。

元々写真が趣味だが、景色を撮影する気力もわかず、ただ運転する風景の一部として流れるままに景色を見ずに過ごしてきていたのだなとしみじみ感じてしまった。

もし今、同じように心に余裕がなくなっている人。多分コロナの影響もあってものすごく多いと思う。

しんどいしんどいと思いながら仕事をしている人、多いと思う。

だから、たぶんそういう人は私と同じように心に余裕を持てと言われても余裕の持ち方を忘れ切って日々の生活と仕事に埋没していると思う。

だから敢えて言います。出張族なら程々に仕事してください。

晩飯はうまいものを食ってください。サービスエリアでの飯は、いつもと違うものにチャレンジしてみてください。

写真とかめんどくさいなら、どこかの道端に車を止めて缶コーヒーでも飲みながら景色をぼんやり眺めてみてください。

壊れかけてくると、その自覚を持てません。自分ではわからなくなります。本当に折れると復活が大変です。だからまぁ、私のように退職が決まってから気づいた人の意見を参考にちょっとぼんやりしてみてください。でも、たぶん難しいと思います。私もここで書いているようなアドバイス、しんどい時には目を背けて「けっ」と思ってましたから。メンタルのしんどさは意外とつらいものです・・・

さて、仕事のことをあれこれ書いたけどとりあえず明日の献立はどうしよう・・・。

部屋の掃除も、ゴミ出しもしなくては・・・という事で第二章に突入。

専業主夫と化したおっさんの家事やらなんやら日常生活とか書いていきます。

ではでは。

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