第一章の⑦:引継ぎ中に四十九日があった

そう言えば祖母の四十九日が四月中旬にあった。

そもそも、3月の頭に祖母が逝去し、その通夜と葬式に行ってきたのだが、その場で四十九日の日程を確認して行くことにしていた。

うすらぼんやり予想はしていたとはいえ、まさか本当に辞めることになるとは思っていなかった時期でもあったので、正直四十九日に行くか迷っていた。

仕事柄春から先は忙しくなることもあり、また四十九日の場で私の両親の墓についても打ち合わせる予定であったこともあり、四十九日は私の両親と叔父夫婦、後は親戚筋のみでやるつもりでいた両親に、「仕事が忙しくなると今後のことも打ち合わせられない」と説得し、四十九日への参加を決定したのだが・・・

まさか四十九日当日には既に会社を辞めることが決まっていて、引継ぎ業務の真っ最中であった・・・などとは口が裂けても言えず。

正直、つい一か月前はまさかここまで事態が激変しているとは思わず、人生の急転直下、激動の1か月・・・と相成ったわけだが、正直「仕事は大丈夫か?」と言う両親の問いかけには大丈夫としか返せず、心苦しいものがあった。

私の両親が異様な心配性で、退職勧奨を食らって退職するなどと言えば間違いなく心配のあまりの鬼電が毎日来ることはわかりきっていたから(笑)

寧ろ私は妻と子供に申し訳ない、という思いの方が強い。何より人生を共にしている家族だし、両親は既にリタイアして自分たちの生活を送っている。

どちらかと言えば、両親に対しての心苦しさは「何とか生きていくから心配するな、大丈夫だ・・・」と言う申し訳ない思いの表れであったと思う。

これは次の仕事が決まるまでは決して両親に話せないことだろうなぁ・・・とぼんやり思う。

両親への想いはともかく、妻と子供は妻が正社員であることもあり、家計や生活へのダメージはソフトランディングに近い状況だが、むしろ焦りは家族に対して大きい。

このまま再就職ができなかったらどうしよう?このまま社会人としてドロップアウトしてしまったらどうしよう。家族をきちんと養っていけるか?子供をきちんと大学まで出せるか?等、いろいろな悩みが焦りを生む。

妻は「焦ってブラックに捕まったら目も当てられないから、ゆっくり探せば?」とは言うが、それもいつまでもだらだら探していることもできない。

給与の低下や待遇の低下は覚悟のうえで、何とか仕事にありつく方法を探さなくてはならない・・・

考えれば考えるほど、焦りは大きいがまぁ少し落ち着いて仕事を探していこうと思う。

ただ、休暇扱いの在籍が終了し本格的に退職となった後、正直履歴書上あまりブランクを空けたくない。40代半ばであまりにもブランクが空けば、恐らく再就職のハードルは高くなり、選べる仕事は幅が狭くなっていくだろうと悲観的ではあるがそれが現実であることも分かっている。

暗い話かもしれないが、現実は残酷であることを認識してしっかりと現実に向き合って、妥協できるところは妥協して、家族をしっかり養っていけるだけの稼ぎがもらえる仕事を探そうと思う。

出世や名誉と言ったプライドはもう捨て去ってかけらも残っていない。元々好きな営業で働いていければ御の字と思っているので、売ってて楽しい商材、働いていて楽しい仕事、稼ぎや待遇は妥協できるところは妥協する。

自分自身が既に転職市場での価値は目減りしていることをしっかり認識して仕事を探していこうと思う。

つらい現実だが、私と同じように40代半ばで仕事を辞めて転職しようと思っている方は、夢を見るよりしっかり現実を認識して人生を戦っていくように考えた方がよいと思う・・・

なんか偉そうだが、偉くもなんともない愚痴だな。

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