第一章の④:引継ぎが決まるまでと決まってから
正直、退職勧奨を受けてから一番つらかったのが引き継ぎ開始がいつから始まるのか告げられなかったことと、最終出社日がいつでありどうすればよいのかということが4月上旬まで決まっていなかったことだ。
3月下旬の面談で退職勧奨を受けて、「辞めてください」と言われたはいいが、引き継ぎ開始やグループ内での発表も行われないとなると、正直通常業務を平常運転でしなくてはならないのはただの苦痛だったし、茶番劇のようで気持ちは白けて、やる気なんてものは絞り出してもカスほどしか出てこなかった。
ようやく4月上旬にの終盤ごろに後任と本部長・直属の上司含めてWeb会議があり、その場で私の退職発表がなされた。正直2週間以上かかっている。
気持ち的にも苦痛のほうが大きかったのは間違いない。
それでも、ようやく後任が決まって打ち合わせに入ったが、予想通り私の担当していた先はもともと担当していた前任者二人で分けて担当することとなった。
これだけでも、前任者がいて引継ぎしやすい私に退職勧奨の白羽の矢が立ったことがよくわかる。
そこからは怒涛だった。
気持ちの乗らない中、気力を振り絞ってアポイントを取り担当交代と退職の旨を告げ、後任と同行してあいさつに行きたい旨告げる。
先方は当然ながら非常に驚いていたが、特に私としては引継ぎを終わらせてさっさと転職活動のための休暇に入りたいのだから必死だ。
後任が二人おり、それぞれと歩調を合わせて担当引継ぎを済ませるために、まずは一人目に引き継ぐ担当先へのあいさつ回り、翌週には二人目に引き継ぐ担当先へのあいさつ回りとアポイントを2週間分埋めていった。
これで大体4月下旬までのアポイントが埋まり、いよいよあいさつ回りとなったわけだが、事情を説明するのも正直疲労した。
何せ、たった一年ちょっとしか担当していないのにいきなり退職して後任に引き継ぐというのだ。対外的には詳しいことは説明できない部分もあり、気持ちにわだかまりを残しながら引継ぎを行っていた。
その中でも、LINEのIDや連絡先を交換しようと言ってくれた取引先も多く、これはたった一年ではあったが、売り上げを上げるより大きな収穫であったと思っている。
実際、引継ぎと残務整理が終わったのち連絡先を交換できた人も多く、人とのつながりを大事にする私としては一番良かったと考えている。
あいさつ回りをした先では、最後に送別会のように飲もうと言ってくれた方もおり、昨今のご時世ではあるが、感染対策をしっかりしてささやかに飲みに行ってくれた方もいた。ありがたい、と感じている。
ただ、コロナ下での蔓延防止措置が発令されている中での訪問を遠慮願いたいと言う取引先も残念ながらあったため、そういったところは電話でのみのあいさつとなった。
いずれ機会があれば再会を期したいものだ・・・と思う。
約2週間にわたる引継ぎの中で、後任の方々と食事もしたが、やはり状況が状況だけに将来に対する不安もあるようだ。
はっきり言ってしまえば、クビになった私は気楽なものだ。次に向かって進むだけでよいのだから。
だが、残る人は違う。
会社の将来に対する不安から、自分の人生を守るために働き続けながらも別の道も模索しなくてはならない状況。好むと好まざるとにかかわらずマルチタスクを強要される状況、そして新型コロナによる社会情勢の不安定さなど、むしろ残留する人のほうが今後のストレスは非常に大きいのではないかと思う。
まぁ、正直私のように次に進むしかないという結論が出ている人間にとっては、残る人のことまでは考えていられない・・・残留する人も頑張ってくれとしか言えないのではあるが・・・
とりあえず、次回へ・・・
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