短期的な関係

「じゃあ皆でくれば良かったのに……まぁ、君は嫌がる、もとい無理だよね」


そう笑顔で話すのが松山だ。


「そもそもその思考に至らなかったんだよなぁ」


「つまり無理ってことだね」


「まぁ、そうなるな」


松山はぼーっと木々を見ながら話す。


「私さぁ、こうやってこの庭を見てると落ち着くんだよね。甘南備もこの庭好きなの?」


俺は頭を掻きながら

「いやなぁ、別にそうでもなくて……思い出したんだよね。ここら辺に庭園があったなぁって」


松山は苦笑いしながら

「甘南備それもてないよー」


「まじで!?」


「そうだよ。そこで好きって言えばいいのに」


「まぁ、好きはそうだけど。好きだからそこに行くとか、好きだからどうって訳ではないと思うんだよなぁ」


「そこだよ。本当にもてないね甘南備は」


「そうかぁ。もてないかぁ」


「なんで嬉しそうなのよ」


俺はにやにやしながら景色を眺めていた。

もてるもてないとか、それは高校生すぎるだろう。


 結局、伊藤と望月とちょっぴり仲良くなった俺は社会見学という壁を簡単にとは言わないまでもそこまで苦労することなく乗り越えることができた。

事前準備というものは大事で、お陰様でたまにある沈黙の時間も割合気まずさもなく過ごすこともできた。

楽しいとまではいかなかったがストレスフリーの社会見学など何年ぶりであっただろうか。


素晴らしいことである。そう思う。

そして思ったより、短期的に円滑な人間関係をつくることは簡単だということだ。

勿論長続きするとは言わないが、まぁ、そこまで恐れることではない。

あと、そこまでいいことではない。


「ねぇ、甘南備君ご飯食べよう」

振り返ると望月がいた。

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