瞑想
「それで、島津江さんいつこれそう?」
と藺緒が夕食の時に振って来た。
「俺が話を進めてるとでも?」
「うん」
わお。さすがは藺緒。なんという思考回路だ。俺には真似できないね。
「とにかく、何も進展ないから」
「……させろ」
「は?」
「進展させろ?」
「いやここで迷うなよ」
「いやぁ、私の控え目なところが出ちゃったね」
「出ちゃったか」
まぁ、控え目な奴は控え目なんて自分で言わないけどな。
「出るにしろ何にしろ、進展させる気もなければそもそも最近喋ってないし」
すると藺緒は
「馬鹿なの?お兄ちゃんがあんな綺麗な人とお話出来る機会なんてもう一生ないんだよ?なんで話さないの」
「いや、一生って……。でも、俺にはお前らがいるからな。美人には一生困らないぜ」
藺緒は俺を強く突き飛ばして、(普通は軽くするところだが)
「もう、やだなぁ。お兄ちゃんって本当にきもいね」
「まぁ、そうだよな。俺って”本物”だよな」
俺は明後日の方を向いて、そう呟く。明後日、、、ってなんかあったっけ?
「なんでそんなにかっこよく言えるのかな。恥だよ?自覚ないの?」
俺はにやりと笑うと、
「ポジティブシンキングは自分を幸せにするんだぜ。不用意なネガティブシンキングはやめるんだな」
「別にネガティブシンキングじゃなくてただの事実だよ。ネガティブに考えなくても、きもいのに変わりないよ」
「いや、それも一種の愛情――」
「違うから」
最後まで言わせろよ。
「おう、、辛辣ぅ」
「それもこれもお兄ちゃんが悪いんだよ」
「いや、少なくとも、島津江と喋ってないことに関しては俺は何も悪くない」
「いや、それはお兄ちゃんが意図的に島津江さんを避けたからでしょ」
俺は手を左右に行ったり来たりさせると、
「そんなことない。今週は望月の相手で忙しかったんだよ。転校してきたばっかだからな。これも部活だよ」
なんだか最近小竹島クラスの面倒事を押し付けられる部活になりつつある気もするが、まぁ、いいだろう?今度小竹島に言ってやろうか。金くれって。
ご飯くらい奢ってくれないかな。因みに自分は外食はあまり好きではない派である。
他人がいくらかいる空間で食事とかありえねぇよ。
「部活ねぇ。まぁ、お兄ちゃんが人と触れ合って生きていっているのは良いことだと思うけれど。ていうか部活でやるなら島津江さんとか当坂さんとかと一緒に活動するんじゃないの?」
なるほど、納得のいく質問である。
「いや、なんか今回は俺が担当で基本俺一人で回してるんだよ。結局は社会見学にもつながるから、俺が望月とそれなりの仲にならなければって話だからな。あいつらがいたら、望月の気持ちがあっちに引っ張られて俺が仲良くなれねーよ」
藺緒は納得して
「そうだね。あの二人の魅力には勝てないよね」
「納得しちゃうんだ……」
ここは是非、異議を唱えて欲しかったものである。
「はいはい、二人とも変な話しないで。二人はただ私を愛してくれたらいいんだよ~」
「もう、愛してるよ」
「きゃー、お兄ちゃんかっこわるーい」
かっこわるいのか。お前が愛せと言ったんだろうが。
「愛してる」
と藺緒。
「きゃー、藺緒ちゃんかーわいい」
きゃっきゃする柬薇。しかしあれだな。食卓で愛してるが飛び交う家族。
ギャグでもきもいな。実は柬薇はその状況に対してきもと言ったのかも。
お前が振ったんだけどな。さて、俺たちの(特に俺の)きもさはさておき、
「いや、私達はきもくないよ。(特に俺の)じゃなくて、俺のきもさだよ。”俺の”」
いいだろ。(特に俺の)で。何だかんだ言って、俺がきもいということはイコール俺の家族もきもいということでいいのではないだろうか。
「いいのはお兄ちゃんだけだよ」
藺緒。
「はぁ、お前も実は相当きもかったりするんだぞ」
「嘘!」
「……う~ん、わからん」
「わからんのかよ」
さっきから発言が瞑想、迷走しているな。発言が瞑想て。
いや、俺は瞑想したほうがいいのかもな。
因みに、瞑想するくらいなら寝たほうがましだと思っているので、しないことはしないのだが。ショートスリーパーなんかは時間が余るから、ちょっとは瞑想した方がいいのだろうか。
効果を知らないのに考えても仕方がないけれど。
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