適当
その日、俺が家にうっきうきで帰ったのは言うまでもない。
え?その後の勉強会はどうしたって?まぁ、また暇があったら語ろう。
望月とのプライベートは秘密にしておく。
「ただいま」
「おかえり。遅かったな。まずは言い訳を聞こうか」
と藺緒。
あれ?なんか俺怒られる空気になってない?なんかやったっけ。
「いや、今日は急に望月に誘われて……」
「ほぉ、いいことじゃあないですか。妹の勉強を放っておいて自分はお家デートですか。そうですかそうですか」
「いや、デートではねぇよ」
デートって、、、こいつは俺と望月の関係をなんだと思ってるんだ?
「で?何故電話の一本も寄越さない」
「いや、本当はもっと早く予定だったんだがな。数学の分からないところを聞いていたら知らない間に時間が……ね?」
藺緒は呆れて
「時計くらい見ろよ……望月君は良かったの?そんなに長く居座っても」
「むしろ帰るなと言われたぞ。あと一歩で泊まるところだったくらいだ」
「それはやり過ぎでしょ〜」
島津江に同じようなこと言ってたんだけどな、こいつ。
「まぁ、実際グイグイ来てたけれども。俺も若干引いていたけれども」
「お兄ちゃんが押されるくらい?」
「いや、そんなことはないけれど。黙ってたらやばかったな」
藺緒はう~んと考えて、
「お兄ちゃんの何処がいいかなぁ?」
「全てだよ」
「お兄ちゃんって、家ではナルシストだよね」
「いや、何処でもナルシストだよ」
キラーん。
「ださいねぇ。”ん”がひらがなな所が駄目だね。それにお兄ちゃん外では超卑屈でしょ」
「意外とけなされたらナルシってるよ~」
藺緒は怪訝な顔をして
「あれだね。気持ち悪いね。ほんと死ね」
唐突だな。とにかく話に飽きてきたようなので俺はさっさとリビングに向かうことにした。
「おかえり。お兄ちゃん」
そう言ってリビングで迎えてくれたのは柬薇である。
「ただいま。いや~、悪かったなぁ」
「ん?何が?」
圧を感じる。
「いや、何も言わず望月の家に行ったことだけど」
「うんそうだね。なんで携帯持たせてるのか分かってる?」
いや、持たせてるは親であってお前ではないがな。
「ゲームするため?」
「写真をとるためでしょ!」
「いや、確かに最近は凄いけれども」
もはやカメラだもんな。携帯。
はぁ、ガラケーも使えなくなるしなぁ。残念だぜ。携帯電話で電話してる人どれくらいいるんだろうな。最近はソーシャルネットワークサービスだっけ?が主流だしな。
SNSって奴だ。因みに俺は両方使ってない。まぁ、メールくらいだな。あのラグがいいんだよ。いうほどないけど。まぁ、いちいち返信するのが面倒なのである。
メールだったら結構放置出来るしな。え?それはお前だけだって?
まぁ、良いんだよ。気持ちの問題。
「とにかく何かあったら逐一連絡してね。こっちだってお兄ちゃんの行動把握するの大変なんだから」
「もう、俺も高校生なんだが」
「”まだ”高校生だよ」
「中学生に言われたくねぇな。いや、確かにまだ高校生だが」
俺は肯定しつつも、しっかりと遺憾の意を示すために、いかにも不満。
っといった顔をした。妹は俺の意を汲んでくれなかったようで、
「何その顔。変なの」
って笑っていた。
別に良いんだけどね。
「ところで、お兄ちゃん最近忙しそうだけど、本当にどうしたの?藺緒ちゃんが寂しさで泣いてるよ」
「まじで?」
「まじ」
柬薇が真顔で言うので本当にそうなのか?と迷ってしまったが、あとで藺緒の機嫌を取ればいいだろう。
「いや~、藺緒ちゃんは寂しがりやだからね~。私だけじゃ駄目なんだよ。ちゃんと構ってあげてね」
と柬薇は言ってウインクをする。
器用だな本当。
「わかったよ。因みにお前は寂しくないの?」
「え?藺緒ちゃんがいたら十分だよ。お兄ちゃんは別にいなくてもいいよ。ていうか、藺緒ちゃんが寂しがってるからいいけど、本当のことを言うと、お兄ちゃんは私達二人の時間を邪魔しないで欲しいよね」
ぐさぁっ!自分のハートが刺される音がした。ような気がした。
「効いたわ~。凄く効いたぁ」
「効いた?じゃああらためてね」
「つまりもっと遅く帰ってこいと?」
「それじゃあ藺緒ちゃんが悲しんじゃう。それに私だって早く帰ってくれるとうれしんだよ」
「どっちなんだよ」
どっちなんだよ。柬薇は適当に発言をするふしがあるので、気にしないのが正解だろう。
結局、会話なんて適当なのである。
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