連絡先トレード

 「終わりました」


そういって先生にプリントを提出して、その勢いで職員室を出て、部室に向かう。

背中で先生が

「ラブラブだなぁ」と茶化してきた。

いや、確かに距離は近いけれど。望月のせいだからな。う~ん、居心地が悪い。


「そういやなんで部室に行くの?」

もう耳元だろってところで聞いてくる望月俺は顔を逸らしてついでに少々力を込めて望月を引き離しながら

「部活休むって言いに行かないと。決まりだから」


「携帯で連絡したら?」

「あの二人の連絡先を持ってるとでも?」


望月はあっと言って

「ごめん。気が回ってなかったよ」

「いや、そこまで気を使わなくても……」


そんな感じでペチャクチャ喋りながら、俺は望月を引きはがしながら、とことことすたすたと歩いていく。部室棟に差し掛かると、望月が


「やっぱりここ静かだよね」

「ああ、そうだな。俺は静かなのは大好きだ。本当人がいないっていうのは最高だぜ」

「そう?僕は甘南備君と一緒じゃなきゃいやだなぁ。一人は寂しいよ」


こいつは俺のことが好きなのか?凄く媚びた発言をしてくる。もはやこえーよ。

静かな空間っていうのは靴の音だけが響いてなんだが風流だなぁと思う。

因みに風流の使いかたをよくわかっていない。あってるかな?


「一人は最高だぞ~。色々なことについてじっくり考えることが出来るし、逆に何も考えなくなくてもいいし。いいしいいし。つまりはさ、一人で居る方が自由で楽しい、ってことだな」

ペラペラと一人で居ることの利点もとい、必死の自己肯定をしている俺の話を真剣に聞いてくれる望月。いい奴だなぁ。


「そういえば、部活を休むのって連絡いるんだ。中学校ならまだしも、高校なんて割と自由なものだと思っていたよ。それにボランティア部、大して活動してないんでしょ?」

「あぁ、そうなんだけれど。そもそも部活を休む時に休むって言うのは普通だろ。活動をやるかはともかく、集まりはするんだ。断りは入れてなんぼだ」


「そうなんだ。僕は部活に入ったことがないからわからないな。連絡先知らないって携帯持ってないの?」


「いや、持ってるけど?」

「へぇ、、、」


望月は少し黙り込んで


「あのさ、良かったらなんだけど、連絡先交換しない?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る