第28話 ユズ、ユウト。ユウトとユリ
最低最悪なまま初デートは幕を閉じた。まぁ初デートも同伴者付きだったんだけど。
「37.6℃…ユズ様完全に熱出ましたね…」
「レイとユウトに会いにいく…」
「絶対ダメです」
「行く…」
「起き上がらないで。もう寝てください」
「明日熱下がったら行っていい?」
「血…抜かれたんですから安静にして下さい」
「でもレイに言わないと…ユウト…」
「お2人には連絡しますから」
「…ぎもぢわるい」
「え?ちょっと走らないで下さい!」
後ろから声が聞こえたけど、無視してトイレに駆け込む。
「オ゛ェェェ」
最悪だ。今日食べた物も吐いちゃった。どろどろラーメンにフライドチキンだからかな。
「大丈夫ですか?松井先生お呼びしましょうか?」
「…大丈夫です。油っこいの食べすぎただけ」
トイレの中までは流石に誰も入ってこないからホッとする。トイレの便器の前で座ってる人のセリフじゃ無いけど。
「薬に…頼りすぎるのは怖いからねぇ」
「23時なのにすみま…ヴッ」
またトイレに駆け込む。もう嫌だ。
「大丈夫?全部吐いたかい?」
「…汚いから触らない方がいいです」
「ユズちゃんは汚く無いから大丈夫。やっぱりちょっと怖いから点滴しておこうか…」
気持ち悪い。また点滴するの?頭痛いなぁ。眠い。
私はまた点滴を打ってもらったみたいで起きたら鳥の鳴き声が聞こえていた。
「朝…昼…?…10時…」
昨日全部吐いたはずなのにまだ少し気持ち悪い。ずっと車酔いしてるみたいな吐けない気持ち悪さ。
起きたくないけど起きないと。流石に熱は下がっているみたいだし、レイとユウトに会いに行きたい。
扉を開けると佐藤さんが相変わらず泣き腫らした顔で立っていた。
「起きました?」
「昨日…誤魔化せました?」
「話は後で。食べれるものありますか?」
「…りんご」
「わかりました。ベッド戻って下さい」
「…はい」
あっけなくベッドに戻る。佐藤さん昨日一晩中泣いてたのかな。今日は彩都に行く予定だったのに。佐藤さんはまるで用意してたかのようなスピードであっという間にリンゴを持ってきた。
「ありがとうございます…」
「いえ」
正直リンゴあんまり食べたくない。言ったらまた泣いちゃうから言わないけど…。
「…食べないんですか?」
「それより…昨日上手く誤魔化せました?」
「…ギリギリ誤魔化せました」
「ギリギリ?」
「…ギリギリです」
佐藤さん私よりしんどそう。昨日ちゃんと寝たのかな?絶対寝ていないよね。
「佐藤さん寝てないですよね?寝てきて下さい」
「…食べて下さい」
「食べたら寝てきてくださいよ?」
「…もうすぐユウト様来ますから。来たら寝ます」
「ユウトが⁈1人で⁈なんで⁈」
「レイ様まだ戸間出入り禁止ですから、ユウト様に頼まれたみたいです」
「熱とか吐いた事言ってませんよね?」
「…まだ言ってないです」
「シャワー浴びて着替えます。リンゴ後でちゃんと食べるから置いといて下さい」
「食べるのが先です」
「佐藤さん…」
「食べるのが先です。薬も。飲んでからです」
「…はい」
佐藤さんの圧力に負けてリンゴはなんとか半分食べて薬もちゃんと飲んだ。
「では…失礼します」
佐藤さん思い詰めた表情で私が残したリンゴを持って行った。真倉と何を話したのかは結局教えてもらっていない。私の会話は報告するんだから、私にもみんな報告してほしいよ。
「気持ち悪い…」
食べたリンゴがもう上がってきてる気がする。薬早く仕事してくれないかな。急いでシャワーを浴びて着替えて、顔色がよく見えるように少しだけメイクをする。頼むから誰もチクりませんように!
「ユズ様、ユウト様がいらっしゃいました」
「はーい。今行きまーす」
ユウトと会うのは修学旅行で倒れた後以来だ。
「ユウト!久しぶり!」
「おぉユズ!もう体調は大丈夫か?」
「うん!」
良かった。まだ誰もチクってないみたい。にしてもユウトが戸間に1人で来るのなんて初めてかも。
「手に持ってるの何?お土産?」
「あぁこれミルプラージュのザッハトルテ。お前好きだろ?今食う?」
「…今はいい。それよりなんで来たの?なんかあった?レイの話?もう来たの?」
「は?何言ってんだお前、普通にレイに頼まれて来ただけだよ」
「レイに?なんで?」
「お前…またなんか隠してんな。とっとと吐け。ケーキ俺の分もやるから」
「…要らない」
「お前が吐かなくてもここにいる奴ら1人ずつ脅せば済む話なんだよ。なぁ?」
ユウトが周りに目線をやった瞬間、みんなが一斉に私とユウトから目を逸らす。家の空気が一瞬で張り詰めるのが分かる。
「…分かったよ。部屋で話そ。皆怯えてるから」
「最初からそうすりゃいいんだよ」
2人で部屋に行く。なんかユウトと私だけって新鮮だな。
「失礼します…紅茶とケーキお持ちしました…」
さっきユウトが脅したせいで、お手伝いさんの声震えてるじゃん。後で謝らないと。
「…で、何隠してんだよ?早く吐け」
「ユウトさぁ、久々に会ったんだからそんな怒った顔しないでよ。ユリの最近の話してあげるから機嫌なおして。ねっ?」
「良いから。吐け」
ユリの話でも誤魔化せないかぁ。なんか最近ユウトも勘が鋭くなってきた気がする。
「…レイが政府の人達に見張られていたの」
「は?なんで?意味わかんねぇんだけど。お前、ちゃんと1から説明しろ」
「…昨日政府の人達が来て、レイの彼女を見張ってるって言われた」
「は?彼女?てか昨日?政府のクソ共が来たのか?また抜きにきたのか?お前ぶっ倒れさせといて?」
「ユウト怒んないでよ。顔怖い」
「…てかお前ケーキ食べねぇの?いつもなら2個目いってんだろ」
ヤバい。あんま食べたく無いんだけど仕方ない。
「さっき朝ごはん食べたばっかりでお腹いっぱいなだけ。今から食べるよ」
「…吐いたのか?」
ユウト本当鋭くなってきたな。
「少しだけね。昨日ドロドロのラーメンにフライドチキンまで食べたから」
「大丈夫か?」
「うん!もう元気!念の為に食べないだけ!」
「そうか…。じゃあアイスにすりゃあ良かったな」
「いいね!アイス食べたい!」
「取りに行ってくっから待ってろ。ついでに紅茶淹れてきてやる。特別な」
「ありがと!」
ユウトがわざわざアイス取りに行くなんて珍しい。まさかコッソリ脅したりしてないよね?ちょっと不安なんだけど…。
「ハァ…疲れた」
ユウトがいなくなってやっと部屋でため息がつける。まだ真倉から返信はきていない。怒ってるかな?1回目も2回目も潰されたもんね。私なら絶対ムカついちゃう。佐藤さんはギリギリ誤魔化せたって言ってたけど実際の所は分からない。
「…遅くない?」
そしてユウトは私の不安通り30分ぐらい帰ってこなかった。迎えに行こうとしたらまだ起きていた佐藤さんに止められるし。
「お待たせー」
「ユウト遅いよ!絶対脅したでしょ⁈」
「そんな怒んなって。何が良いか聞くの忘れてたから買いに行って貰ってたんだよ。ほら季節のアイスアソートセット」
「ユウトの馬鹿!最低!」
「なんとでも言え」
「馬鹿!阿呆!マヌケ!」
「分かったから。ホラ、好きなん選べ。12種類あるけど一口ずつ食うか?」
「最低…」
「何も泣くことないだろ。ほら機嫌なおせよ。ちゃんと紅茶は俺が淹れてきてやったから」
そうゆう問題じゃないんだよ!ユウトのバカ!佐藤さんまでグルになってさ。みんな酷いよ。
「馬鹿…ユウトの馬鹿…」
「あぁもー悪かったよ!俺が悪かったから泣くなって!別にお前泣かせたかったんじゃねぇよ!」
「ユウトが私に酷いことして泣かせたってユリとレイに言いつけてやる…」
「レイはまだしもユリだけは勘弁してくれよ!俺が泣いちゃうだろ⁈」
ユウトが本当に泣きそうな顔して言うから少し笑ってしまった。そういえばユリ好きな人いるって…。ユウトには言わないでおこ…。
「落ち着いたか?」
「…誰に、どこまで聞いたの?まさか泣かせたり怪我させたりしてないよね?」
「してねぇよ」
「血に誓って?」
「してねぇよ。血に誓ってしてねぇ」
「良かった…」
本当に良かった。良くはないけど良かった。レイとユウトが来る度みんな何かしら問い詰められている気がする。ストレスチェックとかちゃんとしてるよね?社会保障とかちゃんとあるよね?
「…どこまで聞いたの?」
「お前の昨晩の様子とレイの話だけだよ」
「全部じゃん…」
真倉の話も聞いてるのかな。レイはユウトにどこまで話してるんだろ。
「まぁレイには俺から話しといてやるから安心しろ。多分レイは怒らねぇから」
知ってる。レイは優しい。私が重荷を背負わせてレイを縛り付けても、レイはその事について一回も私に怒らないし不満一つ言わない。それが余計に辛くて悲しい。
「レイに見張りをつけてたなんて最低だよ…」
「まぁ最低だな」
「なんでレイが見張られなきゃいけないの…」
「まぁ…見張る必要はないな」
「ちょっと真剣な話してるんだから笑わないでよ!何にもおかしくないでしょ⁈」
「ごめん、ごめん…フッ」
レイが見張られてたって言ってるのに普通笑う?松澤さんといいレイは見張られる必要はないんだよ?確かにレイは見張りなんて蹴散らせるかもしれないけど笑い事じゃないでしょ!みんな最低!
「私のせいでレイまで…もうやだ…なんで…」
「だから泣くなって。しょうがねぇなぁ、ほらティッシュ。レイなら大丈夫だから心配すんな」
「レイ先週戸間で倒れたんだよ…私のせいで」
「はっ⁈倒れた⁈」
「水族館で私が真倉と一緒に水被っちゃったから…真倉にも多分怒って…それで…」
「はっ⁈真倉?どういう事だよ?なんでそこで真倉の名前が出てくんの?ちゃんと説明しろよ」
「…真倉と一緒に水族館行こうとしたら、レイが来てみんなで行って…レイがいない間に真倉と私が水被っちゃって…私がお風呂入ってる間にレイ真倉に多分ブチギレて…倒れるまでサガ使った」
「嘘だろ⁈俺がいない間に何がどうなってそんな事になってんだよ⁈」
「聞いてないの?」
「聞いてねぇよ!もう一回ちゃんと最初っから詳しく話せ!水族館に行く経緯から!」
「そんな怒んないで…涙止まったばっかなのに」
「あぁゴメンって!なぁ聞かせてくれ、頼むから。俺1人蚊帳の外はダリィんだわ」
「分かったよ、あのね…」
真倉が土日遊びにいこって誘ってくれた所からレイが倒れて朝居なくなっていた事まで全部話した。ユウトに根掘り葉掘り聞かれて1時間ぐらい説明し続けないといけなかった。
「…終わり。ちょっと、ニヤニヤしないでよ」
「ごめん、ごめん。俺が顔見せなかったちょっとの間にヤベェ事なってんな」
「レイ前も私のお見舞いにきた真倉追い返して…。謝るって言ったくせにまた怒るし…酷いよ…」
「真倉…見舞いも来たのか?」
「プリント届けにね。私が来た時、真倉号泣してた。でもレイもちょっと泣いてた」
「レイが⁈はっ⁈」
「2人とも何話したか全然教えてくれない…ユウトと一緒で私だって蚊帳の外なんだよ」
「…お前とりあえず飯食え。薬だいぶ効いてきただろ。ほんで松井のジジイに一回診てもらえ」
「まだ薬あるよ?だいぶ治ってきたし大丈夫」
「お前の大丈夫は信用できねぇ。おい!誰か!松井のジジイ呼んで、ユズに飯食わせろ!」
「ちょっとユウト、部屋で叫ばないで。部屋の外に行って伝えてあげて。みんな怖がるから」
「お前は優しすぎんだよ。もっと自由に勝手に生きろ。お前の優しさにみんな甘えてんだから」
そんな私の頭をワシャワシャして言われるとなんか照れるからやめて欲しい。
「失礼します…お食事の用意ができました」
「あっはーい!ほらユウト行こ!」
「お前そうやって男の腕掴むのはとりあえずやめろ。もう子どもじゃねぇんだから」
「ごめん、つい癖で。嫌だった?」
「ちげぇよ。誰にでもするなって話だよ」
「なんか…ユウト今日優しいね。普段怒鳴ってばっかの癖に」
「流石に熱あるやつ怒鳴らねぇよ」
やっぱ今日ユウト変だ。すごい優しいし、笑ってる。私の頭撫でるし。私そんなに顔色悪いかな?
「飯、無理すんな。食べれるだけにしとけ。じゃあ俺、松井のジジイ迎えにに行ってくっから」
「迎えに行くの?ユウトが?珍しい…」
「お前俺の事なんだと思ってんだよ」
「先生脅さないでよ?」
「あのジジイが脅しに屈すると思うのか?大体脅さなくてもカルテ見せてくれるよ。じゃあな」
「えっちょっ…」
私が止める暇もなくユウトは出て行った。
変だ。ユウトどうしたんだろう。怒ったり笑ったり優しくなったり。熱あるのユウトの方じゃないの?
「ご馳走様でした…」
やっと食欲が出てきて完食した。みんなユウトに喋った癖にニコニコしてるし。私一応、この家の主人なんですよ?みんな分かってます?
「うん、熱もだいぶ下がったね。吐き気も大丈夫みたいだから薬少し減らすね」
「やった!」
「うん、元気そうな声で安心した。今しんどい事とか気になる事はあるかい?」
「お手伝いさん達が…ユウトやレイが来るたびに怯えて心配です。特に佐藤さんって人が心配なんです。全然寝ていないみたいで…」
佐藤さんは最近本当に激務だ。私の我儘に付き合わせたし、政府の人にも見られた。ずっと泣かせてばっかりだし嫌な役目を押し付けた。あのままじゃいつか心が壊れてしまう。私の…せいだ。
「…ユズちゃんは熱を出すと泣き虫になるね。何を考えているか大体分かって助かるよ」
「佐藤さん…今にも壊れちゃいそうで怖いです。体格しっかりしてるのに繊細な人だから…でも私の目の届かないところにいって…もし処分されたらって考えると手離せないんです…そばにいて欲しい…いてもいなくても…どっちにしろ苦しめる…」
「…ワシはユズちゃんも今にも壊れそうで心配だ。佐藤さんはワシが診てあげる。大丈夫」
「お願いします…」
「…泣き止んだね。お薬飲もっか。じゃあワシはユウト君と交代するね」
松井先生は帰って行った。私が泣いてるのを教えてもらったのか、ユウトはしばらく上がってこなかった。
「ユズ、入っていいか?」
「いいよ」
「おー、また泣いたのか。薬は?飲んだか?」
「飲んだ」
「俺もレイから大体話聞いた」
「えっ⁈聞けたの⁈私はダメだったのに⁈」
「まぁな。真倉ってシュウだろ?お前もユリも泣きながらその名前口にするもんな」
「やっぱりレイも真倉も知ってたんだ…」
「俺も何となく分かってたけどマジなんだな」
「…黙っててごめん」
「許さねぇよ。だからちゃんと言え。お前が毎回隠すから俺らは人脅さなきゃならねぇんだよ」
「ごめん…」
「見張られてた事も話した。知ってたってよ」
「えっ?…知ってたの?」
「1ヶ月位前からだろ?俺も見たことあっから」
「…教えてくれたら良かったのに」
「レイからしたら都合よかったんだよ。真倉との仲見張れるしな」
「…真倉はそんな悪い奴じゃないよ」
「アイツも俺も基本、人信用しねぇから。特にお前らの周りうろつく奴は許さねぇ。真倉でも」
一瞬、身体が硬直した。ユウト本気で言ってる。
「ユウト怖いよ…」
「俺とレイは利害が一致してっから共同前線なんだよ。レイの敵なら俺の敵なんだわ」
「意味分かんない…ボウリングもしてたじゃん…」
「悪ぃな。お前の味方は出来ねぇ」
「どうせ…後ちょっとだよ。仲良くしてよ」
「俺らもまだまだガキってことだよ」
ユウトがそんなに笑うなんて珍しい。いっつも怒ってばっかなのに、今日はニヤニヤしてる。
「んで、話戻るけどお前レイのベッドで寝たってマジ?」
「あぁうん。眠たかったし寒かったからちょっとだけ。ベット大きかったから邪魔しないかなって」
「それでアイツ月曜異常に機嫌よかったんだな」
「えっ機嫌よかったの?罰受けたのに?」
「それに関してはブチ切れだった。俺に代わりに土日行けって頼みにきたからな」
「じゃあ来週もユウト来るの?私用事あるよ?」
「何?用事って?」
「真倉の受験の応援のお守り買いに行くの。もうすぐ期末試験だから勉強もあるし」
「…アイツ受験すんの?どこ?」
「第一希望は西海高校」
「…マジかよ。宮家の墓近くじゃねぇか。ご先祖さま達も中々やるな。アイツ戸間から出ねえと思って油断してたわ」
「ちょっと⁈真倉の邪魔は許さないからね!真倉は医者になるんだから!」
「医者?」
「そうだよ!ずっと昔から言ってたの!」
「へーみんな考える事は一緒だな。俺もレイも昔の夢は医者だった」
「今は?」
「世界征服」
「意味分かんない!」
「お前は?」
「私?」
「そうだよ。お前の夢は?」
「…夢」
私は水の宮家を継ぐ…から。存続が夢なのかな…ユリを解放する事?昔真倉に何になりたいって言ってたっけ?確か…
「探検家になって世界一周…」
「いい夢じゃねぇか。ユリは?」
「保育士か先生…子ども大好きだから」
「それは困るな、ユリが先生だったら幼稚園児でもメロメロになっちまう…泣くなよ。俺、お前とユリだけは泣かせないって決めてんだよ」
ユウトは今日異常に優しい。またニコニコしながら私の頭を撫でる。ユウトに頭撫でられたことって今まであったけ?なんか懐かしい気がする。
「眠そうだな。薬効いてきたか?」
「うん」
「ゆっくり休め、明日も俺いるから。もし夜中起きたら起こせ。んでユリの話聞かせろ。じゃあな」
「うん」
泣いたからか薬が効いたからか朝までぐっすりで、日曜日は超元気になった。ユウトが買ってきてくれたザッハトルテは限定のマロンペーストが入っていて最高に美味しかった。
「ユウト様!ユズ様見てきたら寝てたっすよ!いやぁ泣き疲れてたみたいっすね!」
俺、松澤嫌いなんだけど今日ばっかりは笑いが止まんねぇから怒れねぇ。
「松澤テメェ次から俺にも教えろよな」
「いやぁまさか知らなかったとは!楽しい展開なってきたっすねぇ!」
「俺はレイの味方だから。お前は?」
「ユズ様が望まれる方っすね!」
「そうか…」
「怒らないんすか?」
俺はいつだってユズの味方でいたかったけど、今回いれねぇもんな。
「…ユズの方が正しいだろ。本来ならアイツに選択肢あんだから」
「ユズ様がレイ様に重荷を背負わせてるとか言い出した時は吹き出しちゃったすよ!」
「俺も。今も笑いがとまんねぇ」
アイツ真剣な顔して言うからマジで笑い堪えんの大変だった。
「レイ様監視気付かれてたんすか?」
「おん。俺も見たし何となくは気づいてた。ただ、まさか彼女を見張ってたとは…フッ」
「ユズ様レイ様の見張りをその場で解いてもらったらしいっす。どっちにしろ関係ないのに」
「レイからしたら政府にアピールするチャンスだったのにな」
俺らは…力がありすぎる。政府からしたら真倉みたいなやつの方が都合はいい。非力だからな。
「…ベッドに入ったってマジだよな?」
「マジっすよ!夜中様子見に行ったらユズ様レイ様に抱きつかれて寝てたんすよ!レイ様夜中3時ぐらいに起きて超焦ってたっす!」
「ユズってさ…ちゃんと教育受けてんの?俺アイツが色々怖いんだけど」
「まだ実質6年しか生きてないっすからねぇ!しかもレイ様と1年暮らしたんすよ?あの人ユズ様に絶対教えないっすよ!」
「アイツ子どもとか簡単に言うけど意味わかってねぇだろ…」
「キスしたら子どもできるって言ったらどうするっすか?真実誰が教えるんすか?」
あり得ねぇけど、ユズならあり得る。むしろガチで可能性しかない。
「もう…レイに任せようぜ。アイツあの顔でクソ遊んでんだから簡単だろ」
「それ言ったらユウト様もすよ!」
「サガ強いと理性は弱ぇんだよ!しらねぇけど!」
「レイ様やユウト様の彼女になれそうな人はいたっすか?」
「ユリより美人なやつはいねぇよ」
「うわぁ、ユウト様も中々重症っすね!サガ強いと愛も重くなるんすか⁈」
「…多分な」
ユリより美人な奴はいるけど欲しいのはユリなんだよ。っていうのは絶対言えねぇ。なんか無理。
「ユズ様パーティーでレイ様が喜んでいるフリさせられてるって言ったんすよ」
「嘘だろ⁈むしろあっちが本性だろ!」
松澤達は知らねぇだろうけどレイのパーティーはヤバい。普段言えない事をここぞとばかりに言うからな。ああ笑いが止まんねぇ。
「レイ様ってユズ様に手出してないすよね?」
「レイが?しねぇ…と信じてる」
まあ、レイよくユズにハグとか抱っこするし、ユズもレイのジュース飲んだりして…いや流石に婚約までは…
「ユウト様しか見張れないから頼むっすよ!」
「俺だってユリとイチャイチャしてぇよ!アイツ触らせてもくれないんだぜ⁈」
「レイ様、ユズ様に知識ない事をいい事に触りまくってるっすもんねー」
でも俺…ユリに触れる自信ねぇ。アイツ身体弱ぇし繊細だから俺が触れたら壊してしまいそうで怖い。好きだって言葉で言えるのに、触れらんねぇ。レイと真逆だな。
「ユリに会いてぇ…」
「俺は会いたくないっす!ユリ様怖いんすよ!」
「それはお前のせいでユズに怪我させたからだろ⁈」
「それは悪かったっす!」
本当、あんなんがユズの思い出の相手とか信じらんねぇ。弱ぇしキモいし暗いし…。
「ユズって真倉と付き合ったりしてねぇよな?アイツ変な所で勇気あるからな」
「おっ認めたんすか?」
「認めてねぇよ!ただ…」
ユズの事が大切って気持ちも会えなかった気持ちも分かるからな。レイも真倉も俺も会えなかったのは一緒だし気持ちはわかるんだよムカつくけど。
「じゃあ俺仕事に戻るっすね!」
「あってめぇ!」
コレだから松澤は信用なんねぇ。ユズお前ちゃんと決断しろよ。お前優柔不断なんだから頼むぞ。
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