第21話 ユズ、告白された

真倉の様子がおかしい。

この前、私のお見舞いに来てくれた時も号泣して保健室でも…告白されたんだよね、私。

なんて言えばいいか分からなくて文句言って誤魔化した。生徒指導の先生には怒られるし、真倉は本当に熱があったし。先生がカーテン開けた時真倉、また泣いてた。私何かしちゃったかな。

「着きましたよ」

「…」

「ユズ様?」

「…あっはい。ありがとうございます」

どうすればいいんだっけ?告白されたらイエスかノーだよね。普通。普通って…何?あぁ、やばいこれ本当に頭回んない。でもこれ体温上昇するからアリかもしれない。ダメだ何いってんだろ。

「寒い…」

体調は万全にしておかないと。もし、万が一、万が一だけど私が死んだら次はユリだ。国の偉い方々には申し訳ないけどユリだけには祝福者になって欲しくない。だから私は絶対に死なないし、死ねない。そういや死亡グラフって何?

「えーと、後の話の流れにおいて死ぬことになるという伏線が張られること。普通の流れだと死ぬことが予測される言動、状況を死亡フラグが立ったなどと言う…」

えっ?真倉死ぬの?どう言う事?真倉の言う事時々わからないんだよね。でも、あんま良い意味じゃなさそう…。嫌だな、死にたくないなぁ。よく分からないけど立たないといいな、グラフ。

「あー分かんない」

こういう時頼りになるのはやっぱりユリだ。ちょうど時間だし電話かけよ。話は聞かれたく無いから松澤さんに車のキーを貸してもらって電話する。

「…ハイ」

「ユリ!今ちょっといい?」

「勿論!どうしたの?何かあった?」

「えっとねー、そのー」

アレ?なんで言えないんだろ?いつもみたいにハッキリ言っちゃえばいいのに。

「その?お姉ちゃん?」

「真倉にそのーあのー」

「…付き合ってって言われた?」

「えっ⁈なんで分かったの⁈」

「お姉ちゃんが真倉君の話で黙るってことはそういう事がなって」

「…ユリならエスパーになれるよ」

「お姉ちゃん笑かさないでよ」

ユリって本当にすごい。私が寝ていた2年間で成長して今じゃ私より背は高いし、凄く綺麗で頭も良くなっていた。正直目覚めた時は信じられなかったな綺麗すぎて。

「それで?私に何を聞きたいの?」

いつの間にかユリの方がお姉さんぽくなっている。

「…私ってさ真倉のこと好きなのかな?」

「どういう意味?」

「私真倉のこと大好きだよ?でも同じぐらいユリもユウトもレイも、マイちゃんもクラスのみんな好きだよ」

「お姉ちゃんらしいね」

私らしい?これ私らしいの?みんなずっとそうだと思っていたんだけど違うの?

「ムズイよ…。ちょっと?ユリそんな笑わないでよ真剣なんだから」

「いやお姉ちゃんとまさかこういう話ができるとはねー。長生きするもんだね」

「ユリまだ14年しか生きてないじゃん」

「記憶だけだったらまだ8年だよー」

こんな冗談を言い合えるのはユリだけだ。他の人にしたらみんな泣いちゃうもん。

「それで?結論は出たの?」

「出ないから電話で相談してるんだよー。ユリー!違い教えてよー」

「自分で考えた方がいいよ」

珍しい。ユリが私にそんなこと言うなんて。いっつも答えを教えてくれるのに。

「ユリは…今好きな人いるの?」

「…いたとしてどうするの?」

「いやどんな人なのかなぁって。ユリが好きになる位だからきっと素敵な人なんだろうな」

「好きな人はいるよ」

「えっ⁈いたの⁈どんな人⁈私の知り合い⁈ギリシアでできたの⁈いつ⁈初恋だよね⁈」

「お姉ちゃんうるさいよ」

だってあのユリにだよ?綺麗すぎて誰も近寄れない高嶺の花のユリに?凄く気になる!

「どんな人なの⁈カッコいい⁈」

「…馬鹿みたいに不器用でまっすぐな人だよ。馬鹿すぎて本当に呆れちゃう人」

「…それ褒めてるの?」

「私なりにね」

そっかぁ、ユリ好きな人いたんだ。まぁそりゃそうだよね。あれだけ綺麗だし私の知らない2年がユリにもあるんだもんな。

「私が知ってる人?カッコいい?イケメン?ユリ昔から王子様みたいな人好きだったよねー!やっぱりギリシア人?」

「…王子様とは正反対の人。汚いし泥臭いし、口悪いし王子ってよりかは魔王みたいな奴」

「ユリ…好きなんだよね?」

「うん。凄く」

私ユリが分からなくなってきたかも。

「その人は…ユリのこと好きなの?」

「多分ね」

「じゃあ付き合ったりはしないの?お互い好きなんでしょ?ラブなんでしょ?」

「好きだから。大好きだから、傷つけたくないの」

「そっか…ごめん」

「…私は後悔してないよ。お姉ちゃんだったらそうすると思っただけだから」

「ごめんね…」

「ちょっと泣かないでよ⁉︎後悔してないって言ってるじゃん!」

なんでユリを2年も1人ぼっちにしてしまったんだろう。たった1年でさえ、電話で話せていても、ユリと離れるのは辛い。ユリはどんな気持ちで私が目を覚ますのを待っていたんだろう。

「ごめん…ごめん…」

「謝らないでよ…私が悪いみたいじゃん…」

「…ユリだって泣いてんじゃん」

「…うるさいよ」

「今の感じ…レイによく似てる。やっぱ一緒に暮らしてたら段々似てくるのかな?」

「…お姉ちゃんはさレイ兄の事どう思ってるの?」

「大事だよ。すっごく大事な人」

「…結婚、本当にするの?」

「する。絶対にする」

「…私の解放と引き換えなんでしょ。知ってるから隠さなくてもいいよ」

「違うよ。私の意思。私がしたいの」

「嘘つき」

「嘘じゃない」

私もユリも無言になる。取引の事、政府の人が話したのかな。それともパーティーで言われた?何にしろバレちゃってたんだな。でも私やっぱり結婚はするよ。子どもに重荷を背負わせてでもユリを解放したい。ユリに泣かれても恨まれても嫌われても、ユリには大好きな人と幸せになって欲しいから。

「…それで?真倉君にはどう答えるの?」

「ユリは…大好きだから付き合わないんだよね?なんで?」

「…好き過ぎるから。離れる自信がない」

「よっぽど…大好きなんだね」

「うん。お姉ちゃんは?真倉君と付き合って…離れれる自信ある?」

「…」

「…私は真倉君の気持ちがわかるよ。真倉君は悩んで、悩んで傷つく方を選んだんだよ。傷ついてでもお姉ちゃんと一緒にいたいんだよ」

「ユリ…」

「もし真倉君と付き合うならお姉ちゃんも覚悟して。中途半端な同情心が一番人を傷つけるの」

「…ユリはいっぱい傷ついたんだね」

「もう…そろそろ切るね。おやすみなさい」

「おやすみ」

電話を切って空を見上げる。もう真っ暗なのに星がキラキラしてて真倉の瞳色だ。多分…真倉はもう気づいてる。気づいてて私に告白した。真倉を傷つけたくはないし私も傷つきたくない。答えは出ているようで出ないままだ。

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