第19話 ユズお見舞い

今レイの凄い大きな声聞こえて目が覚めた…。帰れ?もしかして政府の人でも来ちゃったのかな。

そんなの今更謝られたって火に油注ぐだけなのに。

あーだるい、頭ボーッとするけどレイがブチ切れているなら行かないとなぁ。誰も止めれる人がいないんだもん。全く

「しょうがないなぁ…」

足はちょっとふらついているけど歩ける。扉…開けれない?叩いてみる。

「あっ…起きたんですか」

「佐藤さん。お疲れ様です」

「…体調どうですか?」

「それより、今下でレイの大声聞こえたんですけど大丈夫なんですか?状況やばくないですか?」

「ユズ様の体調の方がやばいです」

佐藤さんは顔も怖くて体格もいいのに泣き虫だ。鬼の面みたいな顔から涙がポロポロ出てくると申し訳ないけど笑っちゃう。

「んー今は結構大丈夫ですよ。それより下やばいですよね?レイ爆発したら後がめちゃめちゃ大変ですよ?下行きます」

「…どきませんよ」

「ちょっと佐藤さん?泣かないで」

本当泣き虫なんだからもう。私の顔見るたび泣かれたら困るんですけど。

「通して下さいよ…下に飲み物取りに行くだけです」

「2階に飲み物も食べ物もトイレも風呂も全部あるじゃないですか…あったかいお茶も用意してますよ」

「佐藤さん顔、怖いです」

「すみません…生まれつきなんで」

「佐藤さんちゃんと休んでます?仮眠とか…取ってくださいよ」

「…」

だから黙って泣かれると怖いんだって。

「もー。レイが心配なんです、通して下さい」

「…」

もーなんで分かってくんないかなぁ。私の体力回復より後の精神疲労の方が響くんだよ!

「佐藤さん?通して」

「…1階まで運びますから」

「やだちょっと恥ずかし…」

まぁ持ち上げられるよね。そんな簡単にヒョイって持ち上げられるのいいなぁ。普段の筋トレとかって何してるんだろ?

「…ありがとうございます。おろして下さい」

めちゃめちゃ恥ずかしい。みんなチラチラ見るから余計に恥ずかしいよ。ちょっと格好つけなきゃ。

「…レイは?」

視線の先は…客間。やっぱ政府の人かな全くさぁ来るなら来るってちゃんと、

「何…やってんの…?」

レイと真倉…真倉?なんでいるの?ああそっかお見舞いかな。あの先生ならありえる…ってめっちゃ泣いてる?レイ何したの?ていうか、あれ持ってるのシンだよね…。

「ユズ⁈起きて…大丈夫なの⁈」

誰のせいで起きたと思ってるの。

「レイ…なんでシンなんか持ってるの?真倉に…何したの?泣いてるけど…。真倉、大丈夫?」

真倉は私を見てまた号泣。私今日、人を泣かしてしかいないんだけど。

「ユズ!早くベッドに戻って!誰⁈連れてきたの⁈」

レイはシンを投げ捨てて、私より青い顔して叫んで支えにくる。…身体が邪魔で真倉の顔見れない。

「レイ…うるさい自分で来たの。レイの大声で起きたんだよ」

本当は佐藤さんに抱っこしてもらったけど恥ずかしいし言わないでおこう。

「馬鹿!誰も止めなかったの⁈」

全く心配性にも程があるよ。レイの身体の隙間から真倉を覗いたらまだ泣いてた。

「真倉、こんにちは…こんばんは?」

ちゃんと笑って挨拶したつもりなのに真倉は号泣している。レイ本当何したの?

「ちょっと真倉?泣いてばっかじゃわかんないよ…レイが何かした?真倉?」

「…帰るわ」

へっ?状況説明もなし?ていうか挨拶ぐらいしてよ。私が突っ込む前に真倉は鞄を持って立ち上がって私とレイがいるドアから出て行こうとしてる。

「え?真倉?ちょっと…」

真倉の手首を握ったのに、真倉は赤くなるどころか青い顔をしている。ていうか目真っ赤赤じゃん。

「ユズ…お大事に…」

「真倉?ちょっと行かないでよねぇ」

「ユズ、部屋戻ろ」

私の言葉をレイはさえぎる。なんかレイ怒ってるけど私も引くに引けない。

「レイ?真倉に何し」

「ユズ戻るよ」

ちょっと次はレイ?本当抱っこは恥ずかしいんだって。勘弁してよ…。

「ちょっと?レイ?」

「…」

無視だ。あーもう!レイの馬鹿!

私の抵抗も虚しく、今度はレイの手によって無理やりベッドに戻された。

「…ありがと」

「…」

また無視?ていうかレイちょっと泣いてる⁈えっ⁈真倉が泣かせたの⁈レイを⁈

「レイ…」

「…」

無言だ。もうやだこの展開。いつまで経っても始まらないんだから。

「ねぇごめんってばレイほら話ききた」

「うるさい馬鹿!黙れ!」

えっ…レイ今なんて言った?えっ?なんで?私そんな悪いことした?

「…ユズごめん泣かないで」

ほらいっつもこれだよ。レイの馬鹿、マヌケ。そんな大声出されたらそりゃ泣いちゃうよ。今日みんな泣いてしかいないよ。本当どうしたの?

「レイだってちょっと泣いてんじゃん」

「…うるさいよ」 

やっとレイがいつもの調子になってきた。まだちょっと目は潤んでるけど。

「私、あったかい紅茶が飲みたいな。レイ淹れてきてくれない?」

「…待ってて」

レイがやっと私のそばを離れてくれた。レイ泣いてたから時間かかるだろうな。気を遣ってあげたんだから感謝して欲しいよ全く。

「ハァ…」

ため息をつく。…レイ、シン持っていたよね?真倉に使うつもりだったの?なんで?でもレイも泣いてたって事は真倉も何か言ったんだ。レイが泣くほどのことを真倉が言えるのかな?

考えている暇もなく、レイは紅茶を持ってすぐ上がってきた。

「早いね…」

いつもなら気を落ち着かせるために時間置くのに。

「…熱いから気をつけて」

なんで?余計に怖いんだけど?紅茶は私が好きなクッキーの香りがするやつだ。

「レイって紅茶好きだよね。何が一番好きなの?」

「…アールグレイ」

「意外と定番!」

「…」

えぇ?この状況で黙るかなぁ。分かんないよ。

「本当今日レイどうしたの?変だよ?」

「…なんで来たの?」

「だってそりゃあレイの大声聞こえたし、もし政府の人だったら困るなぁって」

「…なんで困るの?」

「えっいや…その…あの…」

レイが爆発したら大変なことになるからなんて言ったら凄い悲しい顔するしなぁ。

「その…あんま喧嘩してほしくないなぁって」

「僕のせい?」

「そんな事はないよ!あのーほら皆静かだし…」

やばい何も思いつかない。今日私頭回んないな。

「そのー、何があったか聞いてもいい?」

「…」

だから!黙らないでってば!もう!ムカつく!

「レイが簡単に人を信用しないのは知ってるよ。でもさ、真倉だって悪気があった訳じゃないと思うんだよ。なんかよく分かんないけど…」

「…」

「レイ!私の話聞いてる⁈」

今度はレイがびっくりする番だ。私大声出すの久々だから疲れるんだけど。

「息、荒い。全然回復してないね」

だからなんでそんなに冷静な訳?あんだけ怒っといて私の声にビビらないの酷くない?

「レイの馬鹿、マヌケ、阿保」

「なんとでも」

「馬鹿、あほ、マヌケ、レイなんかサーシャ様に祟られちゃえ」

「…」

「ごめんちょっと言い過ぎ?」

「ううん」

もー!誰かユウトでも誰でもいいから来て!今日レイが変なんだけど!

心の中で騒ぐけど誰も来ない…当然か。ていうかお手伝いさん達異常なビビリ具合だったな。

「…ユズは戸間に居たいの?」

珍しい。レイがその話題持ち出すなんて。いきなりすぎて訳がわからないけど。

「いや…私の記憶そこからだから故郷みたいなもので別にずっといたいとかはないよ」

正直みんなと離れたくなかったし、彩都も考えた。ただおばあちゃんのお墓探したかったし、真倉達にも会いたかったとは…言えない。

「…まだ探してるのお墓?」

バレていたんだ。結構上手く隠してたつもりだったんだけど、誰かチクッたな!全く酷いよ!みんなレイとユウトにチクるんだから!

「うん」

「…聞いてあげよっか?父さんに」

「えっ⁈いいの⁈でも私が聞いてもダメだったんだよ!ユリも聞いたんだけど、ダメ…で…」

あっ、空気がまた凍った。これやっちゃったかな。

「そのー別に無理しなくていいよ。みんなからしたらただの…犯罪者…だし…」

皆からしたらおばあちゃんはただの誘拐犯だ。国力を左右するサーシャ様の祝福者を1人殺して、1人は自分の手で3年間育てた。記憶をなくさせて洗脳させて…学校にも行ってなかったし。

「ただそのー、私もユリも覚えていないからさ、洗脳されてたのかもよく分からないし…」

どうしよう全然喋ってくれない。本当今日レイ熱でもあるんじゃないの?

「…3年間探してた」

「知ってるよ。感謝してる」

「見つけたのが政府だったせいで…」

「分かってるって」

「ちゃんと保護してれば…こんな事にはならなかったのに…見つけたのが政府だったせいで…」

「仕方ないって。監禁されてないだけマシだよ」

「ユズもユリも人形じゃない…」

「私たち人形よりは綺麗だと思うよ⁉︎」

「オモチャじゃない…」

「レイ?本当に大丈夫?熱ない?レイ?」

レイのおでこに手を当てるけど私の手が冷たいせいか、熱く感じる。炎サガ持ってたら体温高いって本当なのかな?リフェース皇太子に聞けばよかったななぁ。

「こんな事になる位なら公表しとけばよかった…」

「やだよー。いちいちネットニュースに載るの。私人の上に立つタイプじゃないし」

「…なんでユズなの?ユズが何かした?」

「何もしなかったからねー。今ツケが回ってきてるんだよ。ほら私、寝ていた分も合わせて5年のブランクあるからさ」

泣かないでよ…。私までまた涙出てきたじゃん…。我慢していたのに。レイの馬鹿。

「…ユズは本当は誰よりもサガの才能あるんだよ。僕の何倍も強い筈なんだよ」

「地震起こしちゃうぐらいだからねー」

「…」

「レイ?あんまり抱きつかないでよ、誰か来たら恥ずかしいから」

「何が祝福者だよ…ただの呪いじゃん」

「ちょっとレイ?」

「なんでユズなの?なんで他の人じゃないの?」

「レイ?大丈夫?」

本当に今日どうしたのレイ?真倉と何があったの?なんで帰れなんて…言ったの?私が傷つくのわかってる筈なのに。

「…ユズとユリ、よく寝言でシュウとカンナって名前言ってるね」

知ってたんだ。あっ…真倉の下の名前レイとユウトに言っちゃった気がする。バレたかな。

「その名前…」

「2人とも泣きながら名前呼んでる時ある。みんな知ってるよ。ユウトも知ってる」

「…恥ずかしいなぁ。ていうかレイ、そろそろ離してよ。本当に人来ちゃう」

「…」

「レイ本当にどうしたの?大丈夫?」

「…なんでそんな無理に明るく振る舞うの?馬鹿なの?」

レイがそんなこと言ったせいで涙が止まらなかった。レイはずっと抱きしめいて私が寝るまで離さなかったらしい。後で目を真っ赤に腫らした佐藤さんに聞いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る