第一週目 金曜日
今日も不登校更生だ。
今日の相手は高校2年生の、矢口金江という子だ。家は近くも遠くもなく、ほとんど俺の通学路中にあるらしい。
俺は電車の席で高校の各教科の参考書を調べながら向かう途中、ひーちゃ、いや、星田さんが何やら買い物をしているところを見かけた。
まあ、今そんなことは関係ない。今重要なのは、今日の不登校少女がいったいどんな性格をしているのか、だ。
(今日は大事なことを伝え忘れない!)
そう強く思いながら、最寄りの駅で降りた。
「住所を見る限り、この辺なんだけどなあ…」
俺が団地の周辺を彷徨っていると、突然後ろから誰かに体当たりされた。
「こらー!悠斗ー、待ちなさいよっ!って、あのすみませんうちの弟が…」
体当たりしてきた少年を追いかけてきた中3くらいの女子が俺の顔のあざを見て青ざめた顔で寄ってきた。
「ぎゃあああ!これ悠斗が??ほんっとにすみません。ほんとに、とっとりあえず上がってお話を…」
「あ、あの、これは…」
「とりあえず、ねっ?」
彼女は俺の話を最後まで聞かずになぜかうち家の家は、暇じゃないのに。
「あれ、ここ矢口?って、え?」
どうやら彼女が今回の不登校少女のようだ。
っていうか、少女しかいなくね??
というのはさておき、なんだ、この子供だらけの家は…
「騒がしくてすみません…今、お茶出しますね。」
「あの、この怪我は元々なんで、気にしないでくださいよ、まじで。」
「そ、そうなんですか?私はやとちりしてしまって…すみません。」
彼女は綺麗な茶髪のポニーテールをゆっくりほどきながら謝ってきた。
「っていうか、今日は矢口さんに用事があって…俺、岬高等学校2年の村山って言います。」
「矢口?僕のこと?」
彼女の弟の一人が声をかけてくる。
「あ、えっと…」
「かなえでいいよ、よろしくね村山くん。で、話って何?」
性格が…いい!!!!そしてくりっとした目が可愛い!
「あ、はい実は…」
「なるほどね…でもうちは親が共働きで、しかもこの人数の子供がいたらさ、学校行ってる余裕なくって。しかも、義務教育は終わってるじゃない?やめてもいいかなって…」
「確かにそうだよな…」
痛いほどわかるぞ、確かにこの状況で学校に行くのはなあー
だがしかし、俺の推薦が…
「ごめんね、わざわざきてもらったのにごめんね。今から行くなら勉強ついていくところからだからね…せめて少しお礼でもしようかな。…ちょっといい?」
「は、い…?」
彼女は手慣れた手つきで昨日受けたあざの手当をしてくれた。
(やさしー!)
「ありがとね。あ、そうだ!もしよければみんなの面倒見るの手伝うけど…?」
「え、悪いよー」
彼女は食器を下げながら答えた。
「通り道なんだよ。それに手が空く時間が少しでもあれば勉強できるだろ?」
「そ、そんな…」
「いいんだよ、それにかなえはまだ諦めたくないだろ、弓術?」
「え…?」
俺が棚に置かれている賞をさしていうと彼女は頬を染めていう。
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
はあああ!今日は最高の1日だったあああ
全てがうまく行った!
それでも俺は知っている。いい感じにことが進んでいる時にやってくる、ひどい状況を。
明日は舐めずに取り掛かろう。きっとうまくいくと信じて。
そして、ゲームの日間ランキング見て肩を落としながら、俺は家に帰った。
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