122話 魔国
人間や亜人などの
七ヵ国と言っても他にも同盟に参加している国はあるが大国として強い発言権を持っているのが七つの国なのでそう呼ばれている。
同盟の約束事として同盟国同士での戦争、行きすぎた経済コントロールなど、同盟全体として不利益になるようなことが禁止されている。
なぜならば大陸のもう半分を支配している魔族たちに弱みを見せないためだ。
今でこそ大規模な戦争には発展していないものの過去には血で血を洗う殺し合いが長く続けられていた。
各国にとって
中には問題を起こす来訪者もいるが、それ以上に国に貢献してくれるからだ。
死んでも蘇ることのできる体は戦争において圧倒的アドバンテージである。
特攻ができるのはもちろん、死を前提にした情報収集、いざというときの殿にも使える。
七ヵ国大同盟が魔族との戦争で苦しめられた戦術が選択肢に入るのだ。
王国よりも遥か遠く西の方に魔族領は存在している。
人種の国々と同じく魔王をトップに立てた統治国家になるのだが、違うのはその多くがモンスターもしくは魔族。
その中には来訪者も存在している。
人種では来訪者と
魔族やモンスターの中には死を超越した存在が多いためだ。
魔族領を選択する来訪者は数が少ない。
いくつかの要因があるが、一つ目はβ版の段階でも話題になった操作性の難しさ。
人間とはかけ離れた姿のものが多いため歩くことすら難しいことがある。
いきなり四足歩行で歩けと言われても分かるはずがない。
四足歩行程度ならまだいいがスライムのような流動性のモンスターでの移動は意味不明だろう。
二つ目が行動範囲の狭さ。
魔族領は広大だが都市や街となると人種側と比べて圧倒的に数が少ない。
経済、文明で劣っている。
かといって魔族領から出るのも難しい。
魔族領から出てはいけないという決まりはないし、出ようと思えばいくらでも出れるが、狩られる可能性が格段に上がってしまう。
長い戦争の影響もあってモンスターや魔族は人種の敵と認識する者が多い。
テイマーなどの職業があるのだから仲良くできることなどわかりきっているのに、それでも忌避感の方が勝るらしい。
そんな魔族領にモンスターを選択した少年少女の来訪者がいた。
彼らは今から魔族領を抜けて人種の領土に足を踏み入れようとしている。
「よーし、目指すは帝国だな」
「準備も万端だよ」
「本当にいいの?」
ゴブリンが高々と手を上げて宣言する。
スケルトンは肯定的だが、スライムは疑問を投げかけた。
「大丈夫だって、これだってあるしなんとかなるさ」
ゴブリンは緑色の肌をしていて150センチほどの小柄なモンスター。
知能は低いとされていて、来訪者が選択した場合は種族特性でINTが上がりづらい。
その代わりに他のステータスは上がりやすい。
そこらへんにポップするゴブリンは目つきからして邪悪そうな目をしているがこのゴブリンの目はそこまで邪悪ではない。
キャラクタークリエイトでそう作ってある。
スケルトンは骨が本体のモンスター。
それぞれの部位のパーツは魔力で繋がっていて動いている。
ステータスは全体的にバランスがいいが、若干VITが低いくらいだ。
スライムはジェル状のモンスターで核を中心にジェルが集まっていて、核さえ無事なら体への攻撃はほとんど効かない。
顔がなく五感を全て魔力感知で補っている。
おおよそ人間の感覚とは大きく異なるので操作が難しい。
「敵が来たみたい」
スライムは魔力感知で敵の反応があることを2人に告げる。
スライムを選択した少女の名前はラム。
今回の旅の目的を作った張本人である。
魔族領でもモンスターが敵として出てくる。
これらは知能のない野生のモンスターで倒しても問題がない。
「よーし、さっさと片付けようぜ」
ゴブリンを選択した少年はごぶ。
ラムがぽろっと漏らした言葉を聞き逃さず、今回の旅をすることを即決したリーダー的な存在。
「では先制攻撃行きます」
スケルトンを選択したトロンはごぶがラムの願いを聞き入れるとなんの計画もなしに意気込んでいたので旅の計画を立てた。
森からものすごいスピードでやってきたのは数種類の虫型モンスター。
百足に蛾にカマキリの3匹だが、その大きさは2メートル近くあって、あまりにも気持ち悪い。
トロンは詠唱を始めた。
スケルトンが魔導師のローブに魔導師の杖を身につけている。
モンスターには基本的に職業はないがその代わりに進化ができる。
職業でいうと三次職魔法使い系統になるトロンの種族名は『
「深き闇より穿て『
しかし、ふらふらとはしながらも空を飛んでいる蛾は羽を羽ばたかせて風の刃を撃って反撃に出る。
「任せて!!」
トロンの前にラムが体を出して風の刃を飲み込んだ。
ラムは触手を伸ばして蛾に触れると蛾が溶けていく。
本来は緑色なのだがラムが操るのはピンク色の特殊個体だった。
カマキリは大きく羽を広げ、鎌を上げて3人を威嚇する。
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