63話 円卓の騎士団
王国最多の
その実力を知らなかった3人は恐れを抱く。
同じ四次職でもこうも差が出るものかと。
しかし、それは当然のことだ。
一次職のレベル上限は10、二次職は20、三次職は30、四次職は40と職業のランクが上がるごとにつれその差は顕著に広がりやすくなる。
さらにそこに装備やスキル、称号も加われば差が出るのは分かりきっている。
それでも恐れてしまうのはハザルの召喚したヘルハウンドが3人を食料として見ていて涎を垂らしているように思えるからだ。
影でできた姿ではっきりとは分からないが確実に腹を空かせていると分かる。
「おい、そいつらは喰いもんじゃねぇぞ」
ハザルの言葉でヘルハウンドたちは渋々影に戻っていった。
「おっ、見えてきましたね」
「あれが跡地か……見事に雪に埋もれてるな」
人工的に整備された区画があり、建造物も僅かに残ってはいるが長い年月のせいでほぼ自然の一部と化していた。
それでもゼロから拠点を作るのに比べれば多少残っていただけでも御の字だ。
本来であれば到着した部隊から辺りの索敵と安全確保ののち、後続部隊と合流、拠点作りに入るのだがハザルたちの考えは違った。
「どうする? 私たちが一番乗りみたいだけど」
「当初の予定通りでいくぞ。そのために最短ルートを突っ切ってきたんだからな」
ハザルはクランメンバーではない3人にゆっくりと近づく……
§
Bルート第一部隊は困惑していた。
強いモンスターが出てきたわけではない。
聞いていた話しでは傾斜は強いが登れないことはないということだったのに目の前にあるルートはほぼ絶壁。
クライミングできなくはないが物資の搬入はできそうもない。
「ここを迂回するとなるとさらに時間がかかりそうだな。誰か第二部隊に伝言を頼みたいんだが」
Bルート第一部隊隊長のあーさーは指示を飛ばす。
彼は騎士クラン『円卓の騎士団』のクランマスターであるが、今回のレイド戦に参加しているのは彼だけだった。
他のメンバーはこのクエストへの同行が難しかったため別のクエストに行っている。
いくつかのクランが丸々入っているこの部隊で1人浮く存在になっていた。
それでも彼が指揮をとっているのは今回のメンバーの中で、いや王国の中で最も高レベルの来訪者だからだ。
そのレベル86。
王国でも来訪者のレベル80台は3人しか確認されていない。
「では私が第二部隊へ伝えてきましょう」
「護衛でもう1人ついて行って貰ってもいいかな」
「分かった、俺も行こう」
あーさーの指示に嫌な顔せずに従う隊員たち。
高い実力と共に品行方正でも知られるあーさーは信頼が厚かった。
第二部隊への伝言で2人を残して歩みを進める。
ただでさえ道のりの長いBルートで絶壁を迂回しさらに時間がかかるのを承知で休憩を挟みながら慎重に進む。
お陰で今のところは犠牲者はいない。
しかし、あまりにも慎重に進みすぎて当初の予定よりもかなり時間がかかっていた。
慣れない登山に長時間吹雪に晒されては不満を声に出す隊員が出てくる。
「高レベルっていってもこんな安全確認ばっかで地道に上げただけかよ。期待して損したぜ」
「おいっ、聞こえるって」
「はいはい、分かってるよ」
「おいっ!? バカッ!!」
男は後ろをついてきていた知り合いの男に振り向きながら愚痴を溢していた。
前を見てないというわけではなかったが、油断は油断。
その代償を払うことになる。
男が気づいたときには目の前に真っ白な壁があり、いつのまにか崖に叩きつけられていた。
吹雪の中でその白い毛皮は見えづらいが、腕は2本だが体格が倍はある巨大なブリザードエイプがそこにはいた。
巨体のエイプがドラミングしながら吠えると崖の上から他のブリザードエイプが姿を現す。
「Bルートは楽な道だって聞いたんですがね。油断しなければ」
神官の女性隊員が愚痴を溢して壁に叩きつけられた男に冷たい目線を向け結界を張る。
「グランドクロス!!」
眩い光りに辺りが包まれたと思えば巨体のエイプを光る十字の斬撃が襲う。
両腕を交差させて受け止めるが、深い傷を負うことになった。
しかし、四次職上位のスキルでの一撃を受け止め、腕の傷だけでとどめたのは巨体のブリザードエイプの強さを表している。
「これを受け止めるとはなかなかやるな。でもこの程度どうってことないさ、さぁ後続が安全に進めるように殲滅しよう。後に続いてくれ!!」
あーさーが味方を鼓舞する。
「
光の斬撃に対抗するように黒の斬撃が飛ばされる。
暗黒騎士のカルだ。彼女もまたレベル76の猛者。
「素晴らしい!!」
その黒の斬撃を見てあーさーはそう漏らした。
「このレイドが終わったらウチのギルドに来ないか?」
そしてあろうことかボスと戦闘をしながら勧誘を始めた。
「考えておきます」
光と闇の斬撃が交差しながら巨体のエイプに傷を増やしていく。
他の隊員も囲んでいるブリザードエイプとの戦闘に移行する。
気づけばあっという間に死体の山が完成していた。
「よし、大方片付いたかな、回復をしてやってくれるか」
「えぇ」
女性神官が結界を解いてバカな男を回復する。
「すまない、助かった」
「それは隊長のあーさーさんに言うべきでは? そもそも地道に経験値を集めていてトップでいられるわけがないでしょう」
「あっ、あぁ、悪かったよ」
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