50話 竜のたまご
やはり空の旅は最高の一言だった。
ヒコ村からレストリアにあるシュバルツ城に戻ってきた俺は再び、ストルフが手綱を握るドラゴンに乗って王都へと向かっている。
王都へつけばドラゴンが手に入るのだ。
楽しみな気持ちが抑えきれないな。
「クロツキ様はドラゴンを欲しいとお嬢様に直談判したとお聞きしました。まさかそんな命しら……じゃなくて、ドラゴン愛がある方だとは思いもしませんでした。私もドラゴン愛だけは誰にも負けてないと自負してましたが、まだまだだと思い知らされましたよ」
そこまでのつもりは全くなく、酔った勢いでドラゴンが欲しいと口走ってしまっただけなんだけどな。
「まさか、本当に貰えるなんて思いもしてなかったけどね」
「どんなドラゴンか楽しみですね」
「ストルフも知らないのか?」
「あぁ、もしかしたら勘違いされてるかもしれませんがいきなりドラゴンは貰えないんですよ。貰えるのはドラゴンの卵でそこから自分で育てないといけないんです。あらゆるモンスターの中でもトップクラスの育成の難しさで手間暇がかかるんですけど、その分、愛も深くなりますよ」
そうなのか、ドラゴンが直接貰えると思ってたが卵からなのか。
まぁ、どちらにせよ貰えることに変わりはないから関係ないな。
むしろ楽しみが増えたぐらいだ。
「でも卵とはいえどんなドラゴンかはわかるのでは?」
「いえ、ナヴィと同じ黒竜種グウェンドですよ。同じといっても一体一体個性がありますからね」
ナヴィは今俺を王都まで運んでくれている黒竜なのだがこのドラゴンと同じ種族らしい。
うん、カッコいい。
「黒竜種グウェンドはどんな特徴が?」
「まず、大まかに分けて竜と言うのは6種類に分類されます。黒竜………………」
どうやら俺は押してはいけないスイッチを押してしまったらしい。
ストルフのドラゴン愛が爆発してマシンガントークが止まらない。
マシンガンは王都に辿り着くまで弾切れを起こさずに撃ち続けられた。
まぁ、ドラゴンへの興味は俺にもあったしそれなりに聞きいってしまった。
要約するとまず大まかに6種類のドラゴンに分けられて、そこから身体的特徴などで細分化される。
大まかな6種類とはなんでもこの世界の創世記に誕生した6匹の龍王から続く系譜で神話や伝説として語り継がれている。
身体的特徴は羽の形であったり尻尾、そもそも羽が生えていないなど結構細分化されているらしい。
中でも黒竜グウェンドはドラゴンの中でも比較的古い種族で強大な力を持つらしい。
ドラゴンだけでなくモンスターも古い種族の方が力が強いとのことだ。
「おっと、もう少し熱く語りたかったですがついてしまいましたね」
黒竜ナヴィは王都から飛び立った時と同じ場所へ降り立つ。
「お帰りなさいませストルフ様。約束の品は用意できています」
「あぁ、ありがとう」
執事服の少女は頭を下げて待っていた。
「クロツキ様フットマンのルーです。ルーは基本的にこの屋敷にいますので、もし王都で何か困りごとがあればルーに話をすれば私に伝言を残せますので」
フットマンといえば執事見習いのような立場だったっけかな。
背筋を伸ばしてピシッとする執事服の女性はこちらをじっと見ている。
「……よろしく、ルー」
「クロツキ様。よろしくお願いいたします」
俺からの言葉を待っていたようだ。
3人で廊下を歩く。
廊下の壁に飾られているのは様々なドラゴンの絵画だ。
ここはストルフが管理をしていて趣味全開となっている。
自ずと足が止まってしまう一枚の絵があった。
それは最も大きな絵で、歩きながら流し見をすることなどできない。
絵画でありながら本物のドラゴンのような威圧感を放っていた。
黒き鱗を身に纏い、黒よりも黒い翼を二対広げている。
「これは竜の王族ともいえるグウェンマグナです。この威圧感ながらグウェンマグナの中では弱い部類なのですよ。それでも一国を軽々と滅ぼす程度の力は持っていますけど」
「これは……凄いですね」
「とある芸術家に依頼し、スキルを用いて描いてもらいました」
「なるほど……」
この威圧感は芸術家のスキルによるものなのか。
それともモチーフとなった黒竜の偉大さが心に響くのか。
その両方だろうなと俺は結論づけた。
とある部屋へ案内され入ると部屋の中央に卵が置かれていた。
「クロツキ様、こちらがお約束のものになります。お受け取りください」
「ありがとうございます」
大きさにして直径50センチほどで重さは10キロ程度。
アイテムボックスに入れることができてよかった。
ドラゴンの卵はただ置いていても孵ることはないらしい。
いくつかのアイテムが必要でストルフにリストを貰う。
モンスターを狩って素材を入手しなければいけない。
なんだか凄くRPG感が出てきた気がする。
俺のルキファナス・オンラインはなぜかモンスターと戦闘するよりもプレイヤーとの戦闘の方が印象深い。
それもこれもイヴィルターズのせいだが。
素材入手のためのモンスターは今の俺からすると中々に強力だ。
まずは準備から始めないといけない。
イヴィルターズを倒したことでレベルも上がったが、精霊祭でまだまだなのだと思い知らされた。
パンプキンヒーローたちは本気ではなかった。
あくまでも遊びの一環で戦闘をしていただけだ。
それでも倒しきれなかった。
まずは装備から整えていくことにする。
度重なる連戦でかなりボロボロになってしまっている。
装備といえば青江さんから冒険者ギルドに連絡が届いていた。
王都に戻ってきたらとある店に来てくれとのことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます