28話 迷宮の真の主
避けようのない炎を前にただただ顔を隠すしかできない。
炎が体を覆い尽くすが熱さも痛みも感じない……
ダメージも受けていかった。
「ヘビィアーマー」
俺の体を守るように半透明の鉛色の鎧が体を包んでいた。
「ありがとう」
「気にしなくていい」
俺は後ろでスキルを発動させていたオウカにお礼を言ってウィザードを乱刀・斬で斬り刻む。
ソルジャーと違って防御は低かったようでダメージの入りが全然違う。
ウィザードを倒してもヘビィアーマーは俺の体を覆っていた。
一定時間、防御力を上げるスキルの鎧に重さは感じない。
パーティを組んだのはこれが二度目。
一度目はいい思い出がない。
ミドルプリーストのフェイ、冒険者ギルドを追放、国からも手配されたあいつは姿を消した。
いや、フェイだけでなくイヴィルターズのメンバーはどこかに身を隠している。
横を見るとソルジャーはすでに粉々に砕かれていた。
オウカは本当に信頼してもいいのだろうか。
話した限りでは俺を騙すような意思は見受けられない。
こんなにも俺は疑い深かったか?
隠者に隠しステータスでそういう類のものはないよな。
なければないで自分の性格が嫌になってしまうわけだが。
「どうしたの、いかないの?」
「あぁ……行くよ」
進めば進むほどに止めどなくスケルトンたちはやってくる。
基本は三体で出てくるのだが種類は様々で確認できたのはソルジャー、ウィザード、シールダー、アサシンだった。
シールダーは大楯を持ったスケルトンでオウカに任せる。
その代わりと言ってはなんだがアサシンは俺が受け持つ。
アサシンは俺と同系統でAGIが高く、オウカでは相性が悪い。
ただのスケルトンとはいえ50体が波のように出てきた時はきついなと思ったが、ヘビィアーマーを再度かけて貰って後はひたすらに斬り続けるだけでスパスパと倒せるものだから意外と楽だった。
あの全ての敵が上位種だったなら撤退一択だった。
地下迷宮に潜って100匹以上はスケルトンを狩り続けている。
おかげでレベルも面白いように上がっていく。
暗器使いの職業レベルが18に上がった。
もう少しで次の職業に転職できるレベルに到達する。
「かなり奥深くまで潜ってきたが、まだ先なのか?」
余裕はあるが奥深くまで潜ったということはそれだけ帰りも大変だということになる。
「大丈夫、もう少しでボス部屋だから」
「なるほど」
試練のダンジョンではボスを倒せばそのパーティは外へ転移させられるため戻るよりも効率がいい。
もし負けてデスペナルティになってもそれ以上にこのダンジョンで経験値を獲得することができた。
俺にとってはメリットしかないダンジョン探索だった。
だが、オウカは違うだろう。
レベルが上がれば上がるだけデスペナルティは重くなる。
ここで2人が死ねば俺だけ得したみたいになる。
なんとかボスを倒したいものだな。
オウカの言葉通り、何体かのスケルトンを倒してすぐボス部屋に辿り着いた。
「ステータスを上げるから少し待ってくれ」
「わかった、私も準備する」
オウカはマナポーションで魔力を回復している。
ここまでの戦闘で鎧巨人顕現のスキルを何度か使ってるのを見た。
しかし、その状態から炎を纏う状態に移行するのは一度だけ。
通常時のオウカが炎を纏えることから、炎を出すのは鎧の力だろう。
鎧巨人顕現のスキルが魔力を必要としているのか、それとも鎧自体の能力発動に魔力が必要なのか。
とりあえず俺はレベルアップで得たスキルポイントを全てAGIに捧げた。
「こんなときに聞くのもなんだが、どうしてこんなダンジョンにこだわるんだ。しかも俺を誘ったのはどうしてなんだ?」
隠しダンジョンは表のダンジョンと違ってレベルが高かった。
だがオウカのレベルを考えればこだわるのは不思議だし、俺を誘った理由も分からない。
「そこに……負けられない戦いがある。お兄さんが最適だと判断した」
「それじゃあよくわかんないな。まぁ、言いたくないなら別にいいけど」
「ここは私しか知らない私が見つけた隠しダンジョン。そして私が死んだ場所」
「リベンジマッチか?」
「負けたままはよくない」
「どうして俺なんだ?」
「三次職になってからもリベンジに来た。そしてまたやられた。私とは相性が悪かった……でもお兄さんとならなんとかなるかもって思った」
隠者の俺が相性のいい相手ね。
俺と同系統もしくは遠距離タイプの相手かな。
オウカはスキル発動中その場から移動できない。
遠距離タイプの相手なら俺が攻撃を掻い潜って近づけばチャンスはあるか。
「よし、作戦会議をしよう」
「おっけー」
より詳細にボスの特徴を聞いて作戦会議を行う。
聞けばそのボスは地下迷宮の新なるボスで表のボスモンスターは今から戦うボスが作り出したスケルトンが成長したものらしい。
表のボスを倒してダンジョンクリア報酬を貰えなければここの存在にも気づくはずだ。
しかし、そうなっていないのは仮にもダンジョンクリア報酬を貰えるからで、そんなことを考える天使とやらは俺から見てさぞ性格が悪いように感じる。
十分に準備を整えて扉を開けた。
広い正方形の部屋の最奥に玉座があり、そいつは堂々と座して待つ。
部屋の中心程まで歩みを進めると向こうは動き出した。
「客人とは珍しいな……あぁ、そこの女は何度かきたことがあるな、再び殺されにくるとは」
邪悪な法衣を纏ったそれは杖をついて立ち上がる。
「リベンジマッチ」
「ふっ、ハッハッハッハッハッハ、無駄と言うのになんとも健気だな。初めてのものもいることだし紹介をしておこう」
骸骨の目に赤き光が灯り、邪悪なオーラが立ち込める。
「我こそは『スケルトン・オーバーロード』、不死の王にして死を超越する者なり」
オーバーロードが杖で地面をつくと、地面から無数のスケルトンが出現する。
それはこれまでに倒してきた様々な種類のスケルトンたち。
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