18話 パーティ

 はじめてパーティを組んだ。

 パーティのメリットはバフの増加やモンスターを倒す効率がよくなることだ。

 他にも専用スキルなんかもあるため複数人で行動するならパーティを組んでいた方が何かとお得だ。


 ただ、パーティは6人までが推奨ラインでそれ以上の人数とは組む意味がない。

 モンスターを倒す効率がよくなっても獲得できる経験値やアイテム、依頼の報酬はパーティが増えるほどに分割されるためむしろ組まない方がよくなる。

 ほかにも人数が増えすぎるとトラブルの可能性も増えてしまう。


 パーティで重要なのは信頼関係である。

 まぁ、本来であれば長期的に組むのが普通で信頼なくして共闘なんてできっこないし、信頼できない人間と一緒にいるのは難しいだろう。

 俺の思い描いていたパーティとは互いが背を預けられるだけの信頼を築き、互いに切磋琢磨し合う、そんなことを期待していた。


 元々パーティで活動していて、ギルドで目に入った3人の冒険者、ソロで活動している冒険者、そしてギルド職員と俺を合わせた6人が今回のメタモルスライム討伐パーティだ。


「いやぁ、皆さんお強い!! これなら簡単に倒せそうですね」

 軽い口調のフェイは神官系統で後方から俺たちにバフをかけてくれている。

 そしてフェイのいうとおりにメンバーの実力が思っていた以上に高かった。


「たしかに依頼ではもっと難易度が高かったはずですが……」

「あーしは楽して報酬が貰えるならそれに越したことはないと思うけどなぁ」

「それをギルド職員の前で言うのはどうかと思うけど、たしかに楽すぎる気がするわ」

 戦士系統のジュンとニャン丸、魔法使い系統のアリサ。

 3人の連携もさすがだが即席で組んだこのパーティでも周りを邪魔することなく自然に戦闘が行えている。


 俺はパーティでの戦闘は単純なものではないと痛感していた。

 特に回避特化の俺の戦闘方法はパーティ向きじゃないのかもしれない。

 俺が攻撃を避けるということは後ろに誰かいればそこに攻撃が向かってしまうわけで、自分の立ち位置などを計算しなければいけない。

 それに敵に近づきすぎては魔法の巻き添えになってしまうので攻撃タイミングも合わせなければいけない。

 意外と大変だ。


 PK相手にルーナとリオンとで共闘してそこそこ手応えを感じていたけど、あれはほとんど個対個で連携はといわれればないに等しく、本物のパーティ戦闘とは雲泥の差があったようだ。

 ソロ冒険者が一定数いるのにも納得だ。


「ちっ、どうして俺がガキの子守なんかしなきゃいけねえんだか、ダラダラ喋ってねえでとっとと終わらせるぞ」

 同行しているギルド職員は最初からこんな感じで機嫌が悪い。

 このパーティで頭一つ抜けた実力を持つ彼からすればギルドからの命令で仕方なく同行しているだけでこんな依頼は面白くもないのだろう。

 ただ彼がパーティで一番の実力者であり、ギルド職員でもあるわけだからパーティを率いるのは彼になる。

 あまりいい雰囲気とは言えない。

 ただ、その卓越した槍捌きのおかげで苦もなく洞窟の奥へと進んでいけている。


「おい偽善野郎、この奥でいいんだな?」

「ええ、この辺りで見ましたよ」

 横柄な態度に表情を変えることなくフェイが答える。

 今回の依頼であるメタモルスライムの討伐はフェイの証言から危険度が高いと判断されギルドが出したものだ。


 冒険者ギルドでは基本的に依頼人がギルドに依頼を出し、それをギルドで精査してから難易度設定などを行って掲示、冒険者がそれを見て依頼を受ける。

 この流れが普通なのだが、冒険者ギルドは王国から許可を得ている公的機関でもある。

 モンスター関連による国内での危険を排除するのも仕事の一つで今回のように危険だと判断されたモンスターが確認されれば討伐もしくは調査の依頼が投げられる。

 例えそこにモンスターがいなかってもそれなりの報酬が貰えるので美味しい仕事というわけだ。

 もちろん討伐すれば討伐報酬が払われる。


 それにしても神官に偽善野郎とは口が悪いにもほどがある。

 冒険者ギルドの職員は元冒険者が多く、新しく入ったばかりの職員はまだ荒々しさが抜けきってないこともあると聞いていたけどこれは酷すぎではないだろうか。


「よし、準備はいいな!! 偽善野郎はバフをかけろ。根暗野郎は索敵に集中しとけ、擬態して隙を窺っている可能性が高いからな」

「俺の索敵がメタモルスライムに通用するかどうか分からないので油断しないでください」

 探索や索敵は隠者系統が得意としているが、俺はそっち方面ではないのでそこまで得意ではない。

 他職業と比べればマシなくらいだ。


「ふんっ、はなから期待なんぞしてない。クソガキは左、メスガキは右、俺が正面だ。偽善野郎とちんちくりんの後衛組は一歩後ろをついてこい」

「はぁ、僕の名前はジュンなんですが……」

「それをいうならあーしだってニャン丸だっての」

「どこからちんちくりんなんて呼ばれ方をしなければいけないのか理解できません」

「まぁまぁ、悪い人ではないはずですから。今は目の前のことに集中しましょう。バフをかけますね、光の加護」

 フェイのバフがかかり俺たちは自然にできた部屋へと入っていく。

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