第25話

 文化祭が近づいている市立高校。その生徒会に休んでいる暇などなく、土曜も朝早くから登校して仕事に追われていた。

 本来ならそこまで急ぐ必要もなかったし、バッファも十分に取っていたのだけど。会長と副会長が揃ってしばらく休みになるのだ。当初の予定は全て白紙にして、一から組んでいかなければならない。


「あいつらは今頃、豪華客船で海の上か。羨ましい限りだな」

「仕事って言ってたし、また厄介な案件なんじゃないかな。わざわざあの三人も駆り出されるってことは、相当面倒だと思うけど」

「前言撤回、ちっとも羨ましくねえ」


 書類にペンを走らせながら、カゲロウと蓮が談笑している。二人とも随分と余裕そうだが、文化祭までもう二週間もないことを理解してくれているのだろうか。


「二人とも、喋ってないで手を動かしてよ」

「つっても、ある程度余裕はあるだろ。次期生徒会長様はやる気が違うな」

「まだそうだって決まったわけじゃないし」


 愛美からは次の生徒会を直接お願いされてるし、葵としてもやぶさかではないのだけど。それでも今はまだ、愛美が生徒会長だ。

 葵の中ではいつだってそう。あの世界での風紀委員でも同じ。桐原愛美という先輩が上に立ってくれていたから、その背中を追いかけ続けて来たから、今の自分があると言っても過言ではない。

 愛美がまだいるうちは、自分たちの代のことなんて考えられない。


「でも、カゲロウの言う通りだよ。葵はちょっと根を詰めすぎ。もう少し肩の力抜いた方がいいよ」

「蓮くんまで……」


 この世界でもなんだかんだありつつ恋人に収まった彼に言われると、葵も弱ってしまう。一度ペンを置き、グッと体を伸ばした。なぜか蓮に顔を逸らされてしまったけど、どうしてだろう。ていうか、カゲロウはなにをニヤニヤしてるのだろう。


「お前、夏服なんだからもうちょい考えて行動しろよ。蓮が可哀想だろ」

「は? なんの話?」

「カゲロウ、余計なこと言わなくていいから……」

「いくらお前が貧相な体って言っても、そうやって体伸ばしてたら男は嫌でも視線が向くもんなんだよ」


 不思議そうに小首を傾げていた葵だったが、やがてカゲロウの言葉の意味に気がついて、顔が真っ赤に染め上がる。


「あ、あんたね! どこ見てんのよ!」

「別に俺は妹の体で欲情するような変態じゃねえよ」

「誰が貧相な体ですって⁉︎」

「いやそこかよ危なっ!」


 いつも愛用してる刀をカゲロウの頭目掛けて思いっきり投げたら、ギリギリ躱された。チッ、惜しい。


「てめぇなにしやがる!」

「変なとこ見てくるカゲロウが悪いんでしょ!」

「だからってこんな物騒なもん投げる必要ねえだろ!」

「まあまあ」


 今にも翼を広げて大喧嘩に発展しそうな兄妹を、蓮が苦笑しながら宥める。

 睨み合いながらも落ち着く二人だが、この程度の兄妹喧嘩なら日常茶飯事だ。


 ため息をひとつ吐く葵は、なにも本気でカゲロウと喧嘩するつもりがあるわけじゃない。そもそも、ここは学校だし。この世界では、必要以上に魔力を使うことは避けたい。


「おーおー、今日も元気だなお前らー」


 突然生徒会室の扉が開かれ、顧問の教師が現れた。

 眠たげで今にも落ちそうな瞼にぼさぼさの髪。妙齢の女性あるまじき野暮ったいジャージ姿の彼女は、旧世界でもお世話になっていた先生。

 稀代の錬金術師、久井聡美。


 葵たちと同じく記憶を取り戻している彼女は、壁に刺さっている刀を見ても取り乱さない。むしろ、この人が取り乱すところなんて見たことがない。


「お前ら、喧嘩するのはいいけど魔力はちゃんと回収してくれよー、凪さんに怒られるのはあたしなんだからな」

「そこまで本気で喧嘩しませんよ」


 葵もカゲロウも、時と場所くらい弁える。ていうか、そんな暇があるなら仕事するし。

 パイプ椅子の一つに腰掛けた聡美は、大きな欠伸をひとつ。この人がだらしないのは昔からいつものことだけど、もう少し女性としての慎みとかを覚えた方がいいと思う。


 そんなぐーたら教師が、いつも副会長が座っている席を眺めて呟いた。


「しかし、魔女様も大変だなー」

「桃先輩がどうかしたんですか?」

「なんだ、お前ら聞いてないのかー」


 意外だとでも言いたげな聡美。蓮とカゲロウと三人で顔を見合わせるが、誰も心当たりがない。


 桃のことでなにかあったと言えば、つい先日学校を無断欠席していたことか。それも、どうやらドラグニアに行っていたとかで。

 昨日とかは普通に登校してたし、おかしな様子も見受けられなかったけど。


「あいつ、異世界に移住したいんだってさ。せっかく平和な世界になったのに、馬鹿なやつだよなー」

「え……?」


 肩を竦めてやれやれと言ってのける聡美の言葉に、葵は言葉を失った。

 異世界に移住って、つまり、この世界からいなくなるってこと? 桃さんが、私たちとの暮らしを捨てて?


 俄かには信じられない話だけど、聡美がそんな嘘を吐くとも思えないし、その理由もない。なにかの間違いなんじゃないのか。


「おい、どういうことだよ、桃がいなくなるってか?」

「桃先輩になにかあったんですか」

「まあ落ち着けー。お前らガキには分からない、大人の事情ってのがあるんだよ」

「誰がガキだ!」


 そういうとこだよ。思っても口に出さない葵は大人である。

 実際に葵とカゲロウは、少なくとも百年以上生きているのだけど。聡美が言いたいのはそういう意味ではないだろう。


 まるで納得させるつもりのない言い方は、多分言葉以上の意味を含んでいない。

 桃瀬桃と葵たちとの間にある、絶対的でシンプルな壁。それは年齢だ。この世界では同年代でも、旧世界では違う。二百年もの時間を彼女は生きた。その長く積み上げられた時間が、魔女との間に大きな壁を作っている。


「復讐なんてものに、二百年も費やしたからなー。その代償、みたいなものだ」

「代償って……」

「こればっかりは本当に、お前らには分からないと思うぞ」


 どこか遠い目をする聡美。そこに宿るのは憐憫か同情か。あるいは、憧憬か。


 先代の精神や記憶を受け継ぐことによって、永劫回帰のウロボロスを擬似的に再現した錬金術師。

 転生者とも魔女とも異なる方法で永い時を渡って来た女は、果たして同胞になにを思うのか。


 少なくともそれは、葵たち子供には決して立ち入れない領域だ。



 ◆



 船が無事に出港してから、およそ二時間が経過した。

 現在時刻午前十時。船の中を見回っている織と愛美だが、今のところは異常なし。エウロペも部屋から出る様子を見せないから、少しは狙われているという意識を持ってくれているのだろうか。


 そうでないと困る。非常に困る。

 護衛任務というのは、護衛対象にも最低限の危機感を持ってくれていないと成立しないのだ。その辺りが無頓着な依頼人に当たれば、例え腕の立つ護衛を何人用意しても、暗殺なんて簡単に遂行されてしまう。

 まあ、織たちは普通の護衛とは違うから、間違ってもエウロペを暗殺なんてさせないが。


「二時間なにもなし、っていうのもそれはそれで不気味ね」

「もし敵のトップが転生者なら、俺たちの顔は割れてるかもしれないからな。警戒してるんじゃねえか?」

「つまんないわ」


 デッキで潮風に当たる二人。愛美は頬を膨らませながら柵に体を預けている。

 こうしていると穏やかな船旅だが、実際はこの船の中に、敵に雇われた殺し屋が紛れているのだ。全く穏やかじゃない。

 出来るなら、家族三人でなんの仕事でもない、ただの旅行として来たかった。そんなお金はないけど。


「そういえば、あなた海の上を歩ける?」

「やろうと思えばできるんじゃねえか? 足に魔力集めて、重力操作と浮遊魔術をうまく組み合わせれば」

「龍さんはなんの魔術もなしに歩けるわよ。あの人、湖の妖精から加護をもらってるから」

「アーサー王にそんな逸話あったっけ」

「円卓周りは湖の妖精の話に事欠かないのよ。聖剣が返還されたとか、ランスロットは湖の妖精に育てられたとかね。で、あの人その加護のせいで、カナヅチになっちゃったの」

「龍さんがカナヅチ? 全然想像できねぇ。海に放り投げたら溺れるのかね」

「加護と呪いは紙一重。この世の中にいいだけの話なんてないってことよ」

「呪術と似てるって話は聞いたことあるけどなぁ……まあ、どっちもおまじないって意味では同じか」


 なんて、毒にも薬にもならない話で、のんびりとした時間を過ごしていたのだが。

 不意に愛美が体を起こし、鋭い視線をデッキの一角に投げていた。


「あそこの男」

「どれ」

「あのスキンヘッドのやつよ。殺気がダダ漏れね、殺し屋としては下の下じゃない」


 え、俺はなんにも感じないんだけど?

 こう言う世界に身を置いているから、織だって気配とか殺気とかいうものはしっかりと感じ取れるが、正直愛美のセンサーと一緒にしないでもらいたい。


 殺人姫と呼ばれる少女は、人よりも殺しの匂いに敏感だ。

 その者が纏う死の気配や、誰かの殺意が込められた道具、罠など。そう言ったものを敏感に感じ取る。

 恐らくは、これも亡裏としての体質。

 他の亡裏の連中も見せていた超直感。


 一般探偵の桐生織には、断じて真似できるものじゃない。


「動いた。追うわよ」

「よし」


 距離を開けて尾行する。船内の広い通路を抜けて、やがてはかなり下層の方まで降りて来た。人通りの少ないそこで、明らかに一般人立ち入り禁止の場所へ入るスキンヘッドの男。軽く認識阻害を掛けてるとは言え、あくまでも認識を誤魔化すだけ。目が合ったりすれば普通にバレるのだが、二人の尾行に気付く様子もない。


 恐らくここは機関室だろうか。あちこちに配管が張り巡らされていて、織にはよく分からない機械も置いてあったりする。

 曲がり角の向こうから、スキンヘッドの男と誰かの話している声が聞こえてきた。


「『シンデレラ』の様子はどうだ?」

「相変わらず、部屋から出てこようとはしない。昼にレストランへ向かうまでは籠ってるだろうな。部屋の中には外部から雇った護衛が一人、若い男だ。そいつの仲間も、船の中をうろついてる」

「全く、いつになったら殺しにいけるんだよ、あのクソ生意気なお姫さんをよ!」


 どうやら、スキンヘッドの男は随分とエウロペに恨みがあるらしい。単なる雇われかと思ったが、そう簡単な話でもないのか。

 そしてその話し相手。こちらの情報をペラペラと話してくれているが、どうして部屋の中に緋桜一人ということまで知っている?


 それを知っているのは織たちとエウロペ本人、そしてあの場にいた側仕えの女性と、部屋の前にいた黒服数名。

 そもそも部屋に入ることすらできないはずなのだから、その中に護衛が何人いるかなんて把握できないはず。


「二人ともとっ捕まえるか?」

「そうね。どうもあの様子だと、片方はこっちに潜り込んでるっぽいし」


 小声で軽く打ち合わせて、合図もなしに愛美が飛び出した。

 突然現れた少女に驚く二人の男。この狭いところでは刀を抜けないが、そんなものがなくても十分だ。手前にいたスキンヘッドの男は回し蹴り一発で首があらぬ方向へ曲がってしまい、驚愕から立ち直れないもう一人へと織はシュトゥルムの銃口を向ける。


「両手を挙げて膝をつけ、下手な真似はするなよ」

「お前たち、外部から雇われたガキどもか……」


 スーツ姿の男は、苦しげな表情で地面に膝をつける。愛美は倒れ伏したスキンヘッドの男を見下ろして、やっちゃった、とか呟いてた。


「なんでしっかり一撃で殺してるんだよ」

「まだ勘を取り戻してないの。そっちは生きてるんだし、別にいいでしょ」

「死体の処理が面倒なんだって」


 出血がないからまだマシとは言え、スキンヘッドの男は結構大柄な体だ。さてどこに隠せばいいものか。


 そちらを考えるのは後。今はこっちの男から、可能な限りの情報を引き出さなければならない。


「さて、とりあえず色々教えてもらおうか。この船にいる刺客の数、お前らの雇い主、エウロペさんを狙う理由。他にも色々な」

「簡単に口を割るとでも?」

「そうしないと、無駄に苦しむ羽目になる」


 男の頬に、突然切り傷が。

 血がポタポタと床に落ちて、男の表情は一気に緊張したものになる。愛美が脅しのつもりで切断能力を使っただけだが、あちらからしたら得体の知れない現象だろう。


 恐怖を与えるには十分だったはずなのだが、それでも男は口を割らない。


「舐めてもらっては困る。これでもプロだ、拷問にかけたところで、情報は出さない」

「あら、それは残念。だったら用無しね」


 ちっとも残念に思っていなさそうな声で、腰の刀が抜き放たれた。

 男の首が簡単に飛び、ただの肉塊として地に転がる。噴き上がった血飛沫は機関室の至る所を汚し、愛美の白い肌まで染めて、しかし次の瞬間には綺麗に消えていた。


「……簡単に殺すなよ」

「死体の処理が面倒だから?」


 クスリと笑ってみせる少女は、その顔に僅かな愉悦を滲ませている。


 当たり前になってはいけない。こんなことに、慣れたらダメだ。

 旧世界ではそういう場所で生きてきて、この新世界でも同じ道を歩くと決めたけど。


 誰かの命を奪っている。その事実は、決して忘れてはならない。


「スパイが一人だけとは限らないわ、これからは黒服どもも疑った方がよさそうね。あの二人にも伝えたいけど、魔女様はどこへ行ったのかしら」

「その辺彷徨いてるだろうし、通信は繋がるだろ。とりあえずは緋桜さんのところに戻ろう。スパイのことは、エウロペさんにも伝えておくべきだ」


 死体は海の底へと転移で不法投棄。なにか問題があれば、精々仲介人である政府のお偉いさんに頑張ってもらうとしよう。


 問題はスパイの存在だ。愛美と言う通り、今の男ひとりだけとは限らない。もし他にもいれば、こちらの情報が筒抜けになる。

 いくら織たちが圧倒的な力を持っていたとしても、それでは守り切れると自信を持って言えない。


「トップの転生者がさっさと出て来てくれれば、話は早いんだけど」

「それ、お前がそいつと殺し合いたいだけだろ。やめろよ船の上で暴れるのは」


 手に持っていたシュトゥルムを虚空に消して、二人は来た道を戻った。



 ◆



 織たちがスパイに遭遇している、一方その頃。エウロペ・ティリスの部屋に一人取り残された緋桜は、こちらを見上げてくる護衛対象の綺麗な瞳に、なんとも言えない居心地の悪さを感じていた。


 さっきまでは勝手気ままに過ごしていたお姫様だが、かれこれ二十分近くはこんな状態が続いている。


「なにかございましたか?」


 耐えきれずに尋ねてみたのだが、お姫様は大きな瞳を瞬かせるだけ。無垢にも思える顔だが、たしか年齢は緋桜よりも一つか二つ上だったはずだ。

 そういう顔立ちだからというだけでなく、育ってきた環境なども影響しているだろう。


「やっぱり、護衛にしておくには惜しいわ」

「なにかお求めでしたら、可能な範囲で対応しますが」

「なら、まずは敬語をやめてくださる? わたくし、堅苦しいのは嫌いなの。周りの目が気になると言うなら、部屋の中には二人だけにしてあげる。それにここは喫煙可能よ、寛いでくれて構わないわ」


 くすくすと鈴を転がしたような音色を奏でて、こちらの左胸を指差してくる。内ポケットに入ってるタバコを気づかれたか。

 大きなため息を一つ吐き出して、緋桜は乱暴に取り出したタバコを咥えた。


「なにが目的だ」

「あなたが気に入ったのよ」

「自己紹介はしてないはずだが?」

「護衛してくれる人の名前は事前に把握しておく、おかしなことではないでしょう?」


 どこまでも楽しそうに、笑みを決して絶やさず、エウロペはまるで掴み所のない声音や雰囲気で言葉を返す。

 向こうがこう言ってくれるのだから、緋桜としても遠慮しなくていいだろう。露骨に舌打ちをして、タバコに火をつけた。


 口から煙を吐き出せば、換気扇の回る音が。どうやら、エウロペの側仕えをしている女性が回してくれたようだ。


「わたくし、同年代の友人が一人もいないのよ。あなたはわたくしと歳が近いでしょう? せっかくの機会だから、お近づきになりたいと思って」

「完全に私情だな。そんな我儘で、勝手に護衛の配置を変えないでほしいもんだ」

「でも、あなたたちの雇い主はわたくしなのだから、わたくしの言うことは聞くべきでなくて?」

「時と場合による」


 どうにも底が知れない。

 ここまでのやり取りで、緋桜はエウロペに対する印象を更新させた。

 単なる我儘お姫様かと思っていたのだが、腹に一物抱えてる気配がする。ある意味自分と同種の人間だ。だから直感的にそう思うだけ。それが具体的になんなのかまでは分からないけど、警戒しておくに越したことはないはず。


 携帯灰皿に灰を落として、フィルターを燃やす。互いの間を遮るように、紫煙が燻る。


「こっちからもひとつ聞きたいが、あんたが狙われてる理由はなんだ?」

「さあ? わたくし、色んな方面から恨みを持たれてるみたいだから、どれが正解かなんて分からないわ」

「なんでそうなった」

「どうしてかしらね」


 くすくす、くすくす。

 いっそ耳障りに思えてきた音。この手の輩はこれだから嫌いなのだ。


 かつての愛美や桃のように、むしろ完全に閉じこもっているやつの方がいくらか相手しやすい。小鳥遊蒼や、あるいは桐生凪。もしくは緋桜自身のような、笑顔で本心を押し隠すやつは、押しても引いても決して心を開かないから。


 完全にブーメランだな、と内心で自嘲し、まるで雇い主に向けるとは思えないきつい視線でエウロペを睨む。

 だが当の本人は、そんな目で見られることですらも愉快で仕方ないと、そう言いたげに笑うだけだ。


「そうね、あなたがわたくしの国に来てくれるなら、教えてあげてもいいわよ?」

「断る」

「ふふっ、男性に振られたのは初めてだわ」


 この時間が苦痛でしょうがない。誰でもいいから、誰か戻ってきてくれ。この際一番チクチクと言われそうな桃でもいいから。

 そんな緋桜の想いが通じたのか、部屋のドアをノックする音が。


 安堵のため息と共に最後の煙を吐き出し、タバコの火を消す。やって来たのは誰かわかっている。後輩二人の魔力がそこから感知できるから。


 しかし、あの二人が戻ってきたということは、なにか報告すべきことがあるのだろう。

 特に警戒せず扉を開けて、織と愛美を招き入れたのだが。


 残念ながら、二人が持ってきたのは至極面倒な報告だった。

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