低粘度インクの経年劣化について
低粘度油性につきまとう問題として、経年劣化による裏抜けや滲みというのがある。筆記してしばらく経つと、染料と有機溶剤が分離して、ひどい時には判別不能になるほどの裏抜けと滲みが発生するのである。
これは初期のジェットストリームでしばしば起きた問題で、そのため低粘度油性自体が、本当に信用して使っていいものかどうか、未だに疑いがもたれている。
油性ボールペンがこの問題に直面したのは初めてのことでなく、黎明期にも同じ症状を起こしていた。出始めの頃のボールペンが公文書への使用を認められていなかったのは、このためだったとか。
メーカーの開発によりボールペンの信頼性は向上し、現在では公文書への使用が認められている。
ただ、油性ボールペンに使われるインクは高粘度ゆえにダマやボタ落ちが起きやすく、筆跡が汚くなるという欠点がある。それを改良したのが低粘度油性だったのだが、この新技術の投入が、油性ボールペン黎明期に起きていた問題をぶり返してしまったわけである。
そこで私は2012年以降、どういう条件で筆記し、保管すればこうした劣化が起きるのかを調べている。数種類の紙に筆記し、普段使いのノートと一緒に置いてみたり、風通しの悪い部屋のガラス戸付き本棚に保管したり、洗面所のカゴに入れてみたりなどしてみた。
その結果について、本家ページでは画像を交えていろいろ書いているが、カクヨムでは近況ノート以外に画像が貼り付けられない。
そのため、近況ノートに画像付きの具体例を用意した。
https://kakuyomu.jp/users/ryokaku/news/16817330669421339100
(低粘度油性の経年劣化)
結論から言うと、2021年現在、主要メーカーの低粘度油性ボールペンは、この手の経年劣化は起きにくくなるように改良されたと考えていいと私は思っている。
私はすでに、低粘度油性は信頼して使用しているし、実際にインクの染み出しが起きたことはない。
この実験は5年続けたが、結局、経年劣化が認められたのは2014年に、ダイスキンダイアリー(ダイソーで売っていたモレスキン風のダイアリーメモ帳。紙質が良くなく、めちゃくちゃ薄かった)に筆記していた筆跡に僅かなインクの染み出しがあったのが認められただけ。
私は2012年からコクヨのキャンパスノートを中心に、スラリ、ビクーニャ、ジェットストリーム、アクロボールを普段使いしているが、ノートを読み返してもインクの滲み出しが起きた箇所はひとつもない。
ただ、低粘度油性インクの性質上、耐アルコール性が若干弱めなのは事実で、なんらかのきっかけでインクの染み出しが起きないとは言い切れない。
もし経年劣化を気にするのであれば、ゼブラや三菱鉛筆の旧油性か、サラサクリップ、シグノ、ユニボールなどの顔料ゲルインクを使用するのをおすすめする。
顔料は紙の上に塗料を塗るタイプのインクであり、その性質上、インクの染み出しは起きない。インクの染み出しや抜けが起きるのは、紙の繊維に染み込ませて発色する染料インクの特徴なのである。
[2022.05.15 追記]
2012年以来10年、私は各種低粘度油性ボールペンで筆記しているが、普段遣いしていて筆跡が劣化する条件はひとつしない。それは、水や汗が紙に染み込んだ場合。
胸ポケットに低粘度油性で書いたメモ片を入れていて、雨に降られたり、汗をかいたりした場合、インクの滲みと抜けが発生する。
こういうメモはたいがい一時的なものなので、滲みや抜けが起きても問題ないが、気になる人は顔料インクを使ったほうがいいだろう。
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